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外れスキル「影が薄い」を持つギルド職員が、実は伝説の暗殺者  作者: ケンノジ


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元奴隷の美少女戦隊


 翌朝、昨日解放したはずの奴隷の四人が家の前にいた。


「……何をしている」


 レニーは、ライラ……魔族をコレクションに入れる、と言っていた。

 たしかに、奴隷たちの種族はばらばらだった。

 人間、獣人、ドワーフにエルフ。


「あの……私たち、相談したんです」


 代表するように人間の少女が言った。


「お礼をしたいけど、何も私たちにはできなくて……だから、何かお手伝いをさせてほしいんです」

「手伝い、と言っても……」


 俺は困って、ついできてしまった眉間を揉んだ。


「自由に生きろと言っただろう」


 こくこく、と獣人の少女はうなずいた。

 尻尾の毛色や耳の形からして、たぶん狐の獣人だ。


「だから、自由に生きようとしているの。解放してくれた恩返しをしたいの」


 そういうことか。

 いきなり自由に、と言われても、逆に困るのかもしれない。

 服はボロだし路銀もない。


「じゃあ、冒険者になるか? なれるかどうかは保証できんが」

「それが、手伝いに、なるの……?」


 エルフが言うと、俺はうなずいた。

 家の前でする話でもないだろう。


 俺は四人を家に招き、まず風呂に入ってもらった。


「殊勝な心掛けであるな」


 スープを混ぜながらライラは感心していた。

 風呂上がりの彼女らに、俺やライラの服を与えた。

 戸惑ったり、恐縮したりしていたが、半裸のようなボロのほうが困ると俺が言うと、素直に着てくれた。


 身綺麗にすると、いずれも個性はそれぞれあるが、整った顔立ちの少女ばかりだった。


 食卓に案内し、ライラの料理を食べてもらう。

 一瞬眉をひそめたが、黙ってスープを飲む。


「レニーは、酷いやつでした。ロラン様がやらなくても、いずれ誰かが手を下したと思います。それだけ、方々で恨みを買っていたので」


 人間の少女が言うと、他の三人は無言で同意した。


「ロラン様……ボクたち、昨日のことは、何も知らないの」


 ちっちゃな声で獣人の少女は言った。


「そうしてくれると助かる」


 ドワーフの少女が何か言いたそうにしている。


「…………あの……」

「どうかしたか?」


 子供のように小柄だ。

 おそらくこれでも成人している。

 レニーは、気分によってとっかえひっかえ相手をさせていたんだろう。


 ドワーフの少女はそういうタチなのか、口数はすくなかったが、ひと言、ぽつんと言った。


「名前……つけて」

「名前?」


 不思議に思ったが、今までのものは思い出すからもう呼ばれたくもないそうだ。


「となれば、妾の出番であるな!」


 ふんす、と鼻息を荒くしたライラは、悩むことなくぱっぱと名付けていく。


「ニンゲンのそなたは、イール。獣人のそなたはリャン。ドワーフのそなたはサンズ、エルフのそなたはスゥだ」


 四人の顔がぱっと明るくなった。

 イールが頭を下げた。


「ありがとうございます、奥様」

「お――――奥様っ」


 きゅるん、とライラがときめいていた。


「奥様……奥様…………ムフ……なんとも言えぬ響きである……」


 嬉しかったらしい。


「冒険者になり、ある程度の金ができたら、そのときこそ自由に生きてくれ。故郷に帰ってもいいし、そのまま冒険をしてもいい」


「「「「はい」」」」


 まあ、俺が試験官を務める冒険者試験をパスできるかどうかだが。


「しばらくは、うちで暮らすといい。金がもったいない。いいだろ」


 俺はライラに水をむける。


「うむ。構わぬぞ。妾は奥様であるからなっ。ケチくさいことは言わぬ。…………ムフ」


 よっぽどお気に召したらしい。


「ロラン様……優しい」


 ドワーフのサンズが言うと、獣人のリャンも何度も首を縦に振った。


「ロラン様、とってもいい人なの。奴隷のボクたちに……」


「違う。奴隷じゃないぞ。俺の手伝いをするということは、即ち戦力になるということだ。戦力を大切にするのは、当然だ」


「そなたたち、安心するがよいぞ」


 ライラがにっこりと微笑むと、イールが泣き出し、それに釣られてみんなが泣き出した。


「今までっ……ツラかった、のだなぁっ……」


 えぐえぐ、とライラももらい泣きしていた。




 試験官は俺で基準を甘くするつもりはないから、冒険者になれないかもしれない――。

 そう思ったが、杞憂に終わった。


「へえええ、みなさん、粒ぞろいといいますか、面白いですねぇ」


 俺が持っている結果の紙をミリアが覗き見た。


「ええ。どうなるかと思いましたが」


 昨日とは四人の様子がまったく違うので、誰も奴隷の四人だと気づかなかった。

 俺は四人それぞれに冒険証を渡す。


「これが冒険証!」

