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その3

 それから4日ほど経ったが進展はなく、相変わらずエヌ氏は通勤中のTwitterを楽しんでいた。DMを送ってきた女性は不思議なことにピタリとDMをよこさなくなり、はて、とアカウントを見に行くと削除されていた。


 エヌ氏は安心と残念の入り混じった甘酸っぱい心境でTwitterを閉じ、電車を降りた。


 駅から役所までは歩いて5~6分である。


 エヌ氏はこの間に1日の仕事の大まかな段取りを整える。

 最近は比較的閑散期であり、あまり頭を悩ませる仕事はない。


 ふとエヌ氏は鏡台から出てきた「S田」という少々変わった姓について考えを巡らせた。


 エヌ氏は16年間の勤務で市の情報に明るい。

「S田」という姓は県南の地名に由来し、戦後多数のS田姓の家族が県央に移り住んだ。市内であれば特に三地区に固まっている。


 エヌ氏のアパートからはN沼町が一番近い。

 他の二地区は市のはじっこで、どちらも10kmほど離れている。

 そういえばS田姓ではないが、N沼町には同僚も何人か住んでいる。


 調べようと思えば「S田K子」(おそらく年配の婦人だろう)を手持ち資料から調べることも出きるな…とは思ったが、職権の乱用であろうからそれはできない。


 その辺は警察が適法に調べるだろう。

 DMを送ってきたのは果たして誰だったのか。


 あんな古めかしい鏡台を使っている年配の婦人がTwitterを使っているというのは少々考えにくい。むろん今時の老人ならば使いこなしている人もいるだろうが、DMの内容はエヌ氏が感ずるに老人のものではなかった。

 おもちゃはいったいなんだったのか。鏡台は誰かがS田K子氏から盗んだものか。


 などと考えを巡らせているうちに職場についたエヌ氏は手際よく仕事の準備に取りかかった。


 その日、エヌ氏が昼食をとっていると外線から電話がかかってきた。

 出てみると、この間の刑事であった。

 なんと犯人が見つかったらしい。


 事情の説明をしたいため、今晩警察署に来てくれないかというので、なんなら休みをとってすぐにでもと伝えたが、いや、6時以降で、というのでエヌ氏は6時半に約束をした。


 犯人はDMを送ってきた女性だろうか。はたまた全く知らない赤の他人であろうか。S田K子さんはいったい誰なのだろうか。


 あのヤクザ刑事は事情の説明があると言っていたが、私の好奇心を満たしてくれる説明は果たしてあるのだろうか。


 未成年、または狂人の犯行であるため申し訳ないがいろいろ聞かないで幕引きにしてくれ、などと言われたらどれだけもやもやすることだろう。


 あれこれ考えるとどうにも仕事に手がつかない。結局エヌ氏は午後は早退して帰宅した。


 エヌ氏の設定はエヌ氏を翻弄し、手の届かない進展を見せていた。

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