8
「助かった。礼を言う。」
黒い太陽のリーダー、ルーレンは二郎に頭を下げた。
「いえ、もう少し早く到着していればアランも怪我をせずに済んだと思います…」
「まぁ、あいつは大丈夫だ。俺らにはアメン教の元司祭のクリムトがいるからな。生きている限り復活するさ。」
ルーレンはアランが運ばれた馬車を見るとアランが青い顔をして下りてきた。しばらく歩くと地面にしゃがみ嘔吐した。
「…彼、大丈夫なんですか?」
「原因はクリムトの野郎だ。あいつは傷ついた男を見ると興奮するんだ。…アラン、しゃぶられたか、しゃぶったか…強く生きろ!」
ルーレンは20歳にもなっていないアランに対して静かにエールを送った。
怪我人を治療し終え、商隊は道を進んだ。
移動中、二郎の鬼人の如き強さに黒い太陽のリーダー、ルーレンが二郎を勧誘したが玉砕した。
虹色の絵の具のメンバーからも色仕掛け込みで勧誘した。
鼻の下を伸ばしながらハニートラップに引っかかるが、イリスの泣き顔が目に入り鼻血を出しながらも勧誘を断った。
聖都を出て12日目 深夜
二郎とオジが野営地の警戒を行っていた。
30分事の見回りと焚き火の番。
聞こえるのは虫の鳴く声だけだった。
森の奥からニーチャとクリムトの艶声が聞こえる2人はあえて無視をしていた。
「なあ、ジロウ。」
「ん?なんだ?」
オジは焚き火に枯れ枝を入れた。
「…北の大陸に行くことを考え直してくれないか?」
「急にどうした?」
「…イリスの気持ちわかってるんだろ?」
「…」
「わかってるなら、答えてやれよ。」
「…ああ、だけど…」
「だけどじゃない!このまま別れてみろ!イリスを不幸にする気か!」
二郎は迷っていた。
異世界から来た自分かイリスを幸せにできるのか…
自分の変身能力をみて恐がらないだろうか…
二郎の中にも不安があった。
もしイリスに自分の存在が受け入られなかったら…
異端視故、敵対してしまったら…
そう、思うと二郎の心は不安に押しつぶされそうだった。
それなら、今のままの関係でも…
と、思う自分も確かにいる。
二郎の迷いは考えても解決しなかった。
「…オジ、近いうちに結論を出すよ。」
「…そうか…」
暫く沈黙が続いたが、口を開いたのは二郎だった。
「あ、おしっこ漏れそう。」
「早く行け。」
二郎が無表情で言うとオジは半笑いで行くように催促した。
「ちょっといってくるけど、覗くなよ。」
二郎は立ち上がり森の中に歩いて行った。
「頼まれても覗かねえよ。」
その時、大きな地響きが鳴り、北の空を赤く染めていた。
「なんだよ、あれ!」
オジは真夜中の夜明のような明るさを見て叫んでいた。
3日後
商隊は森の中にある村に到着する予定だった。
しかし、商隊が到着すると村は壊滅していた。
家は火事が起きてから倒壊し、人々も道端で燃え尽きて死んでいた。
「これは…」
二郎は今だに燃える家や、子供を抱き締める死体を見て表情を曇らせた。
「…魔族よ。」
イリスは眉間に皺を寄せながら苦々しく言った。
「あいつらは、人間を殺すことを楽しんでるわ。」
エリーナは死体に慣れているのか平然としていた。
「あれは…」
イリスは馬車を飛び出し倒れている親子の元に駆け寄った。
二郎も慌てて馬車を降りイリスを追いかけた。
「この子…、まだ生きてるわ!アルミ!!」
イリスは下半身が無くなった母親に抱かれた女の子をそっと抱きかかえると馬車にいるアルミの元に駆けだした。
二郎は無言のままイリスの後を追い掛けた。
二郎が馬車に乗り込むとアルミが女の子を回復魔法でその傷を癒していた。
「ふぅ、もう大丈夫よ。直ぐに目を覚ますわ。」
アルミは額の汗を拭いながら言った。
「…う、ん…」
