表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナツメナツミ  作者: かに
5/25

仁義なき写メ

イケメンで足フェチの夏目と美脚(夏目基準)の菜摘の恋物語。

今回は菜摘の友達が登場します。

 私には、クリスマスには一緒に遊ばないくせに後日クリスマスの報告会をする薄情な友達が3人いる。

 花ちゃんと、みっちゃんと、ともちゃん。僻みでも何でもなく、みんな私よりも可愛い。

 花ちゃんは名前の通り花があるし、みっちゃんはしっかり者なんだけど、男の子からは放っておけないと思わせる雰囲気があって、ともちゃんはクールな美人。

 だから、年齢=彼氏いない歴なのは私だけだった。もう過去形なんだけどね。

 私、川島菜摘かわしまなつみの彼氏いない歴はクリスマスでストップしたのでした。

 でも、私はまだそのことを報告できずにいた。


 クリスマス報告会は高校の近所のマック。みんな住んでいる場所がバラバラなので高校の近所が何かと都合が良い。

「なっちゃんはケーキ屋さんでバイトだったよね」

「そうだよ。みんな遊んでくれないんだもん。寂しい時間をお金に換えたんだから」

「外でケーキ売りだっけ」

「予約ケーキの受け渡し。メッチャ寒かったよー。あんまり寒いからピザ屋のサンタ見て自分を慰めてたよ」

「サンタクロースの服着て走り回ってるもんね」

「うち、ピザ注文したよ。すっごい忙しそうだった」

「そうだったんだ?じゃあ夏目君も……」

 しまった!つい口が滑った!

 焦ったけど、それ以上喋らなかったら話題も変わってホッと一安心。

「トイレ行ってくるね」気持ちを立て直すために、一旦席を離れた。

 私の彼氏はイケメンで足フェチです。こんなこと報告したくないなー。


 トイレから戻った私を花ちゃんがしげしげと眺めた。

「なっちゃん、その服、自分で選んだの?」

「え!? 何か変かな!?」

 私は昨日の初デートで夏目君に買って貰ったショートパンツを穿いていた。

 今、私の手持ちの服で一番好きな服だから。

「ううん。すっごく似合ってる。でも、なっちゃんが選びそうな服じゃない」

 するどい!するどいよ!!花ちゃん!!!

 みっちゃんも、ともちゃんも「そうだ、そうだ」と口を揃えた。


「今日の約束も昨日にするつもりだったけど、なっちゃんが都合悪かったんだよね」

 そう、報告会の日時はクリスマスの翌日に決めた。そのときにはもう夏目君とデートする約束をしていたので、今日にしてもらったのだ。

「昨日なにしていたの?」

 女子高生の追及は厳しすぎる。私も女子高生だけど。

「昨日は、ちょっと出かけてて……この服もそのときに買って……」

 なんとかごまかせないかなあ。

「誰と!?」

 ダメだ、もう降参だ。

「彼氏です!彼氏できました!!」

 3人は顔を見合わせた。それからは


「写ーメ! 写ーメ!!」の大合唱。

 そりゃそうだ。私だって、3人の側だったら絶対合唱に参加している。

 撮ってますとも!昨日はデートでしたから!

「写ーメ! 写ーメ!!」「写ーメ! 写ーメ!!」

 大合唱に囲まれ私は涙目でデータフォルダをあさる。

 あれもダメ、これもダメ。

 ピンぼけしてるのはないか、変な顔で写っているのはないか、必死で探すが見つからない。


 クリスマスの夜、夏目君は言っていた。

『彼氏がイケメンだと鼻高々だよ。友達にも自慢できちゃうよ』

 何が自慢できるだバカ!自慢して取られたらどーすんだ!?


 私がなかなか写メを見せないものだから、痺れを切らしたみっちゃんが私から携帯を取り上げた。

「わざわざイイ写真探して見栄を張るなんて、なっちゃんらしくないなあ」

 逆です逆です逆だから!

 写メを見たみっちゃんが固まった。脇からのぞき込んだ花ちゃんと、ともちゃんも。

 携帯電話の画面には、日差しを浴びてキラキラ素敵な笑顔の夏目君が映っていた。


「あ、あのね、写真うつりがいいの! ね、笑っちゃうでしょ。

 実物見たらガッカリするから、全然違うから、全然ダメダメだから」

「そ、そうだよね」「うん、そうだよね」

 よく考えると失礼な相づちなんだけど、私に否定する気はこれっぽっちもない。

 いいの、私の彼氏は全然イケてないの。

「ははは」「ははは」マックに響く乾いた笑い声。

 私の隣には、さっき携帯を取り上げたみっちゃん、向かいに花ちゃんとともちゃんが座っている。

 ともちゃんが私の背後を見て表情が凍った。

「どうしたの?」

「なっちゃん、後ろ……」

「え?」振り返った私の目に


「こんにちはー。ナツミちゃんの彼氏でーす」


 夏目君が写った。


「写真のまんまじゃん!」花ちゃんが立ち上がる。

「ていうか、写真写り悪いくらいじゃ……」斜め後ろを見上げたみっちゃん。目線は夏目君に釘付けのまま、私に携帯を返してくれた。


「どうしてこんなところに!?」

「ここ俺の地元よ?知ってるでしょ」

 そうだった。私はこの町の洋菓子店でバイトして、夏目君はその近所のピザ屋さんでバイトして、ピザ屋さんの店長とご近所さんで、つまり私の高校がある町に住んでいるんだ!めっちゃテリトリーなんだ。

「その窓にナツミちゃんが映っていたから」

 私がトイレから帰ってきたときだ。窓際に座るんじゃなかった。

 夏目君は、やっぱり私の足を見て口元に笑みを浮かべた。

 足フェチ欲求を満たせたからか、昨日と同じ服を着ている私を面白がったのか。

 とにかく、その笑顔は禁止だ。ほらみろ、花ちゃんもみっちゃんも、ともちゃんもポーッとしてるじゃないか。

 どうしよう、どうしよう、私はパニクった。パニクって

「いとこなの!」

 ビックリした顔の夏目君。私は手を引っ張られ店の外へ。そうだね、いい加減うるさいよね。


 店を出た私たち、夏目君が「どういうつもり?」こんなに不機嫌そうな顔、初めて見た。

 クリスマスにサンタガールの衣装の上からベンチコートを羽織ったときよりも怒ってる。

「だって……取られたくないんだもん」

 何でこんなに格好いい顔してんのよ。怒った顔すら絵になるなんて。

 夏目君は自分の容姿が素晴らしいことを自覚している。私が夏目君を紹介するのを嫌がった理由もすぐに察してくれた。察した上で

「女の子を口汚く罵るのはポリシーに反するんだけど」前置きして


「アホか!?」

 うう。怒られた。

「いとこなんて言ったら、それこそ橋渡しだ何だと頼まれるに決まってるだろ!!」

 そうでしたー!私はなんてバカでアホでマヌケなんだろう。


 夏目君は自分がいると混乱状態になるから、と言ってバイバイと手を振った。

 私は涙目で「浮気しないでね」と言った。

 夏目君は「足フェチなめんな」と笑ってくれた。


 みんな信じてくれるかなあ。こんなに格好いいけど私の彼氏なんですよー。

「違うのー! いとこじゃないのー」

 弁解しながら店に入った。




ひとまず<おわり>

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