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ブースト・VASARA  作者: ルク穴禁
第4章(仲間集め)
21/102

021(ミサイル銃)

バサラはアンタレス飯田基地に戻り、フライングバイクを駐輪場に停めて中に入ろうとすると、普通のパトカーが数台見えた。ちょうど松下が警察官に連行されるところだ。目が合う。


「おい! アンタレスの人!」

「良い義手を着けてもらえたか?」

「すげえよ! 生身の手と変わらない、痛みも感じるんだ!」

「良かったな。おとなしく服役しろよ」


松下はパトカーに乗せられて連行された。


バサラはオフィスに入ると、懐かしい顔が居た。キノと立ち話をしている。バサラに気付く。


「兄さん、久しぶり」

「アダム……ブエノスアイレスから戻ったのか?」


バサラの弟、真田アダム。バサラを実験、調査した結果をフィードバックさせて造られた人造人間。アダムは正式にロールアウトされた第1号だ。


「休暇でね」アダムはバサラに近付き「本当は織田長官に呼ばれたんだ」と、耳打ちする。


「何!?」

「これから直接話を聞きに行くよ」

「そうか、アダムも」


仲間になってくれれば心強い。バサラはちょっと複雑だ。人造人間といえども兄弟に違いはない。コードネーム、バサラ・ワン。計画は頓挫しており、徳川バサラのクローンは結局、バサラとアダムの二人しか居ない。


徳川バサラ計画を再始動させようとした3年前、オリジナル・バサラは火星旅行のさなかに宇宙船が軌道を逸れて、宇宙の彼方に消えてしまった。法的には死亡扱いだ。徳川バサラの葬儀は地球葬となり、世界中の50億人が葬儀を視聴した。それでも、まだどこかで生きていると信じてる団体が幾つもある。まるで宗教のように。


「それでは、キノ少佐」


アダムは敬礼する。


「アダム、今夜飲みに行かないか?」

「兄さんの奢りなら行くよ」

「仕方ないな、アハハ」


アダムはオフィスを後にして、長官室へ行った。


「バサラ、クラッカーは仲間にできたか?」

「表情が乏しくて感情があんまり読めなかったけど、喜んで協力してくれるよ」

「どっちだよ! 全く」


バサラはオフィスを見渡す。


「あれ? 牡丹が居ないな」

「情報部に戻ったんじゃないか?」

「ボーダーチームの吉田と連絡を取りたいんだけど」

「私が探してやろう」


二人はキノのデスクへ行く。


「吉田はヨッシーと名乗ってた。まだ飯田市に居るかも」

「ソルジャーネットで詳しく調べてみよう」


キノはパソコンのキーボードを操作する。


「流石は少佐、ヒラじゃ分からない事まで閲覧できる」

「ほう。ここ数ヶ月で1~3日の休暇や職務で、ちょこちょこ長野県に来ているな」

「宇宙人軍の将校……多分、ナコシが怪しい動きをしていたって言ったからな。もしかしたら、インゴット以外に何か掴んでるかも? マシンの事にも詳しかった」

「マシンってロボットのことか? 人間に反旗を翻すロボットはおそらく、宇宙人が手を加えている。ロボットのテリトリーは金塊を隠すのにうってつけという訳か」

「なあ、キノさん」

「何だ?」

「ナコシが日本に居る間に始末した方が良くないか? それから、宇宙人の機密情報を盗み出す」

「いや、同時進行でやろう。この件は複雑に絡み合ってると推測してる。バサラ、お前もよく分かってるだろ?」

「ああ、勿論。松下に小型ビーム兵器を流した。他にも手にした奴が居るかもな」

「テロリストに新兵器が流れている以上、チェーンだけじゃ心許ないな。〝ブーストガン〟の使用許可を出す」

「ブーストガンって、ミサイル銃のこと?」

「アンタレスでは正式採用されてないが、かなり強力なライフルだ。防衛省に大量発注しよう」

「街中でミサイル銃でドンパチするわけには……流れ弾で建物が吹き飛ぶぞ」

「それなら、大丈夫だ。弾丸の炸薬量を減らし、小型化された〝JPN式〟が最近、ロールアウトされてる」

「流石は少佐、国防軍の情報まで分かるのか」

「アンタレス勤続18年は伊達じゃないからな、ハハハ」

「ミサイル銃はいいとして、吉田は?」

「どうやら、移動中だ。アメリカに向かってる。また日本に来た時に接触しよう」

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