女の子が目を開けると周囲を見回した。
「あれ?ここは…」
女の子が起き上がると近くにいるアルミに首をかしげながら聞いた。
「ここは聖都からフーレに向かう商隊の馬車の中よ。」
「商隊?…あ…う…うわああん、お母さん、おかあさん!!」
女の子は手で顔を覆いながら泣き叫んだ。
それから1時間ほどで女の子は落ち着いた。
「あの村で何があったか教えてくれない?」
イリスは女の子に優しく聞いた。
「うん、たくさんの魔物が襲って来たの。いつも威張っている兵士は直ぐに逃げちゃうし、お母さんは足が悪いから私が支えないと歩けな…い…の。」
女の子は涙をためていた。
「それから、空を飛ぶ男の人が私とお母さんがいる家を魔法で…」
女の子は声を出さずに泣いていた。
「魔族だな。」
馬車の後ろを馬に乗って話を聞いていたオジが言った。
「こういうのはよくあるのか?」
二郎は小声でオジに聞いた。
「うーん、年に1、2件かな?」
オジは少し考えた仕草をすると二郎の眼を見て答えた。
馬車は止まることなく村外れに着いた。
「ここも死臭が凄いから移動するってさ。」
オジが商隊の責任者のフランからの言葉を最後尾の馬車に乗っていた二郎達に伝えた。
数時間進み、商隊は見晴らしの良い草原でテントを張った。
保護された女の子、リリーはイリスたちと同じテントで眠った。
リリーはイリスがいないと情緒不安定になった為、の処置だった。
オジと二郎はテントに入ると直ぐに横になった。
「オジ、リリーはどうする?」
「うん?リリーか?…フーレで孤児院に預けるか、それとも…」
「そうか、わかった。」
二郎はオジの言葉を最後まで聞くつもりはなかった。
数日後
商隊は目的地のフーレの町に到着した。
時間は昼過ぎで、予定通りの到着時間だった。
フーレの町は東側を海に面した港町だった。
「ハハハ、よくやってくれた。とくに西のそよ風のジロウ。私たちの専属の護衛をしないか?」
フランは豪快に笑いながら二郎を勧誘した。
「おいおい、ジロウは俺達の黒い太陽に加入だよな。」
ルーレンが二郎の肩を掴みながら言った。
「ちょっと待ってよ!彼は私たちの虹色の絵の具に入るの!」
ミナが二郎の手を握り胸を腕に押しつけるように言った。
「…お気持ちは嬉しいですけど、他の依頼を受けている最中なんで…。それが終わったら、改めてお話を聞かせてください。」
二郎は勧誘している3人に対して頭を下げた。
「そうか、よければその依頼を手伝ってやってもいいぞ。」
ルーレンは頷きながら言った。
「あー、すみません。俺個人の指定依頼なんですよ。」
二郎は苦笑いをしながら答えた。
商隊と黒い太陽、虹色の絵の具と別れた西のそよ風は旅の疲れを癒す為、宿屋に向かった。
「部屋を頼みたいんだけど。」
オジは受付の女将に言った。
「部屋は1人部屋、2人部屋、3人部屋あるが、どうするんだい?」
「2人部屋2つと1人部屋1つでお願いします。」
オジが口を開く前にアルミが女将に告げた。
「はいよ、全部で4000エレだが、見たところ冒険者かい?」
「はい、冒険者やってます。」
オジは冒険者カードを女将に見せた。
「ランクCかい。それなら3700エレになるね。」
オジは袋から3700エレを女将に渡した。
「はい、ちょうどね。これが2階の1人部屋の鍵。で、こっちが3階の2人部屋の鍵ね。」
女将が台の上に鍵を3本置いた。
「ありがとう、コレはジロウね。こっちはエリーナね。」
アルミは2人部屋の鍵を二郎とエリーナに渡した。1人部屋の鍵はアルミが持ったままだった。
「それじゃ、行こうか。」
オジの言葉でそれぞれが部屋に向かった。
二郎とオジは部屋に着くと荷物を置いて一息ついた。
