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二郎とイリスは重大な話を終えると食堂に戻った。
オジ達と合流し朝食を取ったあと、オジ達を連れて二郎とイリスはパーティーの解散と西のそよ風に編入するためにギルドに向かった。
受付の女性に事情を話すと手続きは直ぐに終わった。
二郎は渡されたカードに文字が浮かぶように念じた。
名前 ジロウ ヤマモト
所属 ボクチャソース → 西のそよ風
ランク C
「それじゃあ、連携の確認のために周囲の狩りに行くか。」
オジの言葉に全員が頷き、移動を開始した。
森の中ではエリーナが敵の気配を感じ先制攻撃を放ち、イリスが魔法を放ち接近前に倒す。
接近されても二郎、オジが倒していた。傷ついたメンバーをアルミが治療していた。
ランクBのパーティーでも苦戦するようなクレイジーベアを1人で倒せるオジと二郎にはワイルドドックやゴブリン程度では敵ではなかった。
「ふぅ、終った。」
二郎は首を斬り落としたゴブリンを見ながら言った。
「おつかれ。それじゃ、一旦ギルドに戻ろうか。」
オジが二郎を労い次の予定を告げた。
「ああ、あれ?イリスは?」
二郎は周囲を見回すとイリスどころかアルミやエリーナもいなかった。
「察しろ。女の子が集団でいなくなるんだ。アレだ。」
オジは二郎に言うと聖都に向かって歩き出した。
「アレって、アレか。おしっことかうんちかヴぁ!」
「なに言ってるの!!」
二郎が言葉を言い終わる前に真っ赤な顔をしたイリスが鉄杖で二郎の頭をたたいた。
痛がる二郎の耳を引っ張りながら行くわよ!とイリスが引っ張って行った。
オジ達から遅れてギルドに着いた二郎は気べ際の長椅子に座り休憩していた。
「なぁ、オジ。」
「なんだ、二郎。」
隣に座っていたオジは視線を変えないまま二郎に返事をした。
「イリスの事頼むな。それと、依頼の料金としてコレ受けとってくれ。」
二郎は腰の袋からコインの入った人の頭ほどの大きさの袋をオジに渡した。
「そんなに気を使わなくても…」
オジは言葉を言いながらも袋の中を開けると絶句した。
袋には金貨しか入ってなく、最低でも万を超える金貨が入っていた。
「今まで蓄えた400万エレ。イリスには秘密にしてほしい。」
通常の冒険者で年に400万も蓄えることはできない。武器や防具の維持費に包帯やポーションの薬代。宿にも泊まることを考えれば年に10万エレも蓄えることが出来れば良い方だとオジは知っていた。
「…凄いな。何年ためたんだ?」
「ん、秘密。」
オジの質問に二郎は答える気はなかった。
「あ、2人とも居たわね。これが次の依頼よ。」
エリーナがオジに見せたのは北にあるフーレの町への護衛だった。
「うん、明日集合で、期間は20日。報酬は1パーティー2万エレ。妥当だな。」
オジは依頼書を確認していた。
「また護衛か?護衛多くないか?」
二郎はオジに訪ねた。
「ああ、俺達は護衛を専門にしているんだ。移動先で美味しい料理を食べて、また護衛で稼ぐ。そんで美味しい料理を食べる。何か不満か?」
オジは紙をみながら答えた。
「スマン、ただ聞いてみただけだ。」
二郎はオジに謝った。オジは依頼書をエリーナに返すと頷いた。
「それじゃあ、決定ね。あれ?アルミとイリスは?」
エリーナが周りを見まわすが2人の姿は見えなかった。
「ああ、新しい魔法書を買いに行ってる。」
オジがエリーナに説明した。
エリーナはそう、と呟くと二郎を見た。
「ねぇ、ジロウはイリスの事どう思う?」
「ん?イリス?そうだな、…妹、かな?」
二郎は二度と会う事のない妹を思い出した。
