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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

悪の端

お役御免と追放されるも、実は高ステータスなので領地に戻りハーレムと美女達と復讐する凄腕忍者の領地改革記。今さら戻って来いと言われてももう遅いでゴザル!

作者: 感 嘆詩

「ライ、お前はクビだ」


 忠義を尽くす我らが王に、私は暇を貰うことになった。美男美女を侍らせニヤニヤと、いやらしく笑うサディストが私を見下ろす。


「なぜでゴザルか!」


「いや、娘たちが旦那様独り占めしてズルいって煩いから。たまには帰って可愛がってやってくれよ」


「そんな!拙者たち何十年の付き合いと思ってるでゴザルか!そんな十数年しか関わりのない小娘たちの言うこと聞くなんて!」


「いや、血が繋がってるんだから!そりゃそうだろ!?なに対抗意識もやしてんの!?」


「あ、だとしたら拙者も義理とは言え息子でゴザル。パパ上!お嫁さんにしてください」


「いいから帰れ!1ヶ月も可愛がれば満足するだろ」


「いや、もう知らん!戻って来ないでゴザル!バカー!」


「主君なんだけどぉ!?どういう拗ねかたなんだほんとに!いっとくけど見た目変わんないだけで、俺たち良い歳なんだからな!おっさん同士の醜い会話だからなこれー!」


 我が王の声を背に部屋を立ち去る。そのまま街の尖塔、森の木々、ジャンゴの十字架鰯の頭などを伝って跳び跳ねていき、帰路を急ぐ。急がなければ、一晩でも休んでしまえば、そのまま王の元へ帰って浅ましくも慈悲を乞いそうになるからだ。

 こと追い出されてしまっては仕方ない。パーティーを組んで以来、片時も離れることは無かったが、もはや王とは袂を別ち、領地の発展に努めて余生を過ごすより他はない。



 私はライ麦畑。本名は捨てた。職業は《忍者大名》。実際に、若い頃の功績で故郷の領地を安堵され、本当に大名になってしまった。

 不老不死の我が王の寵愛を受け、歳を取らぬ少年のまま、何十年と奉公してきた。今はお暇を頂き、ただの捨て児のように彷徨するばかりだが。涙を振り払い領地へと急ぐ。もう知らん!あんな好色諸多諸多爺!




「いえ、魔王の寵児という肩書きで十分助かってます。もしどうしてもというのでしたら子供たくさん増やして婚姻外交してください」


 何か、名ばかりの私にも出来る仕事はないかと尋ねれば、優秀な官吏たちから返ってきた答えは皆一様であった。


 厳密にはあの方は魔王ではないのだが、悪逆無道であるのであだ名が魔王になってしまった。もしくはスーサイドがまだ汐騒だった頃に呼んだBlindness(死と闇の)-Thanatos(申し子)が有名だ。有名に、なってしまった。懐かしい痛みを胸に感じる。