「オジ、行くんだろ?」
二郎は荷物を降ろしたオジの背中を見ながら聞いた。
「…ああ、明日の朝まで帰ってこないつもりだ…。」
オジはアルミの部屋に行き朝がえりの宣言を二郎にした。
「そうか…、そのまえに言っておきたい事がある。明日、俺はこのパーティーを抜ける。…イリスの件は今日中にケリをつける。」
二郎は動かないオジの背中を見ながら決意の籠った声で言った。
「わかった。明日、ギルドに行こう…。それと、イリスを泣かせるなよ。」
「…ああ、わかった。」
オジはそのまま部屋を去った。
「オジ、干乾びるなよ…」
二郎の呟きは誰にも聞こえなかった。
二郎が椅子に座り窓から人ごみを眺めていると不意に部屋にノックの音が響いた。
「…ジロウ、いる?」
その声はイリス隣にリリーはいなかった。
「ん?どうした?」
二郎は椅子から立ち上がるとドアを開けた。
「こんな所で立ち話も何だから、入ったら?」
二郎はイリスを部屋に招き入れると今まで座っていた椅子に座った。
イリスは少し戸惑う仕草をするが、部屋に入り二郎の対面の椅子にすわった。
「あの…、えっと…」
イリスは顔を真っ赤に染めながら視線を下にしながら会話の糸口をさがしていた。
「イリス、俺はパーティーを抜ける。」
「え?」
一瞬の静寂、それを破ったのはイリスの叫び声だった。
「なんで!まだ1年あるじゃないの?!」
イリスは立ち上がり二郎に詰め寄った。
「ああ、それはアメン王が決めた期限だ。早いに越したことはないだろう。それに…」
「それに?」
二郎はイリスの目を見つめるとはっきりした口調で答えた。
「リリーみたいな子をこれ以上増やすわけにはいけない。俺しか出来ない事なら早く動いて惨劇を終わらせたい。」
「…そうね。それなら約束して。必ず帰ってくるって。」
二郎は立ち上がり静かにイリスを抱き締めた。
「必ず帰ってくる。どこに居ても見つけてみせる。」
イリスはその言葉を聞くと小さくうなずいた。
そして、触れ合う唇と唇…
「ジロウ!アルミが女の子の日になっちゃって暇なんだ。買い物行こ…う…、失礼しました。」
オジがドアを開け入ってきた。2人のキスシーンを見たオジはニヤニヤしながら部屋を出て行った。
「「…」」
オジが出て行った扉を見つめる2人はそのまましばらく動かなかった。
「…まあ、今日はここまでだ。俺が帰ってきたら最後まで…な?」
ジロウはイリスの耳元で呟くとイリスは顔を赤くしながらうなずいた。
翌日 早朝
オジと二郎はフーレの町のギルドの受付に来ていた。
「んじゃ、カードいいッスか?」
若くチャラチャラした職員は二郎のカードを渡した。
手続きは直ぐに終わり、二郎は帰ってきたカードを見た。
名前 ジロウ ヤマモト
所属 ボクチャソース → 西のそよ風 → 無所属
ランク B
「あれ?ランク上がってる?」
二郎はカードを眺めながら言った。
「ああ、討伐数はパーティーで記録されるからな。ランクアップおめでとう。」
「ありがとう。…そして、さようならだな。」
「ああ、いや、ここは『また会おう』だな。」
「ああ、また会おう。」
そして二郎はギルドを出て行った。
その後ろ姿をオジはいつまでも眺めていた。
「さて、1人になった事だし、さっさと行動するかな?」
二郎はフーレの町を出て街道を北西に進んだ。
このまま北西に進むと南の大陸で一番北にあるノーズの町に着く街道だった。
「♪~」
二郎は鼻歌を歌いながらご機嫌に歩を進めた。
2日後
「暇だ。」
二郎が孤独な一人旅に飽き始めていた。
袋から地図を取り出すとおおよその現在地からノーズまでまだ10日以上あった。
「…無理だな。さっさと進もう。」
二郎は街道から森の奥に入って行った。
