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外れスキル「影が薄い」を持つギルド職員が、実は伝説の暗殺者  作者: ケンノジ


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即戦力ルーキーと出会う7



「ダールトン卿、あなた従軍していたでしょう? 一個大隊が一夜で壊滅した事件、覚えてないですか?」

「そ、それがなんだっていうんだ!」


「キャンディ冒険者……本名はキャンディス・マインラッドといいます。その事件の犯人が、彼女ですよ」

「……な、に……」


 俺とダールトンがおしゃべりしている間に、立っている騎士はいなくなった。


「ロラン様がせっかく逃げたほうがいいとアドバイスしたのにぃ。おバカさん」


 体を起こしたダールトンが、俺に指を突きつけてきた。


「いいか!? 僕に手を出すということは! ダールトン家を敵に回すということだ! わかってるのか!? ギルド職員が!」


「ええ。ですから、この一件は国王にもご報告したいと思っています」


 さっきまでの威勢はどこへ行ったのか。

 もにょもにょと話しはじめた。


「へ…………へ、陛下に……? へ、陛下がおまえの話など、聞くわけが、ないだろ…………」


 ディーがこちらへやってきた。

 微笑んでいるように見えるが、瞳は凍てつくように冷たかった。


「わたくしだけならいざ知らず……ロラン様とロラン様が日頃一生懸命働いているお仕事すらバカにするのねえ……」


「慣れている。気にするな」

「まあ、器の大きな方だわぁ。さすが、このわたくしを圧倒的な強さで敗ったお方……ステキ」

「は、はあ!? こ、こいつが……!? この吸血鬼よりも、強い、だと……!? あ、ありえない……」


 やってきたディーは、ダールトンを蹴倒す。

 その顔面の横に槍を突き立てた。


「ひい」

「この男、どうしたらいいかしらぁ」

「や、やめて……! 殺さないで……っ」


 泣きはじめたと思ったら、今度は漏らしはじめた。


「情けない男は、わたくし嫌いだわぁ」

「よせ、ディー。こいつには、教えておきたいことがある」

「な、なんだ!? なんでも教えてくれ……!」


 光明を見つけたかのように、ダールトンが俺の足にしがみつく。


「合意してもらえて何よりです、ダールトン卿。……ちょうどいい部屋がある。そこに連れていこう」

「え……何、どこ? 何の部屋……!?」


 ぱぁ、とディーが笑顔を咲かせた。


「あらぁ、それは名案ねぇ。道具もちょうどあるし、授業にはぴったりだわぁ」


「え…………や、やだ……やめて……教えるって何を――――やだ……やめて……っ」


 髪の毛を鷲掴みにし、涙や鼻水でぐちゃぐちゃになった顔を俺は覗き込んだ。



「あなたが一番よく知っていることですよ。逆は知らないでしょ?」



 青ざめた顔が、いっそう色を失くした。


 ダールトンの襟首をつかんで引きずる。

 ディーは隣で鼻唄を歌っていた。


「やだあああああああああああああ!? やめて、やめ、ぎゃああああああああああああああああああああ!?」


 罪もない冒険者や町や村の住民を、無差別に拉致し、ただの趣味で拷問し、自分の楽しみのためだけに殺した。


 おまけに、ディーにもその汚らわしい罪を着せようとしていた。


 色んな人たちの『普通』を奪ったこいつを、俺は許さない。


「地下の! あの部屋だけはやめて、やめてえええええええええええええええ! お願い! お願い! 頼むからぁああああ! お金、お金あげるから、だからぁあああああああああああああああああ」


 地下室に引きずり込んだ。

 俺も何度かしたことはあるが、これの何が楽しいのか、さっぱりわからない。


「ウフフフ、楽しみだわぁ」


 酸化したどす黒い血がつく器具を見て、ディーがうっとりとため息をこぼす。


「やだぁあ……助けて……誰か……助けてぇ……」


「そう言って哀願した人たちはいたでしょう。あなたは、その願いを聞き入れましたか? 違うでしょ」


 やだああ、やめてえええ、と鼻水も小便も垂らして情けなく泣くダールトン。

 俺は髪の毛をもう一度掴んで、目を合わせ、まっすぐ純粋な殺意をむけた。




「今のうちに、ママに心の中でお礼と謝罪をしておくんだな、坊や。簡単に死ねると思うなよ」



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