055(クビ)
ーー「……さん!……兄さん!……兄さん!」
「…………うっ……気を失ってたか。いや、あの世かな?」
「何言ってるんだよ! まだこの世だよ!」
「アダム……か?」
バサラはアダムにおんぶをされていた。アダムは夕暮れの中を走っている。逃げるかのように。
「兄さん、逃げるよ!」
バサラは夢現だ。
「…………あっ! キノさんが!」
「少佐なら、もう自力で逃げたよ!」
「無事か、良かった」
「あんまり良くないよ」
「あの怪我ではな」
「そうじゃなくて…………」
アダムは立ち止まる。
「どうした、アダム」
「僕達、サソリは捕まるかもしれない」
「ちょっと待て! 誰に? トラピストの使徒にか?」
「違うよ。警察に。国際裁判所で裁かれるかも…………逃げる?」
「そこから、逃げちゃダメだろ」
「だよね。でも状況は不利だよ」
「俺達のオリジナルか」
「うん…………」
「あの野郎、余計な事を! 生きてたと思ったら、テロリストの味方しやがって! ぐう、痛い」
「あんまり大声を出さないで。そろそろ宙界島の外だよ」
アダムは歩き出す。
「他のサソリは? ノーネームは?」
「皆は無事だよ。但し捕まってるけどね。ノーネームは倒したよ。チリー・ジョーがやってくれた」
アダムはまた立ち止まる。
「警察だ! そこで止まれ!」
6人ほどの警察官が現れ、バサラとアダムを取り囲む。
「兄さん、どうする?」
「抵抗するな。おとなしくしよう」
「お前らが例のサソリか? 網膜スキャンするから」
まず、アダムが読み取り機で、チカッとスキャンされる。
「背負われている男、確り目を開けて!」
チカッと、バサラも網膜スキャンされる。バサラとアダムは抵抗をしない。
「えーと、真田アダムと真田バサラ……元アンタレスか。しかも、ハイブリッド」
「ちょっと待て! 元アンタレスってなんだよ!? 元って!」
「お前らはアンタレスをクビになったんだよ」




