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外れスキル「影が薄い」を持つギルド職員が、実は伝説の暗殺者  作者: ケンノジ


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エピローグ1


 エルヴィの魔剣を分析してもらったときに、事件の一部始終をワワークに教えていた。

 最終的にどうなったのか、その報告とひとつ頼み事をしに、工房へやってきていた。


「へえ。『軍工廠』か。君が教えてくれる限りじゃ、いい能力みたいだね。そんな力があれば、ボクの研究や成果なんてあっという間に完成するんだろうなぁ」


 手元で小さな何かをイジりながら、ワワークは言う。


「いやー、それはそれでつまんないか」

「どうして?」

「結果はもちろん大事だ。けど、それまでに自分がどれほど心血を注いだのかっていう思い出も、ボクは大事だと思っていてね。愛着ってやつだよ」


 愛着か。

 俺ははじめてもらったナイフのことを思い出した。

 どこにでもある品だが、長い期間愛用したせいで、思い入れがある。


 手元の作業が一段落したのか、今度は俺の腕輪の様子を確認しはじめた。


「何か困ったことは? 上手く腕が機能しなかったり、思ったように動かせなかったり」

「これといってとくにない。十分な働きをしてくれている」

「あ、やっぱり?」


 ひと通り見てわかっていたらしく、ワワークは嬉しそうに何度もうなずいた。


「だと思ったよ。丁寧に扱ってくれるのがわかるし、もし何かあればこちらの不備だろうけど、それに関しては万全の自信がある」


 毎回改良点を訊いてくるが、満足いく『腕』なので、今日も改良点はないことを伝えた。


「せっかく試作品を使ってくれそうな理解あるニンゲンに出会ったんだ。もうちょっと改良したものを作りたいんだけど――」

「イジって悪化するほうが俺は困る」

「違いない」


 ハハハ、と血色の悪い顔で快活にワワークは笑う。


「そのヴァンっていう彼はどうなったの?」

「ルーベンス神王国に連れていかれた。処遇はまだ聞いていない」


 エルヴィに報告してほしいとも言わなかったので、もう終わっているかもしれない。


「今度、ヴァンが『復元』したっていう魔導兵器を見に行きたい」

「ああ。お安い御用だ」


 ヨルヴェンセン王国での話で、一番ワワークが興味を引いたのが魔導兵器だったため、面倒な聴取がはじまった。動力は何で、素材は何でできていて、形状はどうなっていて――と、ワワークは覚えている限りをしゃべらそうとする。


「これ以上は、今度にしてくれ」

「えぇぇー」


 ワワークは子供のような不満の声を上げた。


「今日は、約束がある」


 報酬不正事件を解決したので、アイリス支部長から食事に誘われているのだ。

 ライラが戻ってきたこともあり、日程を今日の夕方に決めていた。


「ああ、ちょっと待って! 前に言ってたやつ、できたよ」


 工房を出ていこうとすると、慌てたように追いかけてきたワワークに小箱を持たされた。


「助かる。礼を言う」

「ううん。また時間があったら魔導兵器のところへ連れて行ってくれよ。何か参考にできるかもしれない。それに、君の話は飽きないんだ」

「ああ。またな」


 ワワークの探求心に終わりはないらしい。

 人間ならとっくに死んでいるであろう年齢だと聞いた。

 吸血族にしては変わり者だが、それでよかったのかもしれない。



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