「それじゃあ普段とヤッてることが変わらんでゴザル。もっとなんかなーい?」


「直近でしたらダンジョン潜って資源かき集めてください。他国に強気に出れるくらいの資源をぜひ」


「それも普段と変わらんでゴザルな…」


「…じゃあ若者を何人か見繕うので彼らを育てて頂けると助かります。頂点の冒険者がどれ程のものか、身をもって知るだけでも相当な価値になるでしょう」


「まあそれならやるでゴザル」



 夜、10人の妻たちと食事を囲み、10人の妻たちとそのままベッドインした。全員と?1度に?我が王がいかに偉大か思い知らされる。1度には、私には無理だ。


「うふふ。お父様にお願いした甲斐がありました。しばらくはこの地に留まって頂きますからね?」


 長女の言葉に曖昧に頷く。もう我が王の御元には帰らない腹積もりであったが、同時におしめを替えたこともあるこの娘たちと閨を共にすることにも抵抗があるからだ。

 ほとんど実の娘みたいなものだからな。


「ほとんどというか正真正銘名実ともに実の娘ですよ」


「えっ?」


「父上が繰り返し婚姻させて旦那様の血を濃くしてみたいとかで」


「ええ?ああ、やりそうでゴザルな」


「それで、旦那様とパパの間に生まれた私たち10人が10人とも旦那様に嫁ぐことになりましたのです」


「いやいやいやいやちょっとまつでゴザル」


 10人の美女全員、貴殿(との)と拙者の子でゴザルか?いや、ありえへんやろ。物理的に。無理だから。


「いやいや、サキュバスのクォーターですよ?ニンゲンの血の方が薄いクォーターなんですからそこら辺、おっ父は自由自在です」


「た、たしかに珍しく逆の時が10回ほどあった記憶があるけど、だとしたら百発百中でゴザル!」


「最終的に旦那様と父さんそれぞれのコピーかっていうくらい血の濃い2体を生み出すところまで狙うそうです」


 発想が怖ろしい。特に思い付きに意味は無く、ただ面白いかも、という理由なのだろうな。最悪だな我が王。


「そうか、新たなアダムとイブ」


「人の世が滅びますよ。オスとオスです」


 しかし、あ、いや、気まぐれで子どもを作っただけで、普段はオスでいるだろうな我が王は。


「ファッターの話は良いのです。ささ、この11人で夜明けまでフリーキックですよ」


「そんなフットボールやるみたいなスポーツ感覚で」


 我が王の悪い影響だろうか。年頃の娘がして良い表現ではない。




 3日3晩、代わる代わる、何かヤバイ効能の体液を飲まされつつ乗り切り、若い冒険者がどしどし集まったとのことでダンジョンにて指導することに。


「む、もしや、オノコでゴザル?」


「はい、領主様。本当に美しい御方。あなたの事を知り自分に希望が持てました」


 自分と同じ境遇、女顔の悪実(ドワーフ)が5人、私も含め、他種族の美しい少女にしか見えないパーティーを率いて指導することになりそうだ。指導、導き、私にも出来るだろうか、偉大な我が王のように。私と同じ子達を。


 我が王と出会った頃、私は自分の姿形にコンプレックスがあった。成熟した悪実(ドワーフ)女のような顔体つき。髭も生えず、だから侮られぬように大鎧を着込んで、獣のように威嚇するばかりの自分。当時は誰にも心開けず、まさしく野良犬のような様であった。


 そこから、美しくも恐ろしい我が王に牙をへし折られ、そして押し掛けるようにパーティーに加わった。急に抜けた穴に、以前のパーティーメンバーは大変困っただろう。当時の自分には気を遣う余裕もなかったが、皆には悪いことをしたと今でも思う。


「でさー、落ち着いた頃に昔の仲間にあったわけよ!ゴメンでゴザルって!そしたら何て言ったと思う?女の子だと思ってた男の子だったんだねひゃっほいって!何でゴザルかひゃっほいって!そりゃ拙者以外のメンバー女の子だったけど、まさか男子禁制のパーティーだったって思わないじゃん?何故に気付かんのよ!」


「わかりますわかります!別に振る舞いまで女の子じゃないんだぞっ!ってなりますよね」


 私の場合、コンプレックスから鎧を着込んでいたことも原因だろうが。吹っ切れてありのままの姿を晒すことが解決に繋がるとは、人生は皮肉で出来ているのかと悩みもしたな。懐かしい。童心に帰ったようだ。この若者たちのおかげだろうか。




 ダンジョン《初心者(ノービス)産道(カナル)》にて、高速で立ち位置を入れ替え、いくつもの剣劇を結ぶ。狗の尾と牙を持つ恐るべき粟の民(ミレット)の剣士、少年時代からの腐れ縁たるCoyote(トリックスター)と鉢合わせた。向こうも新人の指導らしい。

 ダンジョンで出くわせば即、試合う。大昔の、粟の民(ミレット)がまだ狗尾草(コボルト)と蔑称されていた頃からの習わしである。当然、死んでも復活するこの初心者のダンジョンでは殺し合いだ。


