056(良い旅を)
「アンタレスの指揮権と人事権はキノ・ベロッキオ少佐が持っている。外部がとやかく言う事じゃない」
バサラの意見は筋が通っている。しかし。
「キノ・ベロッキオ被疑者か。織田アンタレス長官殺害の容疑で特殊刑務所に送られたよ」
「何でだ!?」
「お前達、ハイブリッドを使って殺害したそうじゃないか」
「違う! ノーネームはテロリストだ!」
「はいはい、ハイブリッド同士仲が良いようで。じゃ連行するから」
「真田バサラ。お前は怪我をしてるようだな。まずは警察病院へ。真田アダムは特殊刑務所に直送だ」
「待てよ! 俺はマスドライバーを破壊したぞ!」
「俺達、純血は半年もすればマスクなしには生きれなくなる。お前ら、サソリはスケープゴートかもな。誰かが責任をとらないと」
ーーバサラとアダムは別々に連行される。バサラは警察病院で治療を受ける。
術後、バサラは個室に閉じ込められる。当然、チェーンは取り上げられてた。
ーー3日後の朝。バサラの病室に背広の男と軍服の男が入ってきた。
「真田バサラ。怪我の具合はどうだ?」
「お陰様で治ったよ」
「じゃあ、特殊刑務所に連行するから」
「なあ、オッサン。ノーネームはどうなった?」
「同じ刑務所で仲良く暮らすんだな。手錠を嵌めるから両手を出して」
警察が正式に採用している手錠……。バサラは素直に両手を出す。
「1ついい?」
「なんだ?」
「SLR32ってロボットはどうなった?」
「あのロボットならアンタレス飯田基地に返されたよ」
「もう1つ」
「なんだ、往生際が悪いな」
「俺を含め〝9人〟は全員捕まった?」
これは嘘だ。バサラは昴の事を伏せた。昴は上手くやっただろう。
「ああ。女性元アンタレス所員は人間用の刑務所だが、男どもは宇宙人がウジャウジャ居る特殊刑務所で終身刑だな。さあ、行くぞ」
ガチャン。バサラは手錠で拘束される。
バサラはフライングパトカーの後部座席に乗せられた。乗員の警察官は2人……倒せる。
「上田市の特殊刑務所か?」
「そうだよ。良い旅を」
ゴーーー! フライングパトカーが屋上から離陸して巡航モードに入る。手動運転だ。
「おい、コースを外れているぞ」
助手席の警察官はナビと景色を確認する。