「いや、そうじゃなくて。…はぁ、いいわ。もう、率直に聞くわ。ジロウ、あなたはイリスの事を恋愛対象として見れますか?」
「…え?」
二郎はイリスの事を思い出した。
初めて会った時の事、二郎に向けられた笑顔…
「えっと…」
二郎が言い掛けた時
「おまたせ、良い依頼あった?…どうしたの?」
イリスが二郎を見て首をかしげた。
「…ああ、な、なんでもない。良い魔法はあった?」
二郎は顔を赤くしながらイリスに問いかけた。
「全然ダメね。攻撃魔法は無いわ。」
イリスは溜息をつきながら言った。
「でも、補助魔法は充実してたわ。買ったのは…」
アルミは笑顔で魔法の説明を始めた。
二郎は隣のオジに小声で相談した。
「なぁ、イリスにどう接すればいい?」
オジは少し悩む仕草をすると二郎に言った。
「…知らん。」
翌日
西のそよ風のメンバーは聖都の門に来ていた。
そこには多くの馬車が来ていて二郎達が護衛する者がどこにいるか分からなかった。
「えーっと、フランさん、フランさん、あ、いた。」
エリーナは依頼書を片手に依頼主を探しだした。
フランの商隊は馬車が5台と大きな商隊だった。
「フランさんですか?依頼を受けた西のそよ風です。」
エリーナがフランにお辞儀しながら言った。
「ああ、よろしく。一応私が責任者だが、この商隊はフーレまでの商人を集めた即席の商隊だ。」
フランは眼光の鋭い女性で、イリス達よりも年上だと雰囲気でわかった。
「そろそろ時間だ。他のパーティーを集めて工程を説明しよう。」
フランは馬車の周りの人々を集めた。
「私が、商隊の責任者フランだ。今回は馬車5台の大きな商隊なんで5人以上のパーティ限定で3つ集めた。護衛方法は冒険者に任せる。日程は20日。バンガの川沿いに北上する。報酬はパーティーごとに2万エレ。質問は?」
フランが周囲を見渡すが質問者がいなかった。
「それでは冒険者の簡単な紹介を頼む。」
フランは隣の男に向かって視線を向けた。
「ああ、俺は『黒い太陽』のルーレン。前衛のニーチャとアラン、中衛は俺、魔法使いのババズとクリムト。よろしく頼む。」
黒い太陽の一行はそれぞれの自己紹介の時に頭を下げていた。全員が男性フェロモンを放つ魔法使いですら筋肉質のパーティーだ。
「私たちは『虹色の絵の具』。私はミナ。前衛は私とユキ。中衛はツムギとミラン。魔法使いは双子のホーニとニルン。よろしくね。」
女性だけのパーティだったが、彼女達の装備から歴戦の猛者とわかった。
二郎が気になったのはユキという女性。
二郎のような甲冑ではないが、確かに日本風な簡易な鎧を着ていた。
「俺達は『西のそよ風』。前衛の俺、オジとジロウ。中衛はエリーナで魔法使いがアルミとイリスだ。よろしく。」
ジロウ達も名前を呼ばれると頭を下げた。
「それじゃ、リーダーは集まってくれ。」
フランはリーダーを集め護衛の詳しい説明をした。
オジを見ていた二郎は不意に声を掛けられた。
「失礼、貴方は同郷の出ですか?」
声の方向を見るとユキが立っていた。
黒眼黒髪のユキは上目使いで二郎に質問した。
「さて、どうだろう?故郷を捨てた身だ。」
二郎は少しだけホームシックな自分がいることに気が付いた。
「そうですか…。」
ユキは少し寂しそうな目をしていた。
「え!ジロウって故郷がないの?」
イリスが二郎とユキの会話に入ってきた。
「ああ、事情があってな。もう帰る事は出来ないんだ。」
二郎はさびしげな表情で言った。
「あの、よろしければ事情をお話頂ければ力になれるかと…」
ユキは二郎の寂しげな表情が気になった。
「いや、俺の問題は俺が片付ける。その気持ちだけで十分だ。」
