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番外編的な奴

 ハロウィンの日、子供たちが仮装をして近所の家をまわり、「トリック・オア・トリート!」(お菓子をくれなきゃいたずらするぞ!)と言うと、お菓子がもらえるというハロウィーンの伝統的な行事が毎年、東京でも行われている。

 「トリック・オア・トリート」

 今日も元気に子供達が家を回っている姿が目に浮かぶだろう……。


 そう、『子供達』が…。




「…………はぁ…」


 ため息を吐いている少年。狼耳に尻尾、しかし姿はドラキュラのようなローブを纏っている。

 身長は高く高校生くらい…というか高校生の吉沢秀久は一枚の薄い紙を持ったまま突っ立っている。


 ――お菓子よろしく  by一麻


 紙に書かれている内容を見るたび再びため息が漏れた。

 今日は支援部のみんなでハロウィンパーティーをする予定なのだが、集合場所に来た秀久はまんまとパシリに任命されてしまったのだ。

 お菓子を入手してこい。

 大方みんなは先に本当の集合場所に集まって準備をしているだろう…。


「…なんで俺ってこんな体質なんだよ」


 嘆いていても仕方ない。秀久は性格が落ち着いているせいかあまりイベントなどに興味を示さない。

 曰わく、大人らしくないこと。いや、彼は子供なのだが性格が故に嫌なのだろう…だからこそ狙われたのだが。


「なんだ?…ルートの図が描いてあるな」


 薄い紙の裏には回る家のルートが描かれている。

 大ざっぱではあるが分かりやすいのが腹たつなと秀久は軽く愚痴った。






 気を取り直しまず一部屋目。家といっても学園内からがスタートなので教室を回れという命令が下されており、既に何か仕組まれていそうだ。


「……失恋しまーすーーーぶるふぁ!?」


 扉を開き教室に入る秀久。

 が、何を見たのか。秀久は赤い鼻血をアーチのように噴出した。

 それを見ていた原因である幼……少女雨宮つぐみは慌てて彼に駆け寄る。


「ヒデくん!?…だ、大丈夫?」

「……ぅう……」

 頭を押さえつつ、秀久はゆっくり体を起こした。

 つぐみはホッと詰めていた息を吐くが彼女を見た途端秀久は慌てて鼻を押さえる。


「何だよその格好」

「え?……に、似合うかな?」

「………っ」

 黒魔女のような格好をしているつぐみ。それはいいのだがスカートの丈は短くニーハイにブーツ、袖無しの黒と黄色といった露出が目立つような姿だ。

 恥ずかしそうに尋ねてきたつぐみのソプラノの声はむちゃくちゃ可愛い。

 秀久はしばらくぼーとしていたがすぐさま顔を縦に振った。


「良かった……勇気を振り絞った甲斐があったかな」

「え…?それって」

「あ…」


 自分が何を言ったのかを思い出しつぐみの顔がカアーと真っ赤に染まっていく。

 秀久も下を向き朱に染まる。




  ……………。




「………えと、どうしたんだこんな場所で?」

「……ふえ!?あ、うん。えと、あたしが最初だよ」

「最初?……あ」


 最初…。そう最初だ。つぐみは分かりやすいようにかぼちゃの形をしたバスケットを少しだけちらつかせる。

 完全に仕組まれている。

 しかし、やめることは出来ないのだ。

 もし、全てのお菓子を持ってこれないなら……。


「…(もし、やらなかったら俺の人生は…)」


 やりたくはない。

 だがやらなければならないのだ。

 


 (やるしかねえ!)


 秀久は頬を朱に染めながら、つぐみを真っ直ぐに見つめる。

 拳をぐっと握り口をゆっくりと開いた。


「と、トリック・オア・トリート…」

「…(か、可愛い…)………は、はい」

「ありがとう…」


 秀久の地獄は始まったばかりだ。


「つづくの!?」

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