046(命の重さの差)
バサラはチェーンの両方をナイフにして後方へ飛ばす。ザン! ザン!「グオオ…………」2体のテロリストの胸にナイフを刺して、ノーネームの前に投げ捨てる。2体とも小型ビーム兵器を持っていた。
「ノーネーム、空爆のお返しは自爆か? 手下を使って」
「お前ら人間は俺達を物扱いしてるじゃないか。トラピストの使徒を殺しても、殺人より刑が軽い。いや、ハイブリッドだったな。……また来る」
ノーネームが撤退しようとした時に、キノがブーストガンを撃つ。バキン! シールドで防がれる。
「クッ!」
「追うぞ!」
木村が追撃しようとするが、キノが制止する。
「待て! 深追いはダメだ。それより、この2体のテロリストを始末するんだ。回復される前に。捨て駒はたいした情報を持ってないだろう」
「はっ! 分かりました」
「俺がトドメを」
バサラは日本製のブーストガンに持ち替え、2発撃つ。テロリストは木っ端微塵だ。
キノはフライングバスから対宇宙人地雷、〝針鼠〟を持ってきた。針鼠はセンサーに引っ掛かると、銃弾より強烈な無数の針が飛ぶ。
「誰か南東の入り口に針鼠を仕掛けてくれ」
「僕がやろう」
シュナイダーが志願する。危険物を取り扱うなら、元軍属の泥棒だ。慎重かつ速やかに仕掛ける。
次にキノは、チリーに聞く。
「それで、チリー。トラピスト・エレメントを食べたのか?」
「実はな、墜落した小型UFOの破片を食べたんだ。伸び悩んでた。酔っ払ってた」
「よく死ななかったな」
チリー・ジョーの不思議な暴露だ。トラピスト・エレメント計画は何十年も前に危険と判断されて、頓挫している。1000人ほどの被験体が用意され、UFOのボディーに含まれる物質を投与され、超人的な能力を持たすという計画だったが、被験体全員は苦しみながら死んでいったと、最終報告がまとめられている。チリーがチーム9の中心的役割を果たせるのは、自殺行為から生まれた奇跡だ。
「運が良かった。ノーネームと五角に渡り合えるのは俺だけだ」
「そうだな。チリーならワープでビームガンを避けられる。しかし、攻撃面で劣るぞ」
「針鼠を顔面にめり込ませてやるさ」
すると、ガオームが意気込む。
「じゃあ、ナコシの首を俺が千切ってやる」
ピピピ。フライングバスの通信機が鳴り、キノが応対する。