二郎はユキに向かって頭を下げた。
「おーい、出発だ!準備しろー!」
遠くでオジが叫んでいた。
「行きましょ。ジロウ。」
イリスが二郎の手を引っ張り歩きだした。
「ああ、そんなに急がなくても…」
二郎とイリスはユキを置いてオジの方に歩きだした。
オジはそんな2人をニヤニヤしながら見ていた。二郎とイリスがオジの所に着くとすでにエリーナとアルミが待っていた。
「おう、全員そろったな。説明すると、俺らは最後尾の馬車に乗って後方警戒と左右から来た場合の迎撃になる。」
オジの言葉に全員が頷いた。
「それで、俺とジロウ、エリーナは馬で移動。アルミとイリスは馬車で待機だ。」
オジの言葉に全員が頷いた。
「で、馬は?」
二郎の言葉で全員がオジを注目した。
「…今から買いに行く…」
オジ、エリーナ、二郎が馬に跨り馬車に戻ると出発する寸前だった。
「ギリギリ間に合ったな。」
オジはホッとした表情だった。
「さぁ、行こう。」
二郎は慣れない馬に跨り手綱を引くが、馬は全く反応しなかった。
「ちょ、今まで言うこと聞いたのに!」
何度も手綱を引くが馬は動かなかった。
「はぁ、仕方ないわね。」
エリスは二郎の後ろに跨り二郎の手から手綱を取ると馬は歩きだした。
「…ジロウ、見えない。」
体格の差でイリスの目の前には壁のような二郎の背中しか見えなかった。
「ああ、ゴメン。降りるよ。」
二郎は馬から落ちるように降りると馬車に向かった。
「ジロウ!あなたの馬よ。後ろに乗って。」
イリスが二郎を呼び止めると。二郎は少し戸惑いながらイリスの後ろに乗った。
「手はしっかり腰を回して掴んで。」
イリスに従って二郎はイリスの腰の前で腕を組んだ。
「行くわよ。」
イリスは顔を赤くしながら馬を進めた。
夕方
「そろそろ野営の準備だ。俺達は食事までは周辺警戒だ」
オジは二郎とイリスの乗る馬に近づいた。
「ジロウ、馬は初めてか?」
「ああ、ケツが3つに割れるかと思ったよ。」
「あはは、お、あそこがキャンプか。」
オジはそういうと馬を駆けだした。
イリスは周囲を警戒しながらも時折、もぞもぞと腰を動かしていた。
(ヤバい、イリスが腰を動かすと俺の×××に当たって気持がいい。我慢しないと…)
二郎は微かな理性を振り絞りその気持ち良さに抵抗した。
「ン…、ジロウ着いたわ。」
イリスは顔を赤くしながら二郎に告げた。
「あ、ああ。そうか。それじゃあ、このまま行くか?」
イリスは首を横に振った。
「ううん、この子にも休ませなくちゃ。」
イリスが馬を下りると二郎も降りた。
「ジロウ、イリス。2人で周辺を探りながら焚き火用の枝を探してくれ。」
オジはそう言うとアルミと共に森の中に消えた。
「行きましょう、ジロウ。」
イリスが二郎の手を引き森の中に進んで行った。
「うぅ、腹いっぱいだ…」
全身鎧の大男、アランは苦しそうだったが笑顔だった。
「ああ、美人の作った食事を残すなら腹壊した方がマシだな。」
アランの隣でローブを着た筋肉質の魔法使いババズが笑いながら答えた。
「あら、今まで私が作った料理に何が不満だったのよ。」
スパッツとタンクトップの筋肉質の男性?クリムトはクネクネしながらアランとバズズに抗議した。
「クリムト、君の料理には満足している。それに料理に含まれる愛情も本物だ。俺にはわかる。」
大きな剣を持った全身鎧の男ニーチャはクリムトの目を見て答えた。
「ニーチャ…」
「クリムト…」
お互いが見つめあい、そして抱き合った。
「おいおい、さっさと飯食っちまえ。腹に入れば何でも同じだろう。」
ニーチャとクリムトの暴走を止めたのは黒い太陽のリーダー、ルーレンだった。
