054(反逆のオリジナル)
「小僧? お前は誰だ!? 電磁パルスの影響下でチェーンを使えるのは俺くらいだと思ってたけどな!」
バサラは、もう一度ナイフを叩き付ける。男はシールドで防ぎながら顔を見せる。
「久しぶりだな。プロトタイプさん」
その男は死んだはずだった。徳川バサラ。オリジナル・バサラ。
「嘘だろ!? オリジナルか!? 何故、生きてる!? どうしてテロリストに加担する!?」
「ナコシ、射て!」
「少し待て。全回復する」
バサラはチェーンのナイフでジリジリとオリジナル徳川を詰める。
「小僧、〝親〟に向かって、その態度はないだろ。ナイフを収めろ」
「お前は、俺とアダムを捨てた! アンタレスの織田長官が親代わりだった!」
「ほう。ノーネームは任務を遂行したか」
「何故だ!? 何故、テロリストに加担する!? 答えろ!」
「絶望から救ってくれたんだ。飛行円盤でな」
「そんな事で人類を絶やすのか!? 誰だって絶望くらい何度も経験してる!」
「お前は本当の絶望を知らないのさ。ナイフを収めろ。殺したくない」
徳川のシールドが小さく、ボウリング玉くらいの球体になった瞬間、ドスッ! バサラの腹にハンマーがモロに入る。
「グオッ!」
バサラは痛みから、思わず悲鳴を上げる。意識が飛びそうだ。
「プロトタイプ、お前の弱点が出たな。ツインタイプのチェーンしか使えない。せめて、ノーマルタイプは扱えないと攻防のバランスが悪いぞ」
徳川は新型チェーンを装備していた。
「な、何で新型を装備している!? 横流しか!? 何で電磁パルス影響下で新型チェーンを操れる!?」
「俺のデジタル統制力のバージョンは15.0だ。理論上の上限だ」
「何だと……」
「本気を出せば、月を粉々にできる。ここまでデジタル統制力が高いと、被爆しても大丈夫のようだな、ハハハ」
「クソ!」
バサラはまたチェーンの右でナイフを形作る。
「無駄だ」
徳川はハンマーを飛ばしてくる。バサラはカウンターを狙うように見せかけて、ナイフを飛ばす。徳川のハンマーはシールドで防ぐが、吹き飛ばされる。そして、「グオオ!」ナコシの胸にナイフが突き刺さる。
「チッ! 狙いはそっちか!」
「徳川、大丈夫だ…………。発射!」
ズドーン!! マスドライバーから禍々しい粒子が放たれる。
「まだだ! ナイフ、伸びてくれ! 大ブレードに! 間に合え!」
バサラはチェーンの左を長さ3メートルの大ブレードに変え、マスドライバーを横に斬る。ガタン! ガタン! マスドライバーが崩れた。
「遅かったな、プロトタイプさん」
ズドン! バサラは、徳川のガンで腹を撃たれる。チェーンのガンだ。防御が間に合わなかった。バサラの内臓はぐちゃぐちゃだ。
「痛い…………これが、死?」




