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ブースト・VASARA  作者: ルク穴禁
第5章(ブーストガンとロボット)
26/102

026(英雄の死亡説)

バサラ達、隊員は基地に引き上げる。代わりに、後から来た諜報部の数人が現場検証を始める。一応、警察も一緒に。


アールは研究室に運ばれる。初田主任の出番だ。初田主任はアールの状態を診る。


「こりゃ酷い。直ぐに移植してやるからな。それと真田隊員」

「何?」

「例の小型ビーム兵器だけど」


初田主任は手を働かせながら言った。


「人間でも扱えるようになった?」

「近いうちにな」

「本当か?」

「チェーンの親機と子機を繋げているのもビームだということは知ってるね?」

「ああ、勿論」

「ビームの紐は出力が微弱だから、肌に触れても痛くも痒くもない」


初田主任はアールのソフトを取り出して、未使用のハードが引っ掛かってるハンガーに向かって歩く。バサラも後を追う。


「真田隊員のデジタル統制力のタイプなら子機をビームガンにできるかもしれん」

「本当か!? 俺はバージョン1.9までしか使えんぞ」

「そうか。おそらく、バージョン2.0で使えるだろう。旧式のツインタイプのチェーンを改造してね」

「俺が使ってるチェーンじゃないか」

「そうだ。今やプロトタイプのハイブリッドくらいしか扱えない物」

「俺はバージョンを少し上げるだけでいいのか」

「開発に2~3年ってとこだ」

「そんなに待てないよ~」

「アンタレスの研究は最先端だが、こればっかりはね」


初田主任は未使用のハードの背中に回り、胴体にソフトを差し込み、ハッチを閉める。


『システムを再起動します』


新しいアールの右腕が動く。次は左腕。頭部のカメラで確認してる。そして、バサラの方を向く。


「バサラさん、初田主任研究員。ありがとうございます」

「ドライタイプの高硬スチール装甲だ。それにしても、最近のテロリストは過激さが増してる。特に長野県で」

「ナコシが潜伏してるからかな」

「あの超危険宇宙人かね? 怪しい動きを見せているようだけど」

「初田主任の見立てで、金塊が宇宙船の燃料になると思うか?」

「どうかな。私はそうは思わないけど」

「所詮は噂程度の話か」

「トラピストの使徒は技術提供をコントロールしてるのは確かだ。しかし、金塊は燃料にならないと断言しよう」

「やっぱり、トラピストの使徒は、地球を徐々に乗っ取るつもりかな?」

「生態系の頂点に2種は無理だろう、長い間は。その内に崩れると思うよ」

「パワーバランスが?」

「まあ、私はその専門家じゃないから話し半分でいいよ。素敵な宇宙船地球号は誰の物か……さあ、アールは直ったぞ」

「じゃあ、戻るね」

「私はビーム兵器の研究をしたくてウズウズしてるんだ。ハッハッハ!」

「アール、行くぞ」

「はい」


バサラとアールはオフィスに戻る。すると、同僚達は「おおー!」「アール!」「無事だったか~!」と、20人くらいが、アールを取り囲む。


「アールは皆の相手をしといて」

「了解しました」


バサラは、キノのデスクに行く。


「そういえば、アダムは? 顔を出すって言ってたのに」

「バサラは聞いてなかったか。ブエノスアイレスの特殊刑務所で脱獄事件が起きて、アダムはとんぼ返りしたよ」

「アルゼンチンはホットだな」

「ノーネームが逃げ出したそうだ」

「せっかく、テロリストの上層部を捕まえたのに」

「自爆攻撃で特殊刑務所は半壊らしい」

「アダム、大丈夫かな…………」

「弱気になるな。大丈夫だ」

「唯一の肉親だ。いや、かりそめか」

「お前達はオリジナルが良い。タフだ」

「徳川バサラ……キノさんと年が近かったよな」

「バカ! 10歳以上違う」

「そうだっけ?」

「存命なら今年で52歳だ。私が若い頃は刺激を受けたものさ。最近までファンクラブにも入ってた」

「過去形ってことは、キノさんは死亡説派か」

「いくらなんでも、宇宙空間で迷子はイコール死だ」

「どこかの星で生きてないかな」

「非現実的だ」


ピコン。キノのウェアラブル端末が鳴る。

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