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ブースト・VASARA  作者: ルク穴禁
第4章(仲間集め)
22/102

022(プロトタイプの強み)

午後は何も事件は起きなかった。バサラとアダムは繁華街のバーに行く。バサラの行き付けだ。バサラは旧式のチェーンをバッグに入れて。


落ち着いた雰囲気のバーだ。客は数人。バサラとアダムはカウンター席の端に座る。


「いらっしゃい。今日は何にする?」

「俺は、ビールで」

「兄さんがビール!?」

「昨日、CMを観たから何だか飲みたくなっちゃって」

「いつもはウイスキーなのに。僕はマティーニを」

「かしこまりました」


シャカシャカシャカシャカ。マスターはカクテルを作ってる。シェーカーで氷を砕き、混ぜる。


「ビールとマティーニ、お待ち」


バサラとアダムはグラスを持ち、ノールックでグラスを当て、乾杯する。バサラはビールをグイっと一口飲む。


「ぷはー! このほろ苦さが嫌な事を忘れさせてくれる」


アダムもマティーニを飲む。


「…………」

「どうした? 織田長官になんて言われた?」

「その前に、ここは大丈夫?」

「ああ。マスターはアンタレスのOBだよ。それに、トラピストの使徒はバーなんかには来れないからな」

「そっか。来れないってか、来ても意味ないからね」

「地上でマスクを外したら酸素にやられる。コロニーで樽飲みしてるさ。それで、織田長官は何だって?」

「ブエノスアイレスに対宇宙人に特化した人間は居ないかって…………。変だよね。アンタレス自体、対宇宙人に特化した組織なのに」

「メンバーを選抜してるのさ。最近、トラピストの使徒が怪しい動きをしてるって聞いたことないか?」

「うん。急に鉱物を集め出したみたいだね」

「ゴールドは母船の燃料になるって言う奴も居る」

「超高速移動、ワープにゴールドが要るのかな?」

「解らん。まだ噂程度だしな……。で、アルゼンチンでの職務はどうなんだ?」

「南米一のテロリスト、ノーネームを特殊刑務所にぶちこんだよ」

「ノーネーム!? ナコシの右腕じゃないか。やるな~」

「取っ捕まえる時に、偶然、チェーンのナイフがマスクに当たっただけだよ」

「アダムのチェーンのバージョンは2.8だったかな?」

「3.2まで上がったよ」

「凄い! ガンやブレードが使えるレベルだな。弟に力を越えられるのも近いな」

「兄さんとは、デジタル統制力のタイプが違うから。兄さんのナイフはブレード以上に切れ味、強度があるよ。チェーンを扱う者は皆、バージョンアップを目指すけど、それはチェーンを極めるのとは違う」

「プロトタイプの強み…………。俺達のオリジナルは数週間、チェーンの訓練をしてバージョン9.0まで使えたらしい」

「9.0。新型のチェーンなら核攻撃ができる数値だね」

「恐ろしいな。…………よし! 今日はとことん飲むぞー!」

「アハハ。南米の牛は順調に数を増やしてるよ」

「牛のげっぷメタンガス作戦? 少しは効果あるのかな、アハハ」

「牛の数に比例してキャトルミューティレーションが増えたけどね」

「トラピストの使徒は寒い方が都合が良いのかな」

「それ思った。公転軌道の0.12天文単位は動かしすぎじゃないかって」

「地球の公転軌道を変えるんだから、トラピストの使徒にとっても大仕事だったろうな。南半球は冬だから寒いだろ?」

「日本は暖かくて良いね」

「3ヶ月も経てば、逆に日本が寒くなるさ」


バサラは、久々のアダムとの再会に気を良くして、グイグイとビールを飲む。

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