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バツイチ高校生 高橋俊樹くん  作者: 竹天
【清崚高校 俊樹入学編】
26/68

高橋俊樹という男【3】

 残念ながら、準備が役立ってしまった。

 仕掛けたカメラには、放課後にダミーの机を校庭に放り出す日下部(くさかべ)たちが映っていた。


 正直、想像以上で引いている。やはり女子は恐い。

 精々ラクガキ程度だろうと思って居たが、高校生にもなるとイジメや嫌がらせも過激になるのだろうか。前世での高校生活ではそういう話は聞かなかったと思うが。


 他の生徒達の眼が校庭に向いている中、一人机の下でこっそりと映像を確認していると、教室の入り口からアラサー教師が駆け込んで来たのが見えた。

 私は内心感心する、行動が早いな。


 この教室は1-1組だ、騒ぎになっている机の件は未だどこのクラスのものか分からないから、1組からしらみつぶしに順番で回るつもりだったのだろう。


 仕事の速さに感心して頷くと、これ以上アラサー教師に無駄な体力を使わせるのも申し訳ないと思い、適当に考えていた理由を伝える。

 入学直後だし、席が一個余っていたといっても不自然ではないだろう



 さて、問題は日下部(くさかべ)達だ。

 しかし、いくら生理中とはいえ、会ったばかりの人間にここまで陰湿な嫌がらせをするものだろうか。


 そこでまた一つの考えにいたる、そうか【反抗期】か。

 生理中の女子というだけで厄介なのに、そこに【反抗期】が加わるとは。

 とにかくこの時期の女子は面倒だ。

 一度機嫌を損ねれば、卒業後まで引っ張るかもしれない。


 【生理】と【反抗期】、この2つの悪条件が重なった女子だったのだ。

 何という事、もっと慎重に行動すべきだった。

 自分の考えの甘さが露呈したか、やはり女子高生というのは難しい。


 思わずため息が漏れるが、とにかく対応を急がないといけない。

 既に大事になりかけているが、このままでは生活委員の彼女も、収まりがつかないだろう。

 一度機嫌を損ねた女子は執拗だ。


 事が露見する前に証拠が有る事を伝え、今後こういった馬鹿な真似はしない様、釘を刺しておくべきだろう。

 脅すような形になってしまうが、一時の感情で罪を犯し、若者の貴重な時間を無駄にさせるのは忍びない。

 それに、生理が終われば少しは冷静になるだろう。


 取り返しのつかない間違いも世の中には有るが、彼女ならまだ大丈夫な筈だ。



 ◇



 日下部(くさかべ)を呼び出し、説得を試みる。

 しかし、こちらが証拠を握っている事は理解した様子だが、あまり話が通じない。

 結構、丁寧に説明したつもりなのだが。


 自分が正しいと本気で思い込んでいるのか、頭に血が上っている為なのか。こちらの話を碌に聞いてくれないのは困ったものだ。

 誠意を見せる為に、動画も目の前で消したというのに。

 女子と言うのは感情が先に来て理論的な話が出来ない事があるが、それにしても酷い。


 その後、八つ当たりで振り回したスポーツバッグからバスの定期が落ちた事に気が付かず、走り去ってしまった。


 こういう時に思うのだが、女子がバッグを開きっぱなしにしたまま持ち歩くのは何故なのか。

 女性特有の意味も無く分厚いサイフなどが、上から丸見えになっているのだ、防犯上も宜しくない。

 閉めろと指摘しても『女の子は色々物がいる』『開いてないとすぐ取り出せないし』『だったらティッシュ持ってる? とか聞かないで』などと言い訳が始まる、面倒だ。


 ともあれ、なんとか彼女がこれ以上道を間違える前に説得したい。

 そう思いながら手元に有る、日下部(くさかべ)の定期を見ると、学生証も一緒に入っていた。

 主張の激しく眼に悪いキラキラした柄。いかにも女子高生が持ちそうな定期入れに入っている。


 内側には、可愛らしいキャラをあしらったファンシーなシールが貼られまくっていた。

 何故女子は、こう必要の無いカスタマイズにこだわるのか。


 他にも、彼氏らしき男子生徒と撮影したであろうプリントシールが貼られている。

 この学校は校則で男女交際は禁止だった筈だが、まあ影でいくらでもやりようは有ると言う事だろう。

 見なかったことにするのが、優しさと言う物だ。

 

 ともかく、定期が無いと明日登校する時困るだろう。

 幸い、一緒に入っていた学生証には住所も書かれている、これから直接届けるにも問題ない距離だ。

 個人情報の取り扱いが気になるが、落とし物を届けるのだから、その位は大目に見て貰おう。


 それに気になる事もある。ここまで日下部(くさかべ)が意固地な性格なのは、もしや生理だけでなく家庭に問題を抱えている等の悩みが有るのでは、と思ったのだ。


 つまり、この定期を届ける名目で、少しご家庭の様子を窺おうかと思った訳だ。

 そうと決まれば善は急げだ、私は慣れないバスに乗り日下部の自宅に向かった。

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