吾輩は剣である。
吾輩は剣である。名前はまだない。いや、かつてはあったのかもしれないが、今となっては時の彼方だ。長い時をあれば、担う者も移り変わる。あるときは盗賊の手に、またある時は戦士の手に。蛮族と呼ばれる人々に握られる事もあった。ときに埋もれ、ときに飾られ、ときに使われながら吾輩はただ剣であった。直近での担い手は墓荒らしであった。吾輩とは縁もゆかりもない王の墓に、吾輩を突き立てうっかり事故で死んでしまった。やがて千年の時が流れ伝承も移り変わった頃、新たな担い手が吾輩の前に現れた。彼は詐欺師であった。
偉大なる王国が滅び、暗黒の時代を抜け、小国が乱立する時代。後に英雄王と称される小さな詐欺師と、その腰に履かれた剣の物語。
偉大なる王国が滅び、暗黒の時代を抜け、小国が乱立する時代。後に英雄王と称される小さな詐欺師と、その腰に履かれた剣の物語。
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2019/02/21 20:25