エピローグ3
その翌日だった。
エルヴィから手紙が届いた。ヴァンの処遇についてかかれていた。
「公開処刑か」
隣で手紙を覗いていたライラがぽつりとこぼす。
「表向きの罪状は書かれていないが、ルーベンス側からすれば、暗殺を指示した黒幕だからな」
妥当なところだろう。
「奴は、無邪気過ぎた。子供のように、自分の可能性を信じておった」
「便利すぎるスキルも考えものだな」
「そなたの『複製』に成功し、『ロラン』の実力を暗殺によって確認した。段階を踏みながら、あの男は、欲に取りつかれ、呑まれていった」
自分で新しい国を興す――。それを願っていたとして、実行に移せる能力がなければ夢物語。
だが、ヴァンの力はそうではなかった。
『軍工廠』は夢物語を現実に変え得るスキルだった。
俺たちが横槍を入れなければ、叶ったかもしれない。
ヨルヴェンセン王都の人々については、あれから一度長役とされる老人に会いにいった。
幸い冒険者ギルドの存在自体は知っていたようで、クエスト依頼の要望書を入れる箱を数か所に設置し、定期的に回収することになった。
「『復元』された魔導兵器は、もう残っていないらしい。見に行ったときに、もうないのだと老人が言っていた」
「そうか」
「あれらは未知の技術だ。使わないに限る」
強すぎる力は、争いの種になる。
いつかライラが言ったことだし、ライラ本人がそうだった。
「魔力抑制器具をつけるのはいつでもいいと言ったが、つけたほうがいい。今後、おまえの力を利用しようと現れる輩がいないとも限らない」
「であるな。そうしよう」
首輪を取りに行こうとライラが席を立つ。
その手首を掴んだ。
「ここにある」
「いや、寝室に……」
「それは、ワワークに返した。違うものを作ってもらった」
「うむ? 新型か?」
「まあ、そんなところだ」
俺はワワークから受け取った小箱を開けると、輝く銀色のシンプルな指輪が入っていた。
「綺麗……」
「これをつけてほしい」
はにかんだような笑みで、ライラはうなずく。
手が差し出された。指輪のサイズを指示してなかったが、問題なく特定の指に入りそうだった。
入れてみると指輪はぴったりで、手を宙にかざしてライラは何度も指輪を見ていた。
ふふふ、ふふふ、ととろけそうな顔をして、ずっと眺めている。
「貴様殿よ、これは一体どういう意味であろう」
何かを期待するような、ホクホクした顔でライラは訊く。
「? 魔力抑制効果だ」
「……」
感情がゼロになったかのように、ライラは無表情になった。
「首輪のときのように、取れないし、壊れないそうだ」
おほん、と気を取り直すように、咳払いをした。
「よい品である。ワワークには、礼を言わねば」
そうだな、と相槌を打つ。
「魔王は、封じておかなければならない、と今回の件で再認識した」
「うむ。もう、離れぬぞ」
「そうしてくれ」
指を絡ませると、ライラが頭を俺の肩に預けた。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
物語としてはここで完結とさせていただきます。
外伝や日常短編などは、不定期に更新していくつもりですので
できればブックマークはそのままにしていただけると幸いです。
「今後も執筆がんばれ!」「面白かった!」と思ってくださったら、
すぐ下にある星【☆☆☆☆☆】で評価していただけますと、作者は執筆頑張れます!
ブックマークして下さるだけでも嬉しいです。
皆様、応援のほどよろしくお願いいたします。




