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外れスキル「影が薄い」を持つギルド職員が、実は伝説の暗殺者  作者: ケンノジ


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サラマンドラと観戦者


 俺は三人を促し、村へと急いだ。


 近づけば近づくほど村が騒ぎになっているのがわかった。

 どんどん熱を持つこの風と強くなった煤のにおい……。


「兄貴、火事です!」

「みたいですね」


 戦闘中はいちいち敬語を使わないが、通常時はいつも通り接することにした。

 村にやってくると、村人たちが井戸から水を汲んで消火活動にあたっていた。


 事情を訊こうと思ったが、まずは火を消すことが先決だろう。

 俺たちが消火の手伝いをしていると、


「職員さん、どうやら襲ってきた魔物のせいで燃えたらしいぜ」


 槍持ちが村人たちから話を聞いてきてくれた。


「そうでしたか。ならこの火事はそいつが原因……」

「でかくて、トカゲみたいな魔物だって、村の人たちが」


 トカゲの魔物で、炎を吐くといえば、サラマンドラだろう。

 だが、あの魔物はこの近辺に生息していただろうか。

 さっきのレッドウォルフもそうだ。

 ここらへんではなく、もっと南に生息しているはずなのだが……。


 サラマンドラが相手だと、冒険者たちに指示を出しながら、というわけにはいかない。

 このクエストランクはCだったが、サラマンドラが相手だとすれば、クエストランクは、もっと上のランクになってもおかしくない。


「わかりました。引き続き消火活動の手伝いを」

「おう、わかった」


 三人が消火活動を手伝っている間、俺は付近を見て回った。


 地面に大きな足跡を見つける。


「……」


 指が四本。一本ずつは細長く、爪も長い。

 尻尾を引きずったあともあった。


 土に立てた爪痕がまさしくそうだ。


 間違いなくサラマンドラだろう。


 騒ぎが起きてからそれほど時間は経ってない。まだそれほど遠くへ行っていないはずだ。


 足あとを辿って、俺はサラマンドラを追いかける。


 すぐ先に、砂煙を上げながら移動する魔物を発見した。


「見つけた」


 わかりやすく殺気を放つと、びくん、とサラマンドラが足を止めて反応した。


「キェ……?」


 四足歩行だったサラマンドラが、後ろ足立ちになって、きょろきょろとあたりを見回した。

 後ろ足立ちは警戒している証だ。


 野生の雰囲気を感じない。


「飼い慣らされた魔物か……?」


 さらに俺が近寄っていくと、サラマンドラもこちらを視認した。


「キェェェェェ!」


 甲高い鳴き声を上げて威嚇する。

 正面切って俺を威嚇するとは、見上げた根性だ。


 相手の力量すらわからない馬鹿かもしれないが。


 すうう、とサラマンドラが息を吸い込む。


「ギュェェェェェ!」


 放射状に火炎を放つ。


 ゴウッ、と凄まじい速度で火炎が迫る。


 俺はそれを腕一本でかき消した。


「ギュエ……??」


 くり、と首をかしげるサラマンドラ。


「ギュェェェェェ!」


 また馬鹿のひとつ覚えのように、炎を吐き出す。


 今度は、右から左に、地面を焼き尽くすかのような火炎放射だった。


 それは……避けるのもバカバカしいので食らってやった。


「ギュエ?」


 やはりわかってなさそうなサラマンドラは、また首をかしげた。


「俺の体に火が燃え移るよりも早く動けば、火は燃え移らない」

「ギュェェェェェ!」


 サラマンドラは、四足歩行になり俺のほうへ突進してきた。


「村をめちゃくちゃにした報いは受けてもらうぞ」


「ギュェェェエエ!」


 長い長い爪の攻撃範囲に入ると、また後ろ足立ちになったサラマンドラ。

 前足を振りかざした。


 その瞬間。

 俺は前足の足首から先をもらった。


「……ギュエ―――ッ!?」


 俺はやつの足首を使い、その鋭い爪で喉を刺した。


「ギュェェェエエ!?」


 ドスン、ともがく敵の眉間を思いきり殴る。


 痙攣して苦しそうだったサラマンドラを楽にしてやった。


「すまんな。こちらも手ぶらだったので使わせてもらった。よく研いであるいい爪だ」


 事切れたサラマンドラが鳴くことはもうなかった。


 視線を感じて遠くの茂みに目をやる。


「……」


 まずは、村のみんなにサラマンドラのことを報告しよう。




◆???◆


 サ、サラマンドラを一瞬で倒した……!?

 しかも炎を腕一本で消しやがった……。


 遠くてよく見えなかったが、どうなったのかだけはわかった。


 うわぁ……!


 ――や、やべえやつだ!


 冒険者っぽくないけど、ランクでいえばオレと同等のAくらいだろう。

 いや、それ以上か……?


 まあいい。

 あんなどうかしてるやつ、オレははじめて見た。


「――ん? ……オレのほうを見てる?」


 そんなわけねえ。

 あそこからここまで一〇〇メートルは離れてるんだ。

 そんなわけ……。


「……」


 あんな意味わからねえほど強いやつを、オレははじめて見た。


 強いというか、桁が違う。いや、もう次元が違う。


 レッドウォルフと戦ったときは、あいつは何もしてなかったが……決めた。


 あいつにオレの仲間になってほしい……!

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