4:とんでもないチート!?
ノア王太子と婚儀を挙げる!?
これは全く持って驚いた。
え、何? いきなり婚儀? つまり結婚。
それって……攻略完了で、いきなりエンディングですよね!?
ど、どーゆうことでしょうか??
好感度上げなんて一切していないのに。
私になんて会ったこともなく、話したこともないのに。
既に私への好感度はMAXっていうこと!?
沢山のイベントをこなし、好感度あげるために奮闘することなく、いきなり攻略しちゃったってことですか!?
ものすごーい、チートに思えますが!
しかも相手が……。
“君待ち”の王道攻略対象の、あの美貌のノア王太子!?
ノア王太子……ノア・イル・ラックス。
彼は“君待ち”の舞台である、ソーンナタリア国の王太子だ。
“君待ち”は現在シリーズ3作目まででている。その“君待ち”で、不動のエースといわれ、シリーズを通じ絶大な人気を誇るのが、ノア王太子なのだ。
そのノア王太子が好感度MAXで、いきなり結婚からスタートしてくれるわけ!?
これはもう……鼻血ものでは!?
というか、無理でしょ。無理。
18禁版を選んでしまったのだから。
そう思う一方で。
あんな素敵過ぎる王太子様と、会って即日新婚生活突入とか……夢のよう!
まさに宝くじで一等及び前後賞まで一人で引き当てたぐらいの幸運。アラブの石油王の正妻におさまったぐらいの衝撃。こんなの今逃したら、一生手に入らないラッキーチャンス。
もはや、恥ずかしいとか言っている場合ではない。
なにせ王太子は結婚したい程、私への好感度は高まっているわけでしょう。18禁なあれやこれやについて何か気になっても、きっと目をつむってくれるハズ。これは……今まさにきている波に飛び乗るしかない!
「異世界乙女たるサラ様、だ、大丈夫ですか? まだ召喚による時差ボケのようなものがありますか?」
「いえ、全然、時差ボケとか、ございませんから」
なんか、興奮し過ぎて言葉使いがおかしくなっているわ。
少し落ち着け。
ちょっと深呼吸をしてみた。
賢者アークエットは心配そうに私を見ている。
深呼吸をすることで、少し落ち着けた。
そして、王道の攻略対象であるノア王太子について思い出す。
ノア王太子を攻略する時の鍵は……そうか。
瘴気だ。
不意打ちでやってくる瘴気を迎え撃つのは、ノア王太子の大きな役目の一つだった。異世界から召喚されたヒロインには、この瘴気を察知する能力がある。それこそが、先程から賢者アークエットが言っている千里眼のことだ。私は別に千里眼の力を使ったわけではなく、ただ単に“君待ち”をプレイしたことで知りえた知識を披露しただけなのだが……。
賢者アークエットは私に千里眼があると思っている。いや、あるのかな? 自分がヒロインなのか分からないので、この千里眼の力もあるのか、ないのか、それも不明だ。
だが……。
“君待ち”において。千里眼で瘴気の襲来を察知したヒロインは、ノア王太子にその情報を伝える。つまり瘴気と戦闘を繰り広げるノア王太子を、何度となくサポートするのだ。それはノア王太子の好感度をとんでもなく上げることにつながる。
つまり……。
千里眼があると既に分かっている。この千里眼は瘴気対策において実に有効。そして千里眼の力はソーンナタリア国の人間には備わっていない。精霊王でも賢者アークエットにもない力。
異世界乙女には千里眼がある。
だから召喚したら、王太子の妃にしてしまおう。
そう決めていたのではないか?
もしそうであれば……いきなりの婚儀というのも、いきなり、というわけではないのだろう。賢者アークエットやノア王太子にしてみれば。いきなりと感じているのは……私だけということか。
なんだか拍子抜けだが。
それに私に千里眼の力があるか不明。
それでも君待ちのプレイ知識があるから、瘴気がいつ襲来するかは一応予見はできる……と思う。というか、自分がヒロインなのかどうか、確かめたいのだけど……。何か方法はあるのだろうか?