「おお、変わらず強いな無色透明の告死天使(フーイズエンジェル) 、珍しい、独りか?」


「後ろに仲間が見えないか!?」


「見えんな稚児の塊なんぞ!」


「馬鹿にするなぁぁぁぁ」


 こちらの神経を逆撫でするのが上手い好敵手。互いの新人たちには手を出さず見ているよう厳命した。隙を見せれば盾にされ首を狩られる。お互いにな。


 彼奴の自慢の奥義、絶え間ない連撃で此方の息の根を止めにくる《両手剣加速装置》が発動する。若い頃とは違い、一撃一撃に致命(クリティカル)が乗る絶滅の大嵐だ。


 これに対抗するは、()が王より預かりし悪実(ドワーフ)によって産み出された宝剣《流星刀》と、(われ)が王を救ける為に我によって編み出された秘剣《流星剣》による唯一度の致命の一撃(クリティカル)の絶技。


「《魔剣・流れ星(シューティングスター)》」


 対手の刀剣ごと胸骨を叩き折り、大嵐を吹き飛ばした。


「美事。また会おう。あ、またアオーン」


「そのマイブームまだ終わってなかったでゴザルか!?」



 あちこち付いた切り傷を、懐かしくかつ現役のバンデージで巻きながら若い仲間たちの介助を受ける。粟の民(ミレット)の若衆たちとはひとしきり称賛しあったあと別れた。人類に加わった後も彼らの価値観は独特で、独立独歩の気風が強い。気の良い隣人たちである。


「凄い、激しかったです、御屋形さま」


 戦いを見守っていた新人たちが陶然とこちらを見上げる。


 こんな眼差しを受ける日が来るとは思わなかった。あの頃、野良犬のようだった自分に見せてやりたい。見た目なんぞと下らないことを気にしていたあの野良犬に。


 良かった。私にも、少しはまともな方に導くことができそうだ。




 それにしたって距離が近く、Body-Touchが激しくないだろうか?


「ご当主様は魔王の寵児なのですから、当然、僕たちも寵児となる事を目的に集められました」


 血を拭われる感触が心地よい。


「いゃあどうでゴザろう。預かった人様の子に斡旋するには余りオススメ出来ない仕事なのでゴザルが」


 何だか、介助が強すぎて介助じゃないくらい介助されてる?これは、


「いいえ、そんな畏れ多い。ボクらは御殿さえよろしければ、その」


 むむ、むむむむ!




 翌朝、懐かしき初心者の街1の宿屋で6人一塊になって眠っていると、変わらず美しい宿屋の女主人が1枚の手紙を寄越して来た。


 "親愛なるライ麦畑くんへ。1ヶ月休んで良いよといったけど、ダンジョンの奥深くから旧王家の勢力が侵攻してきたので、すぐ戻ってきてください"


 私の身に電流が走る。忠心に身が焦げる。我が王よ。今すぐ参ります。お呼びとあらばそく参上。


 "追伸、無いとは思うが後ろは誰にも使わせてないよな?ダメだからな?前はまあ、好きにしてくれ"


 アバッ


「どうされましたマイマスター」


 ヤバイ。絶対バレる。我が王はそういう嗅覚が凄い。何でやねん。今まで何十年つきあって来て、そんな他人に使われたくないみたいな発言一言も無かったやんけ。ワシかて一端のおっさんやぞ見た目こんなんやけど。そりゃ若いのとガンガンさぁ!?するよ!オノコだもん!


 手紙をビリビリに破いた。


「拙者は何も見なかった!手紙は届かなかった!」


「まあ、荒武者」


「1ヶ月みっちり訓練でゴザル皆の衆!」


 サバイバル生活していた事にすれば大丈夫だ。お嫁さん兼愛娘たちには申し訳ないが、ダンジョンに行方を眩まそう。


「「「「「はーい旦那様」」」」」


 今さら戻ってこいと言われてももう遅い!







 なんやかんやダンジョンで旧王家の勢力とかち合って、年甲斐もなくボーイミーツガールしたり、神輿にされた少年をさらって痛快冒険活劇したりしたのでゴザルが、それはまた、別のお話。

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