037(人間に擬態)
正木の傷痕だらけの皮膚が青くなり、額にかかっていた髪の毛が盛り上がる。触覚だ。トラピストの使徒。
「チェーンってヤツも悪くない。ブレードはなかなか使えるな」
正木だったトラピストの使徒はチェーンの子機を1つブレードに変える。
「お前は誰だ!?」
「貴様らアンタレスの連中が、大好きなノーネームだよ。こっちから来てやったのに、階級が伍長はないだろ」
「人間に擬態していた!?」
「だから、ノーネームなんだよ」
ノーネームのブレードが飛んで来る。ガキン! バサラは咄嗟にシールドで防ぐ。
「ほう。このスピードで防げるとはな。ハイブリッドよ、長官に負担を押し付け過ぎじゃないか? 長官さえ殺してしまえば、指揮系統を失う」
「そう簡単にいくかよ! トラピストの使徒なのに、なぜマスクをしてない!?」
バサラはチェーンのナイフをノーネームに向けて飛ばす。キン! ブレードで弾かれる。
「俺もハイブリッドなんだよ。トラピストの使徒寄りのな」
ドカン! ノーネームはチェーンのガンで壁に穴を空けた。物凄い爆風と砂ぼこりが舞う。
「待て!」
ノーネームは空けた穴から外に飛び降りる。次の瞬間、ドスン! と揺れと爆発音が走りめぐる。ノーネームが持ってきたカバンの中身は爆薬だった。バサラの読み通りだ。
バサラは、ノーネームを後回しにして、織田長官の脈を診る。
「ダメだ…………それに、この出血では。織田長官、仇は必ず討ち取ります」
バサラはオフィスに戻ると、滅茶苦茶になっていた。上の階と下の階に穴が空いていた。牡丹は悲壮感を漂わせていた。
「バサラさん、織田長官は?」
バサラは首を横に振る。
「そんな…………」
「ノーネームだ。奴は人間に擬態する事ができるようだ」
「初耳だよ、そんなの」
「奴もハイブっ……」
バサラは躊躇った。ノーネームも自分と同じハイブリッドだと、口にする事を。
「えっ? 何?」
「いや、何でもない。それより、爆弾は1個だけか?」
「うん。センサーで確認したし、防犯カメラでも、他に仕掛けた形跡はなかったよ」
「取り敢えず、基地内は安全だな」
「それで。ノーネームを取り逃がしたのか?」
木村が話を聞いていた。
「奴は強い。奴のチェーンのバージョンは3.0以上だ、トレーニングもせずに。かなりのデジタル統制力だ」
「ハイブリッドでも勝てないのか…………」
「ナコシはそれ以上の強さだ」
バサラはキノに報告するために、1階の会議室へ行く。母船内部の見取り図が、ホワイトボードに映し出されていた。
「バサラ、来たか。爆弾は1つとの話だが、爆発音は2回聞こえた。何があった?」
「織田長官がノーネームに殺害された。そして、チェーンのガンで壁に穴を空けて逃げていったよ」
会議室内がザワザワする。アダムにヨッシー、アメリカ人が3人。チリー・ジョーとガオーム。もう一人は分からない。




