093(信じていた)
ーーバサラとキノは、アダムが居る病室へ行く。ナースが点滴を交換して戻って行った。
キノはベッドの脇にある椅子に座り、アダムに問いかける。
「話せるか?」
「キノ少佐、兄さん」
「記憶を取り戻したんだな?」
「あまり詳しく覚えてないけど。ナコシがバリアを張って爆破からっ……うう、頭が痛い」
「無理するな」
バサラはアダムをフォローする。
「大丈夫だよ。飛行円盤に乗せられたような?」
「他のサソリは?」
「うーん…………あっ! 母船で人質になってるかも。僕と木村中尉とシュナイダーは母船に連れていかれて、ナコシにインプラントを埋め込まれた、と思います」
「サソリのメンバーは生きてるんだな? 私は間違ってなかった」
「解りません」
バサラは尋問をキノに任せ、研究室に行く。
「初田主任、居るか~?」
初田主任研究員は研究室のカウンターでコーヒーを飲んでいた。
「真田隊員、もうすぐノアが完成するよ」
「ノアの主成分は何?」
「オゾンだよ。しかも高濃縮の」
「大丈夫なのか?」
「寒い北極南極でトアが活性化してるのは、オゾン層が薄いからだ。だから、そこに届くようにオゾンをばら撒けば、トアを壊滅させることが出来る」
「ノアを撒いてから、どれくらいで大気は最適化するの?」
「早ければ、2~3週間だろう。国連は水面下でオゾンの精製を急いでいる。トラピストの使徒に気付かれないようにね」
「それなら大丈夫そうだな」
「ところで、真田隊員」
「何?」
「18連チェーンはどうしたね?」
「オリジナルにギられた。予備を頼む」
「手元にあるのは後1機だ。大切に使うのだよ?」
「分かってる。盗まれたのは不可抗力だ」
「アダム大尉は回復したかね?」
「ああ、なんとか。それより、キノさんの足だけど、トラピスト・エレメントを組み込んだんだよな」
「まさか、無茶な使い方をしてないだろうね?」
「空港から海までフライングカーをワープさせたよ。マジスゲーよ」
「命を削る……あまりキノ少佐に使わせないようにね」
「分かった。それとアダムのデジタル統制力だけど、強化のために血清を打ってみない?」
「それなんだが、よく考えてみたら、アダム大尉は女王の血を引いてない。血清は無意味だろう」
ピピピ! ピピピ! 突如、アラートが基地内に響き渡る。
「初田主任、18連チェーンを借りてくぞ」
「ああ、持っていきたまえ」
バサラは18連チェーンを装備して、オフィスに行く。馴染みの顔がちらほら居た。バサラはレーダーを視ていた隊員に声をかける。
「何事だ?」
「真田少尉、大変です。マスドライバーが攻撃を受けてるとの事です」
「俺が行こう。基地が改装されてて、どこに何があるか判らん。フライングバイクはどこだ?」
「案内します」




