3:全年齢版か18禁版か!?
賢者アークエットは続けて私に質問をする。
「異世界ではおいくつでしたか? 18歳以上でしたか?」
ドキッ。年齢、聞く?
女性にいきなり、年齢を聞く?
あ、でも。
そうか。
“君待ち”は全年齢版と18禁版があった。
私はもちろんオトナですから18禁版でプレイをしていましたが。もしやその時の年齢確認?
となると……。
え、どうしよう。
18禁版は気になるけれど……。
君待ちの攻略対象は揃いも揃ってイケメンばかり。
鑑賞用として眺めている分にはいいけれど。
現実で18禁なことをとなると……。
じ、自信がない。
あんなイケメンとそういうのは(焦)
「もしや18歳未満でしたか!?」
賢者アークエットの顔が青ざめている。
18歳未満だと何か支障があるのだろうか。
絶望的な顔になった賢者アークエットは、懐から取り出した懐中時計に目を落とす。
どうやらここは18禁版の“君待ち”の世界らしい。
もしここで18歳未満と答えたら……。
もしや現実世界に戻される!?
そ、それは……。
せっかく召喚されたのに。
何もせずに元に戻されるなんて、冗談ではない!
「あの、私、18歳以上でした!」
賢者アークエットは、本当にそうなのかという顔で私を見る。即答しなかったら、疑われていた。
「ちゃんと18歳以上です。間違いないですよ。大学卒業していますから。安心してください」
「……そうですよね。ちゃんとこちらでも18歳以上の人間を指定して召喚していますから。即答されないので心配しましたが、良かったです。ちなみにこちらでのサラ様の年齢は、20歳ですから」
20歳!
元いた世界より若返っている!!
どうりで肌艶もいいわけだ。となると、この豊かな谷間も、補正下着のおかげだけではなさそうだ。……鏡。鏡を見たい。顔はどうなっているの? 20歳の頃の私に戻っているのだろうか?
「あの、鏡ってあります?」
「鏡ですか。はい。用意しましょう」
賢者アークエットはポケットから石ころ取り出し、それに手をかざし、何やら呪文を唱える。すると石ころは美しい手鏡に変わっている。
さ、さすが賢者様!
有難く鏡を受け取り、その鏡面に映る顔を見て、目を見張る。
だ、誰、これ!?
私が知る“君待ち”のヒロインの容姿とは、全然違う。
全然違うのだが。
なんて綺麗な肌をしているのだろう。
ビスクドールのようなすべすべの肌をしている。
皺、くすみ、毛穴の汚れなど皆無!
しかも宝石みたいな瞳をしている。
ピンクトパーズみたいだ。
鼻も高い。これなら眼鏡もずり落ちないだろう。
というか口も小さくて可愛らしい。
ほんのりと桜色の頬もいい感じだ。
髪は憧れのキラキラブロンド。
これ、本当に私?
いや、そうか。
“君待ち”の世界の私なのだ。
でもどうしてだろう。ヒロインとは全然違う容姿。
でも召喚されてここにいるわけで。
ヒロインなんだよね、私?
「18歳以上なので、あの問題も大丈夫と。あとは……異世界から来たと証明できることはありますか?」
「異世界から来た証明!?」
そんなこと、スタート時にやったっけ?
