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外れスキル「影が薄い」を持つギルド職員が、実は伝説の暗殺者  作者: ケンノジ


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眠っていた兵器と魔王城2



 あれから一週間。

 ロジェが報告に戻らない。

『ゲート』を使えるロジェが、移動に時間をかけているとは思えない。

 我が家にやってきた形跡も今のところなかった。


「あのバカエルフは何をしている」


 ぼそりと愚痴が口を突いて出てしまった。空振りだったとしても、経過報告くらいはできるだろうに。


「バカエルフ?」


 声に視線を上げてみると、以前一時的に俺とパーティを組むことになったオーランドがいた。


「あ。オーランドさん。いらっしゃっていたんですね」

「アイリスとロランに、会いに」

「わざわざありがとうございます」


 ギルドの中でも、オーランドは目立っていた。

 背負った大剣もそうだし、片田舎の町でエルフはあまり見かけない。


「支部長を呼んできましょうか」

「うん。それよりも、エルフ? 誰のこと?」

「名前を出して、わかるんですか?」


 たぶん、とオーランドは首を縦に振った。


「ロジェ・サンドソングと言います」


 魔王軍での名だったから、わかるかどうかわからないが、ピンときたらしい。


「サンちゃん」

「サンチャン?」

「友達……だった」

「お知り合いでしたか」


 いや、今は違うのか。友達だった――と言ったな。


「生きていると思わなかった」


 ロジェは、本来はエルフだが、それでは舐められるから、とダークエルフとして魔王軍に所属していた。それ以前の話は知らない。


 オーランドの後ろで順番待ちをしている女性冒険者たちが聞き耳を立てているのがわかった。


「このデカ剣エルフ、アルガンさんとお知り合いなのかしら」

「この人もしかしてSランクの『疾剣』のオーランドさんなんじゃ……」


 ひとまず順番待ちをしている冒険者の受付を済ませよう。

 オーランドとの話は少し長くなるかもしれない。

 俺は仕事終わりに指定の酒場で待ち合わせることにした。





「サンちゃんと妹のマリオン、オーラ、仲よかった。……故郷の森の樹、とおーっても特別。人間たち、何かの素材になると知って、いっぱい伐った」


 仕事終わりの酒場では、オーランドはすでに呑んでいた。

 俺が向かいの席に着くと、懐かしげに話しはじめた。


「よく聞く話です」


 エルフの森は手つかずの森であることが多い。

 珍しい樹木が育っていたり、希少な鉱石が土中に埋まっていたりするという。

 それを欲深な者に目をつけられ、ロジェたちは人間と争ったという。


「サンちゃん、酋長の娘。戦った。妹のマリオンも、オーラも。でも、ダメだった。いっぱい仲間殺された。マリオンも、酋長も……」


 ロジェが魔王軍に入った理由は、復讐……といったところか。

 オーランドはどうにか生き残り、冒険者として生計を立てはじめたという。


「サンちゃん、元気?」

「そのはずです」


 ヨルヴェンセン王国にあたりをつけて調査を頼んだ。

 敬愛するライラがそこにいるかもしれないと知ったロジェは、喜び勇んで家を出ていった。

 あてが外れたのであれば、俺に文句のひとつでも寄越しそうなものだが、今のところそれもない。


 ロジェの目的がもしライラを探すだけであれば、わざわざ見つけたことを俺に報告しないのもうなずける。主人のいるところが自分の居場所と考えるのも不思議ではない。


「サンちゃん、懐かしい……」


 かなり出来上がっているオーランドは、幼少期からの思い出を語りはじめた。

 ロジェと妹とは幼馴染というやつらしい。

 竹馬の友であれば、引き合わせてあげたいが、今はそのロジェの居所がわからない。


 調査させるのはディーのほうがよかったかもしれないな。クエストで忙しくしているから遠慮したが。


「――いや、本当だって、マジで」

「嘘つけよー。見間違いだろ?」


 酒場の喧騒の中、カウンターで隣り合っている冒険者風の男二人の声が聞こえた。


「いやいや、これはマジのマジ。ありゃ前国王だ。間違えねえよ」


 オーランドも聞こえていたらしく、そのことについて話しはじめた。ついでに杯も空けておかわりを頼んでいた。


「最近、話題」

「話題、ですか」

「そう。死んだ人に会えるかもしれない場所がある」


 会ってみたい死者に、思い当たる人物はいないが――。


「あの、すみません。さっきの話ですが」


 俺はカウンターの二人組に話しかけた。


「どこで目撃されたんですか?」


 二人はすぐに職員のアルガンさんだと気づき、わけも訊かず教えてくれた。


「目撃したのは魔王領の付近だぜ。ああ、今はもう違うのか」


 魔王領と呼ばれている場所は、バーデンハーク公国とヨルヴェンセンの二国。前者がどうなっているかは俺もよく知るところ。


 となると――。


「ライラと行方がわからなくなったロジェか……」


 俺は二人にお礼を言って、席に戻った。

 手が止まっていると思いきや、頬杖をついたまま寝てしまったらしい。


「風邪ひきますよ」


 オーランドに上着をかけて、俺は会計を済ませ外に出た。



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