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26―カオスとカオス

――学園祭

 簡単に言えばWelcomeようこそ新入生を祝う会のような行事であるが、何に力を加えているのか毎年NOT Welcomeになっている。

 生徒会は何をやっているんだと疑問を持ちたいところだが、まあ今年も勿論あるわけで…………。


「………」

「ひ、ヒデくん?」


 ツンデレ不幸体質の吉沢秀久はナース帽だけをかぶっているつぐみに首を傾げられていた。

 彼らがいる場所は屋上。

 場所からして嫌なフラグがするのは必然的だ。

「…な、ななな何するんだろうな?」

「落ち着いて!とにかく落ち着いてヒデくん!」

「…ばばばば馬鹿やろう…落ち着いてるだろうがが」

「その割には震えているんだけど…」

 去年のトラウマが蘇り秀久の顔は真っ青に染まっていく。つぐみは見ているのが辛くなり、渋い顔を崩し空を仰いだ。



 秀久からパートナーに誘われた時、つぐみは最初は戸惑っていたがすぐに承諾をした。

 断られないというルールもあるが、つぐみにとっては喜ばしいことでもある。

 他の男子とペアになったらどうしよう…。そんな不安がイベント開始前に積もっていたが、秀久が一番に来た時、つぐみのホコリのような不安は一気に掃き消された。

「ヒデくんには悪いけど…二人で何かやるって久しぶりだから…ちょっと緊張しちゃうなあ」

 櫛で一本一本丁寧にとかれているさらさらな髪を触れながら悶えている秀久に微笑む。

 ちりんと鈴の音が静寂な屋上に響き涼しい風が吹き渡った。


『――あーあ…マイクテスマイクテス』

「アナウンスがかかったみたいだね」

「……始まるのか…」

 アナウンス=開会式のようなものであり、全校生徒はあるゆる場所で立ち止まりアナウンスへと耳を傾ける。

『よーし大丈夫だな』

「この声……綾人か?そういや学園祭準備で殆ど顔出してなかったなー。」

『…えー…まず…つぐみと痴話喧嘩しラブコメのような展開を繰り広げ、体をベキベキにされた挙げ句フラグを立て学園閉鎖時間まで突っ立っていて尚かつ今朝再び痴話喧嘩をした吉沢秀久。色々お疲れ様☆』

「ちょっ…はっ!?まてコラァアア!何でそんなこと知ってんだ!?」

『俺の裏情報網をナメんなよ?スパイ○ーマンのように無数の糸が広がってるんだよ』

「無数の糸って…てか何処にいるんだよ!?なんで返してこれるのさ!?」

 アナウンスをしている彼は秀久達の親友『神薙綾人』である。

 そう…『神薙綾人』である。

 S気質にして別名『カオスナイト神』である。

 ブラックリストに載っている一人であり第二号。

『さて、新入生を祝うこのカオスな企画なんですが…』

「無視するな!?あとカオスっていうな!一年生が頭抱えるだろうが!」

『はいはい。後で相手してやるから』

「綾人ぉおおお!」

 繰り広げられるボケとツッコミ。つぐみはその状況につい笑ってしまう。

 だが嬉しくもある……普段表情を見せない秀久だが綾人と会話している時は生き生きしているようにも見える。

『今年のカオスなイベント…はい、毎年のようにやはりカオスになっていましたね。…これを聞いただけで何人か戦意喪失したのではないでしょうか?』

「……やっぱ生徒会は意味わかんねえ」

「あはは……」

『秀久。それは俺も同感だ…基本生徒会は変人ばかりだからな』

「お前…生徒会に呼び出しくらうぞ…」

『問題ない。俺はそれを無視する』

「…凄い自信だな」

『変人の集まりだからな』

 進んでいないのではないか?

 つぐみは首を傾げながら何故だか生徒会を罵倒し始める二人に目を丸くする。


 アナウンスから五分が経過し……


「――だからさ……ようはあれだろ?生徒会の連中は特撮の良さを理解していないというか」

『ああ確かにな。変人だからわからないんだろうな。そういう奴こそ悪役の雑魚キャラになるんだよ』

「くく…言えてる…もう出て来て一分も経たないうちに退場とか…な」

「『可哀相な変人組合だよな』」

「もはや生徒会でもないよ!?」

 つぐみは耐えきれずにツッコミを入れ、秀久はピコハンで叩かれることで生徒会=変人についての会話は終了した。当然つぐみの全力ピコハンを受けた秀久は地に沈むが何時ものように誰も気にすることはなく、つぐみは沈んでいる彼の前に座ると頭をそっと膝の上に置いた。

『では…簡単に説明しますと今年のゲームは『第一回女子争奪?ドキドキ☆鬼ごっこ!』です』

「ええ!?」

『ルールは簡単。男子ペアを組んだ可哀相な奴らを集め、そいつらは鬼になります。女子ペア、男女ペアの皆さんはこの可哀相な鬼達からひたすら逃げ回ってください。女子が捕まった場合は即失格、退場ばいばいとします。

 なお、女子ペアの場合は一人が捕まってもセーフとしますが、男女ペアの場合は男子だけ鬼は攻撃が可能です。男女ペア同士連合を組み可哀相な鬼を返り討ちにしても、女子ペアを生け贄にしても問題ありませんので』

『『問題ありありじゃあああああ!』』 ルール説明を聞き終えた全校生徒の返事は三者三様だ。

 普通に驚く者、何故かニヤニヤする者、恥ずかしさから真っ赤になる者と…選り取りみどりである。

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