「ボク、興奮するの」

「冒険証……曲げても、折れない」

「これで、あたしたちも冒険者……『自由』の職業」


 いつもは一対一で説明するが、今日は四人相手なので、応接室を借りて講習をした。


「まず、イール」

「は、はいっ」

「実技は目も当てられたものじゃないが……その分魔力測定は規定を上回った」

「と、ということは……?」

「ああ、魔法の適正がある。後日、詳しい人間と引き合わせる。色々と学ばせてもらえ」

「はい!」


 フンフン、と興奮気味に獣人のリャンが尻尾をわさわさ振った。


「イール、すごいの……ボクは、ボクは?」


「待て待て、順番だ。リャン、おまえは逆だ。魔法適正はゼロ」


 目を輝かせていたリャンの瞳から、生気が失せた。


「じゃあ…………ボク、ダメな子……なの……?」

「だが、一般的な獣人としての基礎能力は高い。俊敏性、視野の広さ、聴覚、どれもいい反応を見せた」


 全員に言えることだが、繋がれていたせいで、ろくな運動をしていない。

 運動能力はまったくダメだったが、それは現段階の話。

 きちんと鍛えれば、まだまだ十分に伸びる。


 レニーもこうして育てていれば、性処理の相手以上に役立っただろうに。


「斥候としては十分な武器になる」

「わぁーい!」


 ころりと態度を変えたリャンだった。

 じいっとドワーフのサンズがこっちを見てくる。


「おまえもリャンと同様。ドワーフ本来のパワーがあり、まだまだ鍛錬次第で伸びる。小柄なのもいい個性だ。かく乱役とアタッカーに相応しい」


「……そう。……よかった」


 サンズは口数はすくないが、表情を綻ばせた。


「こほん」


 ちらっとエルフのスゥがアピールしてくる。


「スゥは、説明の必要はないだろう。魔力適正も、実技の弓も上々だ。さすがエルフといったところか」


 どうだ、と言わんばかりに、スゥは他の三人を見る。


「むう……」

「ロラン様、スゥは、実は一番エッチなの!」

「……(こくこく)」

「ちょっと! どうでもいいでしょ、それ!」


 表情が、昨日に比べてずいぶんと豊かになった。

 解放感と明日への希望がそうさせるんだろう。


「最初はソロでも構わないが、四人はいいチームになる」


「となれば……一番ロラン様に褒められて、実力を認められたあたしがリーダーよね?」


 スゥが言うと、他の三人が反対をはじめて、自分が自分が、と立候補をする。

 群雄割拠のリーダー争奪戦がはじまり、応接室は賑やかになった。


 彼女たちを見て、ふと思ったことがある。

 奴隷とは、労働力としてこき使われるものが大半。


 だが、彼女らのように、コレクションだの性的嗜好のために飼われる……買われる者もいる。

 そのタイプの奴隷は、主を楽しませることだけを目的としている。

 これは、とても非生産的だ。


 阿鼻叫喚のジャンケン大会の末、


「まあ、やっぱり、リーダーは私ですよねぇ」


 イールがチョキを誇らしげに見ていた。

 三人は悔しそうにうなだれていた。


 魔法使いなら後衛になる。全体を見渡せるから適任かもしれない。


「ロラン様、今後ともご指導、宜しくお願いいたします」

「ああ。困ったことがあったら言ってくれ」


 自分で冒険をして金を稼ぎ、その日暮らしの生活をしていく。

 それは、とても不安定な仕事だが、逆にいえば、頑張り次第で稼げる金額は増えるということになる。

 そうすれば、やる気に繋がっていく。

 やる気に繋がれば、もっと頑張ろうと考えるようになる。


 どこかで辞めるかもしれないが、彼女たちには、それはまだ先のことになりそうだ。


 初日から、彼女たちは頑張り、クエストをいくつも消化してくれた。


「ロラン様が、困っているなら、ボク、助けてあげたいの」


 真顔でリャンはそんなことを言ってくれた。

 頭を撫でると、目をつむって「くぅぅ……」と変な声を上げる。


 気持ちはみんな同じのようで、口にこそしなかったが、そういう雰囲気は感じた。

 Fランクの、割安でキツいクエストもすすんで受けてくれた。


 誰かが、美少女戦隊と言い出し、それが定着してしまった。


 個人個人のやる気や個性が尊重され、成果分の報酬が用意されている。


 それが冒険者のいいところだが、それに比べ、奴隷は真逆だ。

 主人にもよるが、生産的とは言えない。

 仕方なく奴隷をしている誰かがいるのなら、解放してあげるのが一番生産的なのでは、と俺は思った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 1番えっちということは…… レニー何某に無理やりされてもしっかりよがってたということ……! スケベ、圧倒的に多いスケベ……!!
2023/07/11 17:05 退会済み
管理
[気になる点] 世界観に合わせてるなら「美少女部隊」とか「美少女小隊」では? とは言えノリは大切だとも思います。
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