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堅物くんと普通の喫茶店  作者: さもはさうえい
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普通の喫茶アルカディーア

なんちゃって昭和ファンタジーです。生ぬるい目で見て下さい。キャラも昭和を意識した会話や内容を話してます。当時のいけてる話し方をしているのです。イケてたんだと思います。当時は。


とある昔話をしましょう。何せ、昔だから曖昧な部分は許してね?


私の名前は友田 普友江(ともた ふゆえ)


ごくごく平凡な田舎の娘でお節介焼きなせいで若いのにお見合いババア呼ばわりされる普通の何となくだけどくっつきそうな人間。普通と違うオーラを持つ。キラキラした人間が分かる。ちょっと変わった見た目はごく普通な娘だ。


家は喫茶店だった。昔に祖父が海外の文化にかぶれパーラーを建てたいと言ったが資金が足りず建てられず建てられたのが、喫茶アルカディーア。


もちろんお酒など疚しい事の無い純粋な喫茶だ。疚しい事やお酒って?……昔は色々あったのよ。


ちなみに本来はアルカディアらしいが看板を発注してから発覚したので喫茶アルカディーア。


喫茶アルカディーアに行こうと皆に言われマスターと呼ばれたかった祖父だったが、実際は『友田さんちで茶を飲もう』や『友田さんち』と言われ挙げ句。マスターでは無く大将や友田さんと呼ばれてしょんぼりしてる。


まあ、田舎だしね?そんな喫茶を父や祖母に言われて昔から手伝っている。


当時はそうクリームソーダがやっと庶民でも食べられた時代だったかな? 新しい物好きな父や祖父は田舎には馴染みの無い洋食をどんどん出しては母や祖母に怒られていた。


上の兄達は大学に行くが女の私は行く予定はない。当時はそんな事が当たり前だったから気にした事はないけど、もしも今に生まれたら大学にも行ってみたかったわ。


確か当時の夢はアイドル。人気のアイドルヨシくんのお嫁さんだった。披露すら場も無いのに歌も踊りも覚えた。


きっとあの頃の女の子はほとんどがそうだったの。もちろん叶わない夢。現実は喫茶店は継ぐ人間がいないから私が継いで婿を貰う。だから長く続くだろう仕事。


学校が終わりセーラー服の上からエプロンをつけて自分の顔を鏡で見る。これだけ派手な髪や目の人間がいる世界でよくいる目立たないこげ茶の髪に瞳。


せめてもの抵抗で流行りのポニーテールをしている。清純女優の髪形を真似たけど直毛でできないしこれが普通の限界。


あまり遊びに行けない。だけどこの仕事がアイドルの次に大好きだ。お客さんは朝はおじいちゃんおばあちゃん。昼は主婦や仕事休憩の人。夕方は学生さんが多い。


「普友江ちゃん!」


「あら、いらっしゃい。今日は何するの?」


来店したキラキラした人物に少し目を細め眺める。


彼女は海世(うみせ)ななみ


名前もハイカラだったおばあちゃんが付けた。自称普通のキラキラした私の大好きな親友。うちの学校はやっと出来た共学で田舎なのに美形が多い学校だ。その中にキラキラしてる人が沢山いるが、ななみはその一人だ。


ちょっぴりドジで泣き虫ででもめげない。キラキラした大きな目のさらさらベージュロング髪の毛の女の子。海みたいな空色の瞳でバカでけぇ古いイルカのペンダントをした。まるで少女漫画から出てきたみたいな子。


大好きで可愛いけどひたすら鈍感。そこがまた無自覚にモテるんだろう。羨ましい限りだ。


「ふふっ……何と今日はコーヒーを飲んじゃうのだ!」


「まあ!」


いつもの彼女はクリームソーダかオレンジジュース。珈琲は何軒か先の彼女の幼なじみのお兄さんの好物。最近お仕事を休んで東京から帰って来たらしい。


そんなお兄さんの口癖が「ななみはおこちゃまだからな?」らしく。お子様とからかわれた彼女は大人に近づく為にチャレンジするみたいだ。ななみガンバ!


