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28―避難の先

もう一人のヒロイン…かな

「………」

「……(やっぱ見つかってたか?……仕方ねえ。腹に一発入れて逃げるしか)」

 拳を握りしめ、立ち上がろとした矢先、靴音は一度止まってから再び廊下へと出て行く。

 秀久は身を潜めたまま耳を済まし、コツコツと響かせる靴音が完全に遠のいていったのを確認すると安堵の息が漏れた。


「今のは…何だったんだ?」

 思わずひょいと身を乗り出してみるがやはり誰も居ない。

 気づかれてなかったのだろうかと思いながら教卓から抜け出し、つぐみも後に続く。

「見つからなくて良かったねヒデくん」

「あ、ああ…」

 秀久は頷きながらも納得はいかないが寿命が伸びたことに安心し、つぐみの頭をガシガシと撫でる。

「みゅぅっ…ヒデくん……痛い」

「…!ご、ごめんっ」

 慌てて手を離すとつぐみは少し不機嫌な表情をしながら乱れた髪を器用に整える。ぐしゃぐしゃにされたためかあちこちが跳ねており、四苦八苦しているが。

 多少の罪悪感を感じながらも秀久はぼけっとしていた自分の顔に平手で叩き表情を引き締めた。

「んじゃ……まあ、行k……ごふっ!」

「ヒデくんんん!?」

「ん?あれ?………秀久居たのか」

 居たのかじゃねえと言いたげな瞳でドアをぶつけた綾人を睨むが挟まれているため到底真面目に見えない。

 綾人は秀久のアホヅラに呆れてため息を吐いた。

「………何やってんだ?」

「お前のせいだろ!?いきなり扉開くってふざけんな!」

「すまん。まずお前自体見えなかった…というかお前がわざと遊んでいたのかと」

「空気扱いすんな!?わざとじゃねえしそんなことはしないわああ!」

「おいおい。あんまり行き過ぎるとつぐみが置いてけぼりになるぞ」

「誰のせいだ!誰のせいだぁあ!!!」


『『居たぞ!!神薙も一緒だ!』』

「げっ!」

「「馬鹿秀久!(ヒデくん!)」」

「…俺か!?俺が悪いのか!?」



  NOW lording






 秀久が大声を上げたせいか鬼に見つかった三人は慌てて逃げ出し、綾人情報により鬼の居ない噴水広場へと避難を急いだ。

 途中、秀久と綾人の口論が勃発したがつぐみの『ブリザードモード☆』によって鎮圧されるというカオスまで巻き起こり場はかなり乱れてしまった。


「……で、龍星さんも此処に来てたんですね」

「ああ。鎮圧してもゾンビのように立ち上がってきてな、気味が悪いから避難したんだよ」

「………(ゴロゴロ♪)」

「みゅふぅ♪」


 後ろで結った黒い髪に普通よりも高い身長を誇る我らが兄貴である龍星は大きな体に芹香とつぐみを抱きかかえながら愚痴を零す。

 芹香はポニーテールを腕に垂らしつつ猫のように静かに喉を鳴らし、つぐみは満足げに思わず鼻息を漏らす。

 秀久は彼の愚痴話に顔を引きつらせつつ校舎へ視線を移した。


「ゾンビって……龍星さんの拳で沈められないなんて」

「今回のイベントは男の復讐みたいなもんだからな。…龍星のマシンガンパンチやグレードキックでも不可能だろうな」

「待て綾人、俺はいつの間にか必殺技を会得してたのか?」

「……いや、龍星さんの場合…あれは必殺技ですよ」

「お前もか!?………俺は普通に拳を回転させながら…」

「それ自体普通じゃ無理ですから!?」


 首を傾げる龍星に秀久は思わずツッコミを入れてしまう。

 綾人と龍星が絡むと更に“混沌”なることは秀久がよくわかっている。


「そ、そういや綾人は何であの場所に?」

「ペアとはぐれたからだ」

「は…?」


 秀久はしばらく黙りこみ沈黙が覆う。龍星はその間に二人を撫でながらこの後に起こるであろう結末に苦笑した。


「ペアとはぐれたぁああ!?綾人、お前何さも平然とした顔で何気にとんでもないこと言ってないか!?」

「秀久。お前がまずつぐみを誘えるようになったこと自体俺にとってはとんでもないが」

「……う、うるせえ!」

「まあ、毎日いちゃいちゃしていているくせに誘えないこと自体おかしいだろ」

「……いちゃいちゃ?お前何言ってんだ」

「はぁ!?自覚ないのかよ!?」


 あまりの鈍感さに綾人はずっこけた。

 第三者から見ればいちゃいちゃしているカップルにしか見えないのに自覚すら無い秀久はどれくらい妬まれているのだろう。


「そんなことよりペアは見つけなくていいのか?」

「ああ……まずあいつなら問題ないだろうな。恐らく……「見つけましたー!」ほらな」


 透き通った雪のような白さの肌。

 黒い髪を赤いリボンでまとめたポニーテール。

 顔は着飾っておらず、サファイアのような輝きを見せる蒼い瞳と桜色の唇は異性の心をくすぐる。

 ふわりとした表情はとても可愛く西洋の人形のようであり、スカートの丈が他の女子よりも短い。

 つぐみや芹香と同等の可愛さを誇る彼女は息を切らせながら一気に綾人へと詰め寄った。


「神薙さん!今まで何処で何をしてたんですか!?…さっきまでずっと鬼から逃げていたんですからね!」

「悪い。小さいから気づかなかったかも」

「かもじゃないですよね!?私小さくありません!!神薙さんはいつもいつもそうやって…」

「わかったわかった飴やるから」

「本当ですか!?ありがとうございます!………って違います!!飴が欲しくて怒ってるんじゃありません!もー…一人で行動しないでください!」

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