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ブースト・VASARA  作者: ルク穴禁
第5章(ブーストガンとロボット)
35/102

035(ご近所さん)

その日は特に事件もなく、バサラは自宅マンションに帰る。


バサラは屋上の駐輪場にフライングバイクを停めると、近くでオバチャンが3人、井戸端会議をしていた。その中には管理人も。


「あら、バサラちゃん。お帰り」

「お姉さん達、ただいま」


「アンタレスの隊員さんが、住んでくれてるなんて、良いわ~。うちのマンションにも来てもらおうかしら」

「そうなのよ~。防犯上にとっても良いのよ~」


バサラはオバチャン達に会釈をして自分の部屋に行く。網膜スキャンをしてドアを開け、真っ先に冷蔵庫に直行する。冷凍室からウイスキーを取り出して、らっぱ飲みをする。


「っかー! 効くぜ! 明日は、サソリの顔合わせだ。ワクワクするぜ」


『混血のユーザーは摂取カロリーに気を付けてください』

「昨日はカロリーの摂りすぎだな」

『1日で500キロカロリーが上限です』

「はいはい、分かった分かった」


トラピストの使徒は肝臓と腎臓にあたる臓器が、人間より弱い。樽で酒を飲んでる宇宙人は次々と専用の病院で入院生活だ。医療費を40年間、人間が負担する契約の代わりに、飛行車や飛行バイクの技術を各メーカーに提供された。日本では自動車、バイクは当たり前。その他にもSNS運営会社やサプリメント会社までが熾烈な開発競争をしている。フライング系の乗り物はどれも、フライトコントロール、姿勢制御が自動で、免許取得のハードルは地べたを走る普通車とたいして変わらない。寧ろ、普通車のが難しいくらいだ。昔は、マニュアルとオートマと言えば変速機の違いだが、今では手動運転可と全自動運転のみの違いだ。


バサラはウイスキーを一口飲む。


『後、153ミリリットルでカロリーオーバーです』

「えー。それだけ? もっと飲みたい」

『規則です。最近、カロリーオーバーが続いてますよ』

「今日は一段と美人だね~」

『非人型ロボットは化粧をしません。ダメです』


テレビ画面に映る〝彼女〟は照れ臭そうに言った。


「仕方ない、ゆっくり飲むさ。テレビを点けて。番組は任せる」

『FFCレースはどうでしょう?』

「フライングフォーミュラカーか。場所は?」

『ホーチミンです』

「ベトナムね。映して」

『かしこまりました』


50台の空飛ぶフォーミュラカーが、時速2000キロメートルで決められたコースをぶっ飛ぶ。


「久々に観たが、凄い迫力だな。……あと3周。1位は日本の大手ワークスか」


『ガシャン! ドーン! おおっとクラッシュだー! 空中分解! パイロットは…………脱出ハッチが開いて、無事のようです!』


「嫌なものを観ちまったな。気分が悪い。寝る。間接照明、快眠ミュージック」

『かしこまりました』

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