珈琲はおじいちゃんかお父さんの仕事と何故か決まっているので裏にいる二人に頼む。二人曰く。珈琲を入れるのは長年の経験が物を言う世界らしい。


良くわからないがそうらしいのだ。放課後はたまに学生さんが来るが今日は来ない日らしい。ななみだけなら気が楽だから好きなアイドルの話をしようとお気に入りの曲をかけようとするとまたドアベルが鳴った。


「はい!いらっしゃい!」


「…………。」


初めてのお客さんだ。キョロキョロと辺りを見渡し、ななみを見てびくんと震えるが誤魔化す様に学生帽を深く被り、離れた席に座る。


「あの注文は?」


「ねぇ。コーヒーってふーふーして飲んでもいいの?作法とかある?」


ななみちゃんの言葉にくすっと笑って「何度もふーふー。オーケーよん」とサムズアップして言ってやれば安心して笑う。すると帽子を取った男の子がこちらをじっと見た。


「こーひーを貰おう」


「はーい!」


男の子も珈琲にしたらしい。いつも初めてのお客様が来たら何を飲むかクイズを一人でするんだけど彼のイメージはお茶だと思ったけど違うみたい。珈琲の香りが店内を包んだ。これを嗅ぐと堪らなく飲みたくなる。ななみだけなら飲めるのにな。


「はい。珈琲ね?」


「わぁい」


先ずはななみに珈琲を渡す。次は男の子にだ。


「お待たせしました。喫茶アルカディーアブレンドの珈琲です。お好みでミルクと砂糖をどうぞ」


「ああ。頂く」


ふーふーと熱さと戦うななみちゃんに何かを考えてるのか珈琲を見つめる男の子。この制服は硬派で有名な男子校の制服で珍しくつい、こっそり観察する。


端整な顔立ちに真っ黒な短い髪。太陽の様な真っ赤な瞳。学ランは筋肉ではち切れそうな正に『男』って感じだ。


……タイプではない。私はテレビで見たアイドルのキラキラしたヨシくんがタイプなのだ。


しかも彼はきっとななみに惚れている。ちらちらと離れた席で手を組んだりメニューで隠しているがこちらを見るし、緊張してるのか見た目は大型犬なのに小型犬みたいに震えていた。


「きゃ!にがい!」


「ぐっ!?」


同じタイミングで飲まれた珈琲にほぼ同じ反応。……私はミルク無しで砂糖三つなら飲めるから大人だけど。成程、二人ともおこちゃまってことね?


「ななみ。そんなに無理して合わせなくてもゆっくりでいいのよ?ほら、ミルクとそうね。苦いなら最初は砂糖は三つ。砂糖を入れてから混ぜてミルクを入れるの好みでね」


言われたななみはその通りに入れてそれを飲んだ。ほっとした緩んだ顔。よし、慣れない人はひと口目めで嫌いになるから好きになってくれて良かった。


「美味しい」


「ね?ゆっくりいきなさいな。焦ってもうまく行かない時はいかないの」


ちらりと男の子を見れば真似して飲んで気に入ったのか、ごくごく飲んでる。


「うん。そだね、ゆっくり頑張る」


「そうそう!ファイト!」


料金を置いて「またね」と去る、ななみ。そのカップを片付けているとがたりと席を立つ音がした。


「少しいいか、そこの店主!」


デカイ。バカでかい声で呼ばれた。怖い。何だいきなり、こっちは共学だが身長も声もデカイのにも慣れてないんだぞ。


「はい。なんでしょう?」


とりあえず返事をして!ちょっとおぼんでガードする。


「自分の名前は暁 明(あかつき あきら)!灼熱太陽高校に通う一年!部活は剣道をしている!」


「は、はあ」


ビリビリする。耳がキーンてしてるがお構い無しだ。


「あの、席に座っていた女子の……ご学友と聞き。お聞きしたい事がある!」


すうっと息を整える彼に今日一番の爆音がしそうで完全におぼんに隠れたが、衝撃波は来ない。恐る恐る見れば何と耳まで真っ赤の茹でダコがいた。


「彼女に良い人は……恋仲の奴はいるのだろうか?」


ななみ。あんた今回の奴は無敵のお見合いババアが挫けそうな相手です。助けて下さい。



ななみはコーヒー少し言い慣れないので平仮名寄りのコーヒー。普友江は父も祖父も珈琲呼びなので珈琲。明は平仮名でこーひー。ちなみに隣のお兄ちゃんは普通にカタカナでコーヒー。

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