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24―幻想と地獄?

『俺は俺なんだ…だから…今を生きろ!』

『何を言っても無駄だ。…そろそろ消える時間だな』

『いや…魂は消えたとしても…こいつが新たな魂を作る!』

『馬鹿なことを。所詮は体だけの器。魂など有り得ん』

『…俺は信じてる。いつかこいつが全てを受け継ぎ、俺であると証明すると!その時がお前の最後だ!』

『戯言を。…さあ無に帰すが良い』

『忘れるな…お前は……。お前はもう一人の俺なんかじゃない。俺自身なんだ――』




  ――全てを…繋いでくれ…




「っ!!」

 思わず飛び上がるような形で起き上がり、全身からは汗が吹き出していた。

 まるで悪夢を見ていたかのように、秀久は額を拭い静かに息を漏らした。「!。みんな!ダーリンが起きたよん!」

「…?響」

 最初に視界に映ったのはローズピンクの髪を結い、ポニーテールにしている生徒だった。

 響はポニーテールを揺らし、他に居るであろうみんなへと声をかけた。

「…此処…教室か…?確か俺…「ヒデくん!」…ふぐっ!?」

首を傾げつつ教室を見渡す秀久の胸板を二つの圧力が押し付ける。

 目を白黒させていると鼻が刺激され、いつもと同じ甘く優しい匂いが伝わってくる。

「ー!つ、つぐ…みぃ?」

「ヒデくんのばかあ!いつもいつも!」

「…な、なんのことだよ!」

 ぎゅーぎゅーと抱きつかれ、秀久の頭が混乱を始める。

 と、つぐみが罵倒し秀久は羞恥心を保ちながら声を荒げて聞き返す。

「……戻って来るのが遅いからみんな心配して、探しに行ったらソファーで倒れてたんだよ?」

「……まじ?」

「ー!」


 ピコン!!


 その音が静寂な教室に響き渡り、秀久は思わず呻いた。


「いってえ!?」

「ふざけないでよヒデくん!自分でもわからなくなるほど何をしてたの!」

「いた!?ピコハンやめて!ちょっ…つぐ…だっ!…俺が悪かったからあ!」

「ばかあ!ばかあ!」

 ピコピコハンマーを片手に追いかけ回すつぐみと謝りながらも逃げ回る秀久。特につぐみは体力が無いはずなのに、かなりのスピードで教室を駆け回り秀久を追いかける。


「夫婦喧嘩も大概にしろよ?」

「「夫婦じゃねえ(ないよ)!!」」

「頑張っダーリン♪」

「つぐちゃんファイトー!」


 綾菜、響は楽しそうに二人にエールを送り、支援部メンバーは「相変わらずだな」と笑いながら秀久に手を振る。

「見てないで助けてくれー!」

 秀久マジドンマイ☆

 つぐみから逃げ回る一方、秀久の表情は微かに曇った。

 暗闇から聞こえた声、それは秀久の頭に強く残っていた。


(あの夢は……あれは…あの会話はなんなんだ?)

 確かにそう聞こえたのだ。

 何故あんな夢を見たのか…いや幻想だったのだろうか?

 あれは……ただの夢なのだろうか?

「……だとすればいいんだけど」

「え!?ひ、ヒデくん!?」

「ん?うわっ!」

 その場で止まり、軽くぼやく。

 しかし、止まれば必然的に、走って追い掛けて来たつぐみと衝突することは免れない。つぐみの勢い良いが強かったのか秀久を巻き込み、床へ彼を叩きつける形で倒れる。

「……」

「あう~」

「気絶してるな。駄目だこりゃ」

 一麻はお手上げなのか苦笑しつつ、気絶している二人を見やる。

(深紅も…つぐみのようにもっとわたわたすればいいんだけどな……。難しいか…。)

 心の中で呟いていると優一と龍星が二人を介抱し始めるのを見、一度初音と話している深紅に視線を流した後、二人の手助けに向かう。


「シュウ君。死ぬにはまだ早いよ?」

「ゆい…ちゃん…?此処…天国?」

「死をすっ飛ばして天国に行かないでね!?」

 優一は思わず叫びながら秀久を起こそうとしたがビュンッ!と風のごとく何かが秀久に抱きついた。

「しゅーくんおはよー♪」

「んぷ!?」

「ちょっ…シュウ君ー!?」

 犯人の綾菜はいつものように秀久に抱きついた。まあ身長に差があるため当然秀久の顔面は綾菜のたわわへと挟まった。

「…ん!(馬鹿っ!苦し…)」

「私もぎゅー!」

「ーー!…!…………」

「シュウ君?シュウ君ー!?」

 綾菜が抱きしめていた力に圧力を加えたことにより秀久の真っ赤な顔は真っ青に染まっていき、やがて腕がパタリと地面に伏した。

 龍星はつぐみを抱えながらその光景に苦笑するしなかったとか。

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