街道から十分離れ、周囲に人がいない事を確かめるとドラゴンに変身した。
≪さっさと行って暖かい食事とベットでゆっくりやすも…う?≫
二郎の視線の先にはオークが怯えるように木に隠れて二郎を見ていた。
≪ハッハッハ!いただきま―――す。≫
二郎は逃げようとするオークを捕まえ、頭からかぶりついた。
≪うーん、…マズイ。≫
二郎は半分になったオークを丸飲みすると翼を広げ大空へと旅立った。
空を飛ぶ二郎は街道沿いに道を進んだ。
街道を走る馬車や冒険者が驚き見上げる様は滑稽で二郎は笑いながら進んだ。
幾つかの村を越え、日が傾くころにノーズの町が見えてきた。
≪そろそろ降りるか。≫
二郎は森の中に降りると甲冑を着た武者に戻した。
「街道は、あっちか…」
二郎は少し暗くなった森を抜け街道に出た。
ノーズの町が見える方向に歩くと、前方から揃いの鎧を着た一団がやってきた。
「おい、この辺りでドラゴンを見なかったか?」
先頭を走っていた一際派手な鎧の男は二郎に訪ねた。
「え?ドラゴン?見てないですよ。」
「そうか、このまま進むぞ!」
男は大きな声を上げると砂煙を上げ一団は走って行った。
「ドラゴンはここにいて、鏡がないから見ていないって言い訳通じるかな?まあ、バレなければオッケーかな?」
二郎は一団を見送るとノーズの町に歩いて行った。
ノーズの町、
大陸北部で最も勇敢な軍を率いるノーズ王の城下町。町の北側は断崖絶壁で海に面していた。
また海の向こうに北の大陸が見えることでも有名だった。
ここは軍が周辺の魔物を狩っているので城下町には冒険者の姿は少なかった。
また、治安が安定している為に多くの人が移住し街は活気にあふれていた。
町に入った二郎は人の多さに驚きながらも冒険者ギルドに入った。
「…あれ?」
冒険者ギルドには数人の職員以外だれもいなかった。
「ああ、いらっしゃい。よく来てくれました。」
受け付けにいた男性職員が二郎に気が付くとカウンターを飛び越えて近づいてきた。
「今日はどのような御用でしょうか?討伐報酬ですか?依頼を受けて頂けるんですか?」
男性職員が笑顔で二郎に詰め寄り、二郎は逃げ腰になった。
「い、いや。ここなら北の大陸の事何かわかるかな?って聞きに来たんですけど…」
その瞬間、男性の顔が笑顔から無表情に一瞬で変わった。
「古い資料あっち。」
職員は部屋の一角を刺すと明らかに落胆した雰囲気を出しながら受付に戻って行った。
二郎はギルドの一角にある資料室に行くと北の大陸に関連する書物を探した。
「…えーと…うーん…おーう…。あれ?無さ気な予感!」
二郎は一通り探した中で今度は魔族に関連する書物をさがした。
「えーっと…絵本か…次は…絵本か…って絵本だけ!?」
絵本は表紙以外は文字が消えすでに読めなくなっていた。
絵本の中に1枚の紙切れが挟まっていた。
二郎はの微かに読める場所を読んでみた。
「北…魔…族…軍隊…争った…失敗…陥落…南…避難…修復…結界…弱い…魔物…浮遊…総攻撃…帰れぬ…無事…」
二郎は何度も読み返すが、消えている文字が多く、解読は出来なかった。
「まあ、いいや。とりあえず北に向うか…」
二郎は受付で居眠りする職員を起こさないようにギルドを出た。
すでに周囲は暗く空腹を主張する腹を押さえながら宿を探した。
「あら、冒険者?珍しいわね。」
宿の受付をしている女性が二郎を見ながら言った。
「ああ、北の大陸の調査に来たんだけど、手掛かりがないんだ。」
「そりゃそうよ。見えて入るけど誰も行ったことないんだから。」
「そっか。まぁ、とりあえず1泊で。」
「はい、201号室ね。980エレよ。朝と晩御飯込みなら1300エレになるわ。」
