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25―ダブルブリザード

「しゅーくんしっかりしてー!」

「……………」

「駄目だ。死んで「生きてるからな!」」

 先ほどまで揺さぶられていた秀久は一麻の言葉を邪魔するように叫びながら起き上がった。

 綾菜は安心したのか再び抱きつこうとするが流石に避ける。

「あれ?」

「ほら起きねえといろいろ見えるぞ」

「?」

「って…言ってもわからないよな」

 男子達の視線に気がついたのか秀久は手早く綾菜を起こすと、龍星によって抱き上げられているつぐみの下へ足を運ぶ。

「龍星さん。つぐみは」

「ああ大丈夫だ。少し気絶してるだけだからすぐに目を覚ます」

「…そうですか」

「どうかしたか?」

「いえ」

 踵を返し秀久はさっさと自分の席へ戻ると、『サイバーネット』開く。

 それを見てか龍星達も時間を確認すると席へと戻って行くが、ただ深紅だけは秀久を再度眺めた後椅子へと座った。

 そんなことを知らず秀久はサイバーネットを指で操作しながら眠たげな瞳で映像に目を通す。

(…………)

 オンラインを開いていても先ほどの夢が気になり、ピタリと指を止めてしまう。

 何故こんなにも気になってしまうのだろう?


『はーい!みんな席に着いて。朝礼よー』

「…………っ」

 秀久達の担任である安藤真夏あんどう まなつが未だに散らばっている生徒達に声をかけながら教卓へと向かう。 軽く舌打ちをしてから秀久はサイバーネットを閉じ、窓を眺める。

「………ヒデくん?」

 気絶から復活したつぐみは隣席に座るそんな彼の様子を不安げに見つめた。


「えっと…今日は昨日中断されていた学園祭があります。去年と同じく始まりはアナウンスが告げると思いますが、図書、生徒選挙委員会の方以外の委員に所属するみんなは指定された場所に集まってね」

『今年もやるんだな…』

『正直不安よね』

『今年こそは怪我はしたくないよなあ』

『そうそう。去年は酷かったしな』

 真夏は穏やかな表情を変えず淡々と説明すると、周りはざわつき始め、中には文句を垂れる生徒も居た。

 秀久はざわめく雰囲気の中ぼーと窓を眺めるだけだ。

「……こほん。吉沢君。吉沢君」

「……あ?はい」

「あなたには後でお話があります」

「は?」

「後で職員室に来てね☆」

「…ちょっ…なんで俺「来て…ね?」…はい」

 脅された…というか脅迫気味な態度でにっこりと笑う担任の怖さを彼は知っている。いつもは明るくにこにこしているのだが、その裏では氷のような笑みを持っている。その表情で見られるとかなりのプレッシャーが体に襲い、平然と出来る人間は誰も居ない。

 秀久の抵抗は虚しく仕方なく返事を返すと真夏は笑顔で「すぐに来てね☆」と一言。

「……くそ…なんで俺が」

「ヒデくん。あまりマイナスに考えてちゃ駄目だよ?」

「……わかってるよ」

「シュウくんって確か真夏先生のブラックリスト第一号だよね」

「…う…ゆいちゃん。それは言わない約束…」

 慰めるつぐみに渋々と頷く秀久へ前の席に座っている優一が呆れるように黒歴史を告げ、秀久撃沈。

「まあオンライン支援部メンバーの大半がブラックリストなんだけどね」

「そうなの!?」

 つぐみは目を見開きながら意外そうな表情を見せる。

 真夏によりブラックリストに載っているメンバーは個性的な渾名が付けられている。


 ギークandトラッシュ神こと秀久


 黒板のアクマイザー神こと一麻


 遅刻大魔神こと龍星


「…みんな神ついてるね」

 つぐみは苦笑いをしつつ、居眠りを始めた秀久の肩をゆする。

 女装をする優一が入っていない理由は去年を通し教師から認められているからだ。というより違和感ないので問題ないとか。

「このクラス…ほんとキャラ濃いからなあ…。ん?シュウ寝てるの?」

「うん。起きてヒデくん」

「…んにゃ…流石に…眠…い」

「…はあ……。仕方ないなあ…」

 つぐみはため息を漏らすと軽くぼやく。まるで何かを決めたように…いや既にスタンバイモードへと入っている。 これから彼と接するためには甘いだけではないことを理解し、“冷たさ”をつぐみは鍛えた。


「………………起きようねヒデくん☆」

「っ!?」


 背筋に冷たい悪寒が走り、一気に覚醒してしまう。

 まるで担任の真夏と似ている。…つぐみは声帯模写が得意だったはず…だが、これは真夏ではなくつぐみの『オリジナル』だ。

「疲れてるの☆?」

「あ…!違っ…」

「違う?…ふうん☆」

「……つ、つぐみ?」

「嘘…ついてるよね☆」

「…嘘なんて……ついてました」

 誤魔化せない…。何故かそんな気がした秀久は床へと頭を打ちつけるように土下座を繰り出した。

 そんな秀久をつぐみは光の無い瞳で見下ろした後、「ふう」と吐息を出す。

「…全くもう…」

 瞳に光が戻りつぐみから出ていた冷たいオーラというか視線というか…とにかく無くなっていた。

 が、流石にクラス全員唖然となり秀久は固まっていた。

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