018(殺害リストのナンバーワン)
バサラはアンタレス基地の研究所へ行く。小型ビーム兵器を持って。主任研究員の初田に調べてもらう。
「これはカバーで覆われているが、中身はリボルバー式。真田隊員が鼎一色で見た物と同じタイプだろう」
「6発も撃てるってこと?」
「いや、このタイプは1発撃っただけで爆発する。銃身が弾丸……つまり、ビームに耐えきれないだろう」
「ここまでの小型化は使い物にならないって訳か。人間もビーム兵器を使えるようになる?」
「ビーム兵器は使用者の体内エネルギーを消費する仕組みだ。いくらデジタル統制力が高くても扱うのは難しいだろうな、現時点では。一般人では、ロケットランチャー程度の威力は出せても、体内エネルギーが枯渇して即死する」
「調べ終わったら、保管庫に入れといてね」
「はっはっは! いつの日か人間でも扱えるように調べあげてやろう。腕が鳴る」
初田主任は、バサラの一言を聞いてない。興奮しっぱなしだ。
「じゃあ、俺は取調室に行くから。あとは頼んだよ、初田主任」
バサラは、エレベーターで3階に行き、取調室の隣のモニター室に入る。キノがモニターを見ていた。
「キノさん、男は何か吐いた?」
「ロボット義手を着けてくれの一点張りだ」
バサラもモニターを確認をする。
「木村が尋問してるのか。義手を着けてやればいいじゃん」
「ただブツを拾っただけだったらどうする? ロボット義手は大手術だぞ」
「もしかしたら、インゴットを隠した宇宙人軍の将校が関わってるかも?」
「未だに点と点だ。線で繋がらない」
「俺が尋問を代わろうか?」
「そうだな。あんまり刺激するなよ」
バサラは取調室の前で網膜スキャンをして中に入る。木村の肩を叩き、交代を促す。男の険しかった顔が更に険しくなる。両手がない。木村はモニター室に行った。
「貴様ー!」
バサラはゆっくりと椅子に座り、男の目を見る。
「ロボット義手の手術を許可しようか」
「何!? 嘘じゃないだろうな?」
「但し先に入手経路を話すのが条件だ」
「ロボット義手を着けても、特殊刑務所行きじゃないだろうな?」
「ビーム兵器に関しては未遂だ。そこまで刑は重くないよ。人間用の刑務所は覚悟してもらわないといけないけどね」
男はバサラの顔をマジマジと見る。
「…………窃盗」
「それはカードにならないよ。詳しくは言えないが、報告書だけであとは不問だ」
バサラはブラフを切る。本当は顛末書だ。
「チッ! 情報だけ取ってサヨナラじゃないだろうな?」
「アンタレスは公務員だ。保証はするよ」
「…………言ってもいいのか? お前にとっても都合の悪い話だぞ」
「別にいいさ。さて、名前は?」
「…………チン・ピラオ。本名は松下直樹」
「仕事は?」
「警察に言うなよ?」
「ああ、分かってる。同じ公務員でもアンタレスは独立した組織だ」
「……闇サイトの運営」
「前科は?」
「今の闇サイトが3代目だ」
「つまり、2回は逮捕されてると?」
「そういう事になる」
「懲りないねえ。宇宙人も関与してる?」
「エイリアンの将校が隠した賄賂はインゴットだったんだな」
「その将校から小型ビーム兵器を渡された?」
「そうだ。チェーンを装備した人間と会ったから、復讐するなら、アンタレス飯田基地に行けって」
バサラが、あの日にすれ違った宇宙人はインゴットの持ち主だ。
「警察にバレなかったの?」
「ん?」
「一度、病院に行っただろ」
「あっ、ああ。ロボット義手の手術を受けたいって言ったら、6000万円からだとよ。保険適用外だし」
「その時に、得物を取り上げられなかったの?」
「オモチャだと思ったんだろうな」
「宇宙人の将校の名前は?」
「ナコシ……だったかな」
取調室をモニターしていた隊員はざわつく。ナコシはテロリストのボス。アンタレスが掲げる殺害リストのナンバーワンだ。軍属というのは嘘かもしれない。
バサラは少し考える。ヨッシーはボーダーチーム。そんな奴が確かに将校だと言っていた。エリートのインテリジェンスだ。ミスリードに引っかかるほど、お間抜けでもない。宇宙人軍とテロリストの境界線が曖昧になってきた。
「大体の事は分かった。手術室に案内しよう」
「特段凄いヤツにしてくれよ? 俺も身を守らないと」
「主任研究員と相談してくれ。今、ノリノリだから良いのにしてくれるかもな」