「じゃ、1300エレね。」
二郎は袋から銀貨を取り出すと女性に渡した。
「はい、ちょうど貰うわ。これが鍵ね。食事は部屋に運ぶから待ってて。」
「わかった。」
二郎は鍵を受け取ると2階の部屋へと向かった。
翌日
暖かい布団と美味しい料理で気持ちの良い朝を迎えた二郎は町の北側にある北の大陸の見える公園に向かった。
「確かに北の大陸は見えるけど…」
二郎は北の大陸を眺めるが、遠すぎて僅かに陸地らしきものがあるようにしか見えなかった。
「お若いの、あの大陸に興味があるんか?」
二郎は声のする方向を見ると白い鬚を生やした老人がベンチに座っていた。
「はい、どんな人がいて、どんな料理があるか気になるじゃないですか。」
「ほっほっほ、どんな料理かはわからんが、どんな人が居たかは教えることができるかもしれんな。」
「教えて下さい。」
「まあ、座りなさい。」
二郎は老人の隣に座った。
「そうじゃのう。古い言い伝えじゃ。北の人が南の人を護っていると言われいておってな。まあ、今の北の魔族が攻め込んでいると言われているが、その正反対じゃな。」
老人は髭を撫でながら言葉を続けた。
「ワシの爺さんのそのまた爺さんの爺さんから聞いた古い古い話じゃ。昔は北も南も皆、平和で穏やかに暮らしていたそうじゃ。ある日突然、神を名乗る者が攻め込んできたんじゃ。」
「神ですか…」
「うむ、以上じゃ。」
「え?他にはないんですか?」
「あらんよ。ワシは若いころ、この話を元に新しい色々と調べたがな、どうしても北の大陸に行かねば分らんことが多すぎた。それで、気がつけばこの年じゃ。妻も旅立ち子供も巣立った。満足な人生じゃったわ。」
「…もし、北の大陸に行く事が出来れば何を調べたいですか?」
「そうじゃのう…、古い文献に軍隊が何かマジックアイテムを使っていたと書いてあったのう。それが何なのか最後まで分からずじまいじゃ…」
「そうですか…」
「さて、話しはおしまいじゃ。ワシはそろそろ帰るとしよう。そろそろ妻が帰ってくるんじゃ。」
「え?さっき旅立ったって…」
「うむ、ご近所さんたちと温泉に行くのが夢だったんじゃ。たまには女同士でのんびりしてくるのもいいんじゃないか?」
老人はベンチから立つと住宅街に向って歩いて行った。
「…騙されたの…かな?」
その後、二郎はノーズの町から出て崖沿いある森に入って行った。
周囲にだれもいないことを確認すると、姿を白い烏に変身した。
白い烏
ある地方の言い伝えでは白い烏は幸運の証とされていた。圧政を敷く領主は村人や町人を使い捕獲しようとした。
彼らの生活を蔑ろにしながらの行いだった為、反乱が起き結果的に圧政は終った。
その後、新領主は善政を行い領民から慕われた。その新領主の家紋は白い烏だった。
森を抜け、大空に飛び立った二郎は北の大陸に向かった。
北の大陸までは1時間ほどで辿り着いた。
暫く気ままに飛んでいると、遠くに建物が見えた。
二郎はもう少し進んだら降りようと思った、その時。
左の翼に衝撃と痛みがあった。見ると矢が刺さっていた。
バランスが崩れ二郎は森の中に落ちて行った。
「ここら辺に落ちたはずなんだけど…」
赤い髪をした女性は森の中を歩いていた。
「ん?倒れてる!」
彼女が発見したのは二郎だった。頭から血を流している二郎に意識はなかった。
「エルミナ!こっち来て!」
女性が叫ぶとエルミナと呼ばれた青い髪の女性が現れた。
「どうしたの?…まさか!殺っちゃったの?ジェナ、自首しよう…ね?」
「バカなこと言ってないで町まで運ぶよ!」
「はいはい、少しは付き合ってくれてもいいじゃない。」
二郎はジェナとエルミナに保護され町に連れれいかれた。