083(公式の数字)
キノの右脚手術は続く。初田主任研究員は松下にロボット義手を取り付けた時のことを思い出す。
「いや~、あの時はノリノリだったからね。それに、松下という男はテロリストに消されると訴えていたから。なに、チェーンのバージョン1.2程度のナイフが出来るくらいだ」
「チェーンの技術を応用して造られた義手か……私もナイフを使えるのか?」
「もっと良い物だぞ、ワッハッハ」
キノは不安しかない。しかし、キノの切断された脚に、カチッと義足が填まる。それから縫合して、調整をする。
「それで、初田主任研究員。私に付けられた義足は何が出来るんだ?」
「ナイフはもちろん、瞬間移動が出来るよ」
「何!? チリー・ジョーみたいにか?」
「キノ少佐自身がワープ出来るかはデジタル統制力次第だが、他の物を、例えばアールを手元までワープさせるのは造作もないだろう」
「そんな事が本当に出来るのか?」
「アンタレス香川基地で開発された物だ。トラピスト・エレメントが組み込まれている」
「なるほど。やはり、トラピスト・エレメントは危険だな」
「手術は終わり。リハビリ頑張ってね、キノ少佐」
「ちょっと待ってくれ。ガオームはどうなっている?」
「部下が執刀している。混血だから、回復は速いだろう」
ーーキノはリハビリを始める。メディカル棟の廊下を歩く。脚の感触がある。すぐに松葉杖なしで歩けるようになった。
リハビリ中のキノに今井長官代理が話しかける。
「キノ少佐、具合はどう?」
「大丈夫だよ。早くサソリのメンバーを回収しなくては」
「その必要はないわ。もうアンタレスと各国のレスキューや軍隊が捜索に行ってる」
「私も行く」
「今のキノ少佐は足手まといよ。現実を見て。サソリは解散が決定されたわ」
「トラピストの使徒のトップシークレットを得たからか?」
「本来の役割を果たした。けど、2度もミッションを失敗した」
「マスドライバーとブースト計画の事か?」
「そうよ。他のブースト計画のメンテナンスを急いでる」
「また、ナコシ達にやられるぞ」
「国連主導で世界防衛軍が組織されるそうよ。もうサソリに出番はないわ。アンタレスも世界防衛軍に加わる予定だから」
「大丈夫なのか?」
「チェーンのバージョン8.0以上の新兵も沢山いる」
「ヨーロッパだな?」
「イギリス、フランス、ドイツ。それと、キノ少佐の母国、イタリアも。非戦闘員のハイブリッドが10万人以上いるわ」
「公式に発表されてる数字は当てにならん」




