表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
外れスキル「影が薄い」を持つギルド職員が、実は伝説の暗殺者  作者: ケンノジ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

223/230

エピローグ2




 すっごいところだから、とアイリス支部長に案内をされて、俺とライラは店までやってきた。


「アイリス・ネーガン様ですね。こちらへどうぞ」


 正装をした給仕に促され、店内を歩く。

 重厚な朱色の絨毯が敷き詰められた店内は、内装も凝っていて、たしかに『すっごいところ』らしい。


「ラハティの町に、こんな店があるんですね」

「そうなのよ。私も滅多に来ないんだけどね」

「妾に相応しいよい店である」


 物珍しそうにする俺たちとは違い、さも当然のようにライラはうなずいている。


 案内されたのは、最奥にある個室だった。

 飲み物を頼み、それが揃うと、静かにグラスを重ねた。


「オーランドさんとは、付き合いは長いんですか?」

「ええ。私がまだペーペーだったときからよ」


 まだラハティ支部に来る前のこと。

 酔い潰れているのを介抱したのが縁となり、まだ受付業務をしていたアイリス支部長の下へやってきて、クエストを受けるようになったという。


「優しいでしょ、オーランド」

「ええ」

「報酬を減額された件も、もっと怒っていいのに、しょんぼりした様子で漏らすから、どうにかしてあげたいと思っちゃって」


 ロジェの昔馴染みというのを知っているライラだが、興味はないらしく、酒と肴だけが進んでいた。


「オーランドさんも、森を出て長い。まだ差別が強く残っている頃を知っているから、変に差別慣れしてしまったのかもしれません。騒ぎ立てたところでどうにもならない、という無力感があったのかもしれません」

「減ってはいるけど、差別主義者ってたまにいるものね。ただ、イーミルの支部長がそうだとは初耳だったけれど」

「エルフや獣人の職員がいても不思議ではないのですが」

「あなたがもっと出世して、変えて。ギルドを」

「その前に、支部長が出世するでしょう。変えるのは僕ではなくあなたです」

「それもそうだけれど、たくさん出世したいわけじゃないのよね……」


 傾けたグラスの葡萄酒を眺めながら、アイリス支部長は困ったように笑った。


「仕事の話ばかりで、妾を放置するとは、不敬である!」


 もう何度も酒をおかわりしていたせいか、ライラの呂律が怪しい。


「ふけーである!」

「わかった、わかった」


 構え! と顔に書いてあるかのようだった。


 あれから、オーランドはときどきこちらの支部に顔を見せるようになっていた。

 といっても、Sランクに斡旋できる仕事はなく、俺とは世間話だけをする。支部長とは、仕事が終わったあと呑みに行っているようだった。


 ライラがクラッカーを寄こせ、次はチーズ、その次はドライフルーツだ、と要求してくる。


 すべて「妾に食べさせよ」と口を開けて待っていた。

 クラッカーを食べさせ、上機嫌にグラスを傾け、次はチーズを……そんな具合に、俺はリクエスト通りに食べさせてやった。


「ライラちゃん、よかったわね、ロランに食べさせてもらって」


 うふふ、と微笑みながらも、完全に小馬鹿にしているアイリス支部長だった。

 だが、普段は気づくであろう真意も気づかないほど、ライラは酔っていた。


「うむ」


 もぐもぐと口を動かして満足そうだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

新作 好評連載中! ↓↓ こちらも応援いただけると嬉しいです!

https://ncode.syosetu.com/n2551ik/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