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ブースト・VASARA  作者: ルク穴禁
第5章(ブーストガンとロボット)
30/102

030(ハイブリッド)

「おっ! バッターボックスにひときわデカイ野人みたいな助っ人外国人が。デケえ、2メートル以上はある。審判が小人に見えるな」


『ピッチャー投げた! ブゥン! おっと、ガオーム選手が豪快な空振り!』


「ガオーム? チリー・ジョーが推薦してるっていう、ガオームのオリジナルはプロ野球選手か。スイング音がテレビ越しに聞こえてきた。凄いパワーだな」


『ガオーム選手、空振り三振!』


バサラは、オリジナルガオームの失態を見て、ハイブリッドのガオームが心配になる。単細胞の筋肉脳だと。


『ガオーム選手はもう年ですね。還暦間近ですよ』


60歳近いじいさんがプロでやってる。バサラはハイブリッドのガオームもただ者じゃないと、考えを改めた。バサラはウェアラブル端末に話しかける。


「ステーキが食べたい」

『冷蔵庫には猪のブロック肉があります。オートクッキングを致しますので、10分ほどお時間を下さい』

「じゃあ、シャワーでも浴びてる。その間に作っといて」

『かしこまりました』


バサラはオートシャワーで全身を洗い、オートドライで全身を乾かす。そして、出来上がった猪肉ステーキにがっつき、平らげる。眠くなってきた。


「寝る。食器を自動洗浄、間接照明、快眠ミュージック」

『かしこまりました』


ーー次の日の朝。バサラは少し早めに起きてしまった。ぐっすり眠れたから二度寝はしない。たまには早く出勤しようと考える。


バサラは5分ほどで支度をして、駐輪場へ行き、フライングバイクにまたがる。雪が降っていた。


「悪天候の時は速度制限があるんだよな~」


バサラはフライングバイクで飛び立つ。時速120キロメートルで巡航すると、雪の粒が顔面にバシバシ当たるから痛い。航空法に触れないが、ヘルメットを忘れてしまった。


バサラはアンタレス飯田基地に着き、フライングバイクを駐輪場に停める。すると、駐輪場の近くに、ジムニーが停まる。古い、地べたを走る軽自動車というヤツだ。白衣を着たじいさんが降りてきた。


「真田隊員じゃないか。おはよう」

「初田主任!? よくそんな骨董品に乗れるな」

「良いだろう? 自動車オークションで落札したんだ。800万円はちょいと痛手だったが」

「フライングカーのジムニーなら250万円で新車が買えるよ」

「分からんか? ロマンだ、ロマン」


バサラと初田主任は屋内に入り、網膜スキャンをする。


「とても、ビーム兵器を開発しようとしてる人が乗る車とは思えん」

「雪だからね。ジムニーは四駆なんだ」

「スタッドレスタイヤってヤツ? 高いんでしょ?」

「今はあまり生産されてないからね。しかし、たまには地べたを走るのも良いものだぞ」

「バギーや地下タクシーなら最近乗ったよ」

「ほほう。今度詳しく聞かせてくれ」


初田主任は研究室がある地下へエレベーターで行った。バサラは2階のオフィスへ階段で行く。一番乗りだと思ったら、オフィスの奥、キノとアールがデスクに居た。バサラはデスクのそばへ行く。


「朝、早いね~」

「ん? バサラか、おはよう」

「バサラさん、おはようございます。徹夜とはどんな感じになりますか?」

「徹夜? そりゃ気分がハイになるよ。…………って、キノさん、徹夜したの? 過労死するよ」

「1日くらいで過労死はしない。それより、サソリの選抜メンバーの調整が済んだぞ。軍属の者には長期休暇を取ってもらう。それから、飯田市に集合する事になったよ」

「純血用のマスクは?」

「準備はできている」

「あとは母船に乗り込む方法だけだな。航空機で行くか?」

「今のところ、そうなるな。母船のバリアは小さく、脆くなっている。この数週間が勝負だぞ」

「ああ」


「久しぶりだな、バサラ」


後ろから声をかけられた。バサラは振り向くと、見覚えのある顔が居た。

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