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外れスキル「影が薄い」を持つギルド職員が、実は伝説の暗殺者  作者: ケンノジ


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帰還と日常とこれから4


 夜遅く、ディーとロジェが家に帰ってきた。


「よくぞ戻ったな」

「ライリーラ様! ロジェ・サンドソング、ただいま帰還いたしました!」

「ロジェ隊長は大げさねぇ」


 玄関のあたりでそんなやりとりが聞こえ、こちらにやってくる三人の話し声がどんどん大きくなっていった。


「それで、首輪の件、直せそうな者のことは何かわかったか?」

「それなのですが……」


 言葉の途中で、三人がリビングに入ってきた。


「ロラン様ぁ~。あなたのディーが戻ったわよぉ」


 ソファでくつろぐ俺の隣にやってきて、ベタベタとくっついてきた。


 それを見たライラが、ディーの後ろで目を吊り上げている。


「そこをどくがよい。そこは妾の定位置だ」

「別にいいじゃなぁい。ちょっとくらい。ねえ、ロラン様」


 座る場所なんてどこでもいいだろう。

 と、口にしかけたが、どうやらライラはそうではないらしい。必要以上にくっつくディーの背中に殺気を滲ませた視線を突き刺している。


「ディー。離れろ。報告が先だ」

「やぁん。もお、いけずぅ♡」


 このまま放っておいたら、有能な冒険者を一人失うことになる。


 ぐいっと顔を押しのけると、ライラが割って入り、ディーのいた場所に座った。


「おほん。では、改めて報告を聞こう」


 んもぉ、とディーは不満そうに言って、反対のソファに座る。


 そばで片膝をつくロジェが、調査報告をした。


「あの首輪を直せる者を捜しに、吸血族の都市、アルザルで調査をしておりました」


 はじめて聞く名前の都市だった。


「アルザル……。ディーもそこ出身なのか?」

「ええ。ほとんどの吸血族はそこで暮らしているわぁ。陽のあたらない薄暗~い町なんだけれどぉ」


 そこに、ライラが補足してくれた。


「アルザルは、魔界にある地下都市だ。場所が場所だけに、魔族……妾たちのような純血種ではわかりかねる事情や風習や風土があってな。特別自治を認めておる」


 人間目線でいうと、エルフ族とその森のようなものか。


「アルザルで調査したところ、首輪の製作者が判明しました。ただ、その者は都市にはいないどころか、かなり長い年月、帰っていないようでして……」


 ロジェの報告にディーが続いた。


「わたくしも、製作者の名前を聞いてなるほどと思ったわ。かなりの変わり者で有名だったのよぅ」

「名は?」

「ワワーク・セイヴ。反純血種思想の持ち主で、首輪を作ったのもそのせいみたい」


 ワワーク・セイヴ……?

 聞いたことのない名だが、吸血族の中では有名だったようだ。


「頭がキレる男なんだけれどぉ、ちょっと間違った方向に尖り過ぎちゃったのかしらねぇ」

「ワワークという名なら、妾も聞いたことがある。一時期兵器開発で助力を仰ごうとしたが、門前払いでな。反純血思想なら、それもうなずける」


「魔王軍には、吸血鬼の部隊があっただろう」

「吸血族のすべてが反純血思想というわけではないのよぉ? わたくしは中立。親純派でも反純派でもないわぁ」

「戦力を集めるために兵を募ったのだ。各種族からな。もちろん、無理強いはしておらぬ」

「魔界のために戦ってもいいと思ってくれた者たちが集まった、ということか」

「然様」


 それを戦時中に知っていれば、反純血思想派――反純派とやらと手を組めたのだが。


「他に、直せそうな者はいなかったのか?」


 俺の問いかけに、ロジェが首を振った。


「どうやら、ワワーク個人が作り出した物のようだ。首輪の術式が理解できそうな者にも聞きこんだが、誰もわからなかった」

「うむむ……本人を捕まえて直させるか、新しい物を作らせるかのどちらかであるな」


 だが、そのワワークは行方不明……。

 製作者がわかっただけで、現状は打つ手がないようだ。


 ロジェとディーの今後の目的は、調査ではなくワワーク捜索へと切り替えられた。


 ディーをはじめとした、吸血族は、不老不死と呼ばれる。

 どれだけ前にいなくなったのかで、捜索の難易度は変わってくるはずだ。


「セラフィンに手紙でも出すか」


 む? とライラが顔をしかめた。


「また新しいオンナか」

「違う。勇者パーティの神官と言えばわかるか」

「そのオンナと今アツアツなのだな?」

「違う。話は最後まで聞け。最終的に俺が預かったが、あの首輪を元々持っていたのはセラフィンだ。だから、何か知っているかと思ってな」


「ならよし!」


 うむ、と大仰にうなずくライラだった。

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