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外れスキル「影が薄い」を持つギルド職員が、実は伝説の暗殺者  作者: ケンノジ


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バーデンハーク公国へ3


 俺が昨夜設置した『ゲート』を使い、派遣メンバー全員でバーデンハーク公国にやってきた。


 バーデンハーク公国は、フェリンド王国の南にある海に面した小国だった。

 温暖な気候で、海産物と果物が有名だ。


 俺たちが飛んできた場所は、王都イザリアの郊外。


 城壁はまだ修復中で、陥落する際は燃えたんだろう。

 所々、黒く焦げている部分が多く残っている。


 ここからさらに南東へ行くと、旧ヨルヴェンセン王国……魔王軍が人間界侵攻の足掛かりにした国があった。魔王軍退却後の今は、もう国の体をなしていないと聞く。


「なるほど。この魔法でいつも王都と自宅を往復していたのね」

「そういうことです」


 ライラ、ロジェ、ディーの三人は、ロジェの『ゲート』で後からやってくる予定だ。

 ニール、ロジャーの両冒険者が声をかけた冒険者たちも、数日すると集まってくるだろう。


 メイリがバーデンハーク公国の姫だったということは、メンバーには伝えてあった。


「はぁぁぁ~。ここが、メイリちゃんがいる王都……」


 大きなリュックを背負ったミリアが、目を輝かせている。

 一緒にやってきた男性職員はあちこちを見回していた。


 一気に飛んできたせいで、実感がないんだろう。


「私がいない間、ラハティ支部は上手くやってくれるかしら」

「大丈夫ですよ、きっと」


 その『ロラン組』とやらがこちらへやってくるのであれば、ラハティ支部の来訪者は自然と減るはずだ。


「わ、私、違う国で生活するの、はじめてだけど……大丈夫かしら」

「わ、わたしもです……っ」

「僕も……」

「俺もだ……」


 みんな国外で生活するのははじめてらしい。


「バーデンは、風土も風習も変わりがありません。フェリンド王国の建築ギルドの多数がこちらで仕事をしているそうですし、通貨もリンが使えます。それほど困ることもないでしょう」


 違いがあるとすれば、少し暑いところと、海が多いところくらいだ。


 移動していくと、城門前で止められ、この件について衛兵に説明をする。


「……そんなこと、こっちゃあ聞いてねえんだ」

「ですが、レイテ女王やフェリンド王との間でそういった話がなされ、こうして今回参ったのです」


 衛兵二人は顔を見合わせて首を振った。


「女王の名を出すとは……余計に怪しいな、おまえら。冒険者ギルドってなんだ?」

「ですから、怪しいも何も……」


 どうして話が通ってないんだ。


「上司を呼んで下さい。話になりません」

「呼ぶわけねえだろ」

「お兄さん、これ以上しつこいと、こっちだって黙っちゃいられれなくなるんだ」


 険を滲ませる衛兵が、ジロリと全員を脅すように睨んだ。


 証文か何かあればいいのだが、タウロからそんなものがあるとは聞いていない。

 だから、現場に来ればすぐ通してもらえるものだと思ったが……。


 ああでもない、こうでもない、と衛兵と俺のやりとりが平行線を辿りはじめてしまった。


 そんなとき、ざわざわ、と城門の内側がにわかに騒がしくなった。


 城門脇にある衛兵用の通用口の扉が開いた。


「あ――来てる! ロラァァァァァァン!」


 姫様然としたドレスを着たメイリが、ちょこちょこと走ってこっちへやってくる。

 声に衛兵二人が振り返った。


「「ひ――姫様!?」」


 衛兵たちが慌てて膝をつく。


 ててててて、と全速力で走ってきたメイリは、突進するかのように俺に抱きついてきた。


「ロラン。いらっしゃい」

「ああ。ちょうどさっき来たところだ」


 腰にしがみつくメイリを抱っこする。


「何で入って来ないの?」

「少し手違いがあったみたいでな」


 きゅるん、とメイリが首をかしげた。


「ロランさん、遠路はるばる、よくお越し下さいました」


 メイリが出てきた通用口から、レイテがやってきた。


「「陛下もっ!?」」


 驚いた衛兵二人が、こそこそとしゃべっていた。


「こ、このお兄さん、何者……?」

「俺に訊くんじゃねえよ……」

「わ、わざわざ陛下がお出迎えって……」

「な、何が起きるんだ、これから……?」


 アイリス支部長やミリア、他の職員たちも膝をついて顔を伏せた。


「レイテ様、ご無沙汰しております。ちょうど先ほどこちらへ」

「そうでしたか」


 ぎゅっとメイリは俺の首に抱きついたまま離れない。


「わたしがお城、案内してあげる! そのあと、ご飯を食べて、お部屋で遊ぶのっ」

「いつの間にか立派な姫様になったな、メイリ」

「えへへ。ほら、これ」


 メイリが腰の後ろからナイフをケースごと取り出した。


「冒険者試験のとき、俺が買った……」

「そうっ。ずっと持ってるの」

「姫様がそんな物騒なものを持ち歩いては、周りもヒヤヒヤするだろう」

「いいのっ」


 その様子を見て、うふふ、とレイテが微笑む。


「エイリアス、ロランさんはお仕事で来ていただいたのですよ。お邪魔になってしまいます」


 うー、とメイリが不満そうな顔で唸った。


「ロランさん、何やらご無礼があったのでは……?」


 ビクン、と衛兵二人が身を縮こまらせた。


「無礼というほどではないのですが……情報の行き違いがあったようで」

「待っていても門が開かないと思ったら、道理で……。きちんと伝えたはずなのですが……」


 レイテが言うと、衛兵の一人が汗をダラダラ流しながらボソっと言った。


「も……もしかしてあれのことか……?」

「あれって……? ――あ、あれのことか……!?」

「きゃ、客人がフェリンドから来るという話……その……フェリンドの王族かと思って……」


 レイテが大きなため息をついた。


「こちらの方々は国賓です。わたくしがわざわざ招いたのです。追い返すおつもりでしたか?」


「「も、申し訳ございませんッッッ!」」


「謝る相手が違うでしょう」

「「申し訳ございませんでした」」


 立てていた片膝を地面につけて、二人に土下座をされた。


「わたくしからもお詫び申し上げます」


「いえ、レイテ様も衛兵の方も謝る必要はありません。ただ『雑談』が捗ってしまっただけですから。もう少し待てば、開けていただけたと思います」


 そうですか? とレイテが首をかしげると、俺はうなずいた。


 衛兵二人は、泣きそうな顔でこっちを見上げる。

 俺が無言で会釈をすると、お礼を言うようにまた頭を下げた。


「……ロランさん、カッコいいです」

「そうね」


 ミリアとアイリス支部長が後ろでぼそりと言った。


「王都イザリアは、フェリンド王国の王都フィンランと比べれば質素ですが、おかげさまでどうにか復興しつつあります。……冒険者ギルドの皆さまを歓迎いたします。どうぞ、中へ」


 レイテが合図をすると、大きな城門がゆっくりと開いていった。

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