034(天才の現れ)
正木巡査の試験は続く。バサラはノーマルタイプのチェーンを仕舞い、子機が6つの最新型チェーンをラックから取る。
「…………」
「どうした?」
「あのう、実は、ホビータイプで遊んだことならあります」
「おもちゃと本物は全く違うぞ」
ホビータイプのチェーンは微弱な脳波を読み取り、ほぼオートマチックで動く。もちろん、ナイフ等の武器は作れない。本物のチェーンは脳波で完全コントロールをしなければ扱えない。それだけ、正木のセンスが凄いという事だ。
バサラは、正木の背中に最新型のチェーンを取り付ける。
「さっきより、なんだか頭がスッキリします」
「正木巡査には新しいのが合うのか。よし! 右をブレードにして、左をガンにして」
正木のチェーンの右3本が刀になり、左3本がグレネードランチャーになる。
「これでいいですか?」
「凄い男だ。バージョン3.0以上か。たいして訓練もしないで……。俺がシールドで防ぐから、ガンを一発撃ってみて」
「はい!……ところでガンの弾は何ですか?」
「空気だよ」
バサラは、正木から10メートルほど離れて、チェーンでシールドを作る。
「いつでもどうぞ」
「大丈夫ですか?」
「パワーは抑えてくれよ」
「では、行きます!」
バン! ガシッ! ドーン! 爆風が舞う。
「抑えてって言った割には弾が重いな」
「次は何をすればいいですか?」
「合格だ、合格」
「……本当ですか!?」
「筆記試験に自信は?」
「半々てところです」
「仮に筆記試験で落ちてても、ここまでチェーンを操れれば問答無用で合格だ」
「やったー! これでテロリストと渡り合える」
「今、アンタレスが追いかけてるのはテロリストのトップだ。遣り甲斐はあるぞ」
「ナコシですか?」
「よく知ってるな。筆記試験に出たか」
「勉強しましたから」
「正式にアンタレスの隊員になったら、最新型のチェーンが支給されるよ」
ーー正木は、その日付でアンタレスの隊員となり、階級は伍長となった。正木は警察署へ戻り、人事手続きをする。公務員として出世したから送別会を企画されている。バサラと年が近いし、良い仲間ができた。
バサラはオフィスに戻ると、ヨッシーとキノが立ち話をしていた。
「作戦会議か?」
「明日にはサソリが全員揃うぞ。小森昴を除いて」
「昴さんは来れないか」
「スパコンがあるからな。家に居てもらった方がいいだろう」
「国防軍の100人も来るのか?」
「既に母船から1キロメートル離れた森林に潜伏してるよ。斥候の情報によると、母船のバリアはほぼ消えてるそうだ」
「サソリが集まれば、いつでも突入できるって訳か」
「作戦開始は明後日辺りだな。バサラには斬り込み隊長をやってもらおう」
「ああ、任せろ。ところで、アダムも来るのか?」
「ノーネームが日本に来た以上、ブエノスアイレスから追って来る。日本とアルゼンチンには超高速旅客機は就航してないが、明日には来れるだろう」