あ、待って。
確か異世界から来たと隠そうとして、バレてしまうエピソードがあった。
「精霊王様は、雷を司るイエロードラゴンを聖獣として連れていらっしゃると思います。でも精霊王様の命令に従わないことがあり、とても困っていませんか? イエロードラゴンは精霊王様の命令に反するつもりはないのです。ただ、後ろ脚に刺さった瘴気の毒針が原因で、自身の意に反した行動をとっているだけ。この毒針は精霊王様の力であれば、簡単に抜くことができます。これを抜けば、イエロードラゴンはこれまで通り、精霊王様の命令に従うでしょう」
精霊王もまた、“君待ち”の攻略対象の一人。
“君待ち”の世界には、瘴気という謎の霧があって、その時々で様々な姿で現れる。例えば、強い毒を持った巨大な蜘蛛の姿だったり、鋭い牙を持った巨大な蟻の姿だったり。その恐ろしい姿で、人間に襲いかかる。この瘴気に対応できる「粛清の力」を持つのが精霊達で、その長が精霊王だ。
精霊王は、強力な粛清の力の持ち主であり、聖獣を使役することができる。大変美しい姿をしており、その顔を見て、声を聞いた人間の女性は、確定で恋に落ちてしまう。よって精霊王は顔の半分を、人間の前では隠している。口元をとても美しい布で覆うことで。
ということでとびっきりの情報を披露したつもりなのだが……。
賢者アークエットは金色の瞳を細め、私のことをじっと見つめている。
「あ、あの、これでは証明になりませんか……?」
とても心配になり、尋ねると、賢者アークエットは首を振る。
「……完璧です。素晴らしい。いや、想像以上。異世界乙女が持つと言われる千里眼の力……。間違いないです。サラ様は異世界からいらした。間違いないです」
尊敬の眼差しで、賢者アークエットが見てくれた。
なんだか嬉しくなり、多分ドヤ顔になっている。
「サラ様。あなたは間違いなく、この国の民を導くに相応しい異世界乙女です。どうかこの国で我々と共に歩んでください」
異世界乙女。
異世界からこの“君待ち”の世界に召喚されたヒロインは、異世界乙女と呼ばれる。そうなると、私は……やっぱりヒロインだと思うのだけど。
ヒロイン……でいいのかな?
顔がヒロインとは全然違うのだけど。
それにしても。
民を導くとか、共に歩むとか。
なんだかスケールがデカい。
勿論、攻略対象の一人、ソーンナタリア国の王太子を攻略すればそうなるのでしょうが。
王太子もまた、精霊王、賢者アークエットと同じく、超がつく美形。美形過ぎるので……18禁版を選んでしまった今、攻略するのは無理だと思う。攻略後のあれやこれやを考えると、恥ずかし過ぎて無理、無理。
対して、空の騎士団の団長は、イケメンだが性格があっけらかんとして馴染みやすい。彼であれば例え18禁な状況になっても、冗談を言いあい、笑いあうことができそうだ。なのでヒロインとして、この“君待ち”の世界を歩むことが許されるのであれば。
空の騎士団の団長を攻略する――これ一択だろう。
「サラ様。我々と共に歩む、それでよろしいでしょうか?」
「えっとそれはこのソーンナタリア国で共に生きる、ということですよね?」
「無論その通りです。そしてこの後、サラ様にはノア王太子様と婚儀を挙げていただきます」
「あ、はい。わかりま」
うううんんんん?
自分の耳が聞いた言葉を反芻する。
今、とんでもないワードが、賢者アークエットから、もたらされなかったか? 誰を攻略するかなんて考えていたから、聞き間違えをしたのかしら?
「あの、賢者アークエット様。間違いなく、聞き間違えだと思うので、不敬罪とか言わないでくださいね。その、ノア王太子様と婚儀、なんて言っていませんよね?」
「不敬罪なんて。これから王太子妃になられるサラ様を、罪に問うなどできるはずがありません。サラ様は間違いなく、これからノア王太子様と婚儀を挙げていただきます」
本日公開分を最後までお読みいただき
ありがとうございます!
明日から毎日更新で
1日、1~3回更新予定。
毎日20時台更新+予告した時間です。
後書きで次回更新時間を必ず記載します。
ということで次回は明日、以下を公開です。
8時台「とんでもないチート!?」
&
20時台にもう1本更新します!
更新通知をオンにしたブックマーク登録を
ぜひご検討いただけると幸いです♪
では皆様にまた明日会えることを心から願っています!
【毎日更新中の悪役令嬢もの】
日間 恋愛異世界転生/転移ランキングBEST300
★感謝★ 7 位獲得(2023/4/3)
↓ ↓ ↓
『悪役令嬢完璧回避プランのはずが
色々設定が違ってきています』
https://ncode.syosetu.com/n6044ia/
●読者様からいただいた本作の感想(抜粋)●
「面白いです!
よくある断罪回避モノかと思っていましたが
私の予想を超えたストーリーで先が気になり
一気に最新話まで読みました。
切ない気持ちになったり
推理小説のような部分もあったりと
いろいろな感情を味わえる作りになっていると思います。」
https://novelcom.syosetu.com/impression/list/ncode/2085836/
累計800000PV突破!
ブックマーク登録1000件超え!
いいね!1000件超え!
読者様に支えられ、Episode2に突入!!
ぜひ上記作品もお楽しみいただけると幸いです。
何卒よろしくお願いいたします。