「サラ様、その、時差ボケは大丈夫なようですが、他に何か問題が?」
賢者アークエットが、金色の瞳を曇らせ、心配そうに私の顔をのぞきこんでいた。
「突然、婚儀を、と言われたので、驚いたまででして……。でも今は落ち着いてきました」
「それは……そうですよね。でも時間もありませんので、よろしいでしょうか」
賢者アークエットは再び自身の懐中時計を見て、私に尋ねる。
さっきから賢者アークエットは時間ばかり気にしていた。何をそんなに急いでいるのだろう? 他に用事があるなら、私の召喚なんて、その用事が終わってからすればいいのに。
「賢者アークエット様は、他に用事があるということですよね。では私はこれからどうすればいいのですか?」
「賢者様、迎えに来たぞ」
こ、この声は……!
明るく元気なこの声は!!
まさに陽キャの代表格・空の騎士団の団長ルドルフ・ウィルキンソン。
振り向くとそこには、笑顔のルドルフがいる。
空の騎士団と言えば、この空色の軍服!
超爽やかで、カッコいい。
アンティークな感じのブロンズの飾りボタン、ショルダーチェーン、飾尾もとても素敵。何よりこの空色の軍服にあわせまとうマントが……! 風になびくこの白銀のマントは、ため息が出るほど美しく、身に着ける騎士達を間違いなくハンサムに見せてくれる。
何より、青い髪に紺色の瞳のルドルフには、この空の騎士団の装備が最も似合う!
本当に絵になる。でもって騎士だから当然、よく鍛えられた体をしているし、着ていてもすごいし、脱いでも勿論すごいわけで。そしてそれは実体化されてもパーフェクトに再現されている。
スゴイ!
「ルドルフ、丁度いいタイミングでした。こちらが異世界乙女のサラ様です」
賢者アークエットに私を紹介されたルドルフは。
その大きな紺色の瞳で私を見ると。
ニコッと笑顔になる。
その上ですぐさま騎士らしく片膝をつき、跪く。
慣れた手つきで私の手をとり、スマートに挨拶を始める。
「ソーンナタリア国、空の騎士団・団長のルドルフ・ウィルキンソンと申します。異世界乙女のサラ様。あなたを迎えに参りました。今後、ノア王太子様とあなた様のことをお守りすることを、ここに誓います」
そう言うと、当たり前のように甲へキスを落とす。
その言葉、動作に、感動で涙が出そうになる。
これ、これよ、これ!
ずっと、ずっと、憧れていましたよ。
この騎士からの手の甲へのキス!
やっぱ乙女ゲーをやっていて憧れるのは、この甲へのキスとダンスでしょ。
あ、私、ダンスは踊れる設定なのだろうか?
召喚時にいろいろ調整し、容姿も変えてくれている。
言葉もちゃんと話せ、理解できていた。
ということは当然、ダンスもできるのかしら?
「しかし、賢者様。こんな美人を召喚するとさすがだな。なみな」
突然、賢者アークエットがルドルフの口を背後から押さえる。そして耳元で何かを囁いた。
ちょ、ちょっと……。
何ですか、この構図!
“君待ち”にBLは要素はなかったハズなのに。
なんだか二人の背景に、青い薔薇が咲いているように見える。
「分かりましたね、ルドルフ」
「はい、はい。分かったよ、賢者様」
ルドルフから体を話した賢者アークエットは、その輝き放つ金色の瞳を私に向け、とびっきりの笑顔を向ける。
うわぁ、賢者アークエットの黄金スマイル!
これを向けられると、攻略対象そっちのけになってしまう。まさに必殺技のようなスマイルをここで出されるとは……! 今の私はまさに賢者アークエットにロックオンされ、何を言われても無抵抗な気がする。
「異世界乙女のサラ様。あなたは私の召喚史上の最高傑作です。自身を持ってノア王太子様の元へ送りだすことができます。私もすぐ後を追いますので、まずはルドルフと共に会場へ向かってください」
「は、はい……。ところで会場とは?」
「ですから、王太子様とサラ様、お二人の婚儀をとりおこなう神殿です」
昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!
この投稿を新たに見つけていただけた方も、ありがとうございます!!
このあともう1話公開します!
20時台に公開します。









