2人はルーレンに従い食事を再開した。
「…なんて言うか、濃いな…」
オジは黒い太陽の面々を見て言った。
「ええ、濃いわね。それにあんなのを見せられたら食事が進まないわ。」
オジの隣でアルミが溜息交じりに呟いた。
「それにしても、確かに上手いな。」
二郎は食事を作った虹色の絵の具のメンバーを見た。
ミナとツムギが食材を刻み、ミランが下味をつける。
ホーニとニルンが食材を調理し盛りつける。
それをユキが運ぶ。
見事なチームワークだった。
そして、調理している虹色の絵の具のメンバーは鎧を外し調理する様は男の視線を釘付けにした。
包丁を下ろすと揺れる。
鍋を混ぜると揺れる。
出来あがった食事が目の前に降ろされる時に目の前にある2つの大きな果実。
二郎の位置からはユキがアランに何か呟いていたが聞こえなかった。
ユキは料理をアランに渡すとその場を立ち去った。
「…俺、今日こそ行ける気がする…」
アランがユキの後ろ姿を見ながらつぶやいた。
夜間の警護は初日は黒い太陽、2日目は虹色の絵の具、3日目は西のそよ風とCランクの冒険者ジロウ達は優遇されていた。
4日目からはまた黒い太陽からの順になっていた。
アランの告白撃沈から4日。商隊は大きな戦闘も無く農村に着いた。
「今日はこの村の外れでキャンプだ。準備しよう。」
オジに言われてキャンプの準備を始めた二郎は黒い太陽のメンバーが少ない事に気がついた。
「アルミ、黒い太陽の人数が少なくないか?」
ジロウはは近でテントを立てていたアルミに訪ねると、アルミは溜息をついて答えた。
「はあ、誰がいないか知ってる?」
ジロウは黒い太陽のメンバーを指さしながら確認した。
「えーと、ニーチャとクリムトかな?」
「…そうよ、あの2人は恋人らしいわよ。」
「…そうか、聞かなければ良かったな。」
「だったら口動かす前に体動かす、体!」
不機嫌になったアルミはキャンプの準備を続けた。
「西のそよ風、集合!」
オジが打ち合わせを終え帰ってくると全員に集合を掛けた。
「聞いてくれ、明日だが左右に小さな丘で囲まれた道がある。今まで何度もそこで山賊の襲撃にあったそうだ。」
「今回もありそうなの?」
アルミがオジに聞いた。
「ああ、黒い太陽のリーダーのルーレンが言うには間違いなくあると言ってる。商人からの情報だと、見通しの悪い道の前を塞がれて左右の丘の上から襲撃されるらしい。俺達は後方警戒だが、その時は左右からくる山賊を虹色の絵の具のメンバーと撃退する。魔法使いは馬車の中から援護して欲しい。」
「わかったわ。」
アルミが返事をし、イリスは頷いた。
「ジロウは左側を、俺とエリーナは右側を援護する。何か質問は?」
全員が首を振るとオジは満足したように言葉を続けた。
「そんじゃ、今日も美味しい飯食って、よく寝て明日の備えよう。」
「そうね、そうしましょう。」
オジの言葉にアルミが反応した。
「ちょっとまて。」
二郎が全員を呼び止めた。
「テントの数がオカシイ。イリスとエリーナが1つ、俺が1つ、アルミが1つ。なぜ3つも!?」
「…ジロウ。乙女心を理解してあげなよ。」
イリスが二郎の肩に手を置き溜息交じりに語った。エリーナも二郎を憐みの目で見ていた。
アルミは顔を赤くしながらオジを見てた。オジは苦笑いしながら二郎を見た。
「ちょっと待て、俺が悪いのか?俺が悪者か?」
二郎は何故か悪者になっている状況に少し混乱した。
「ハイハイ、ジロウは黙ってテント立てるの!その後は周辺警備よ!」
イリスは二郎に対して少し不機嫌に言うと言い訳をしながらも二郎はテントを張りだした。
翌日
気持の良い太陽を浴びて商隊は道を進んだ。
二郎は最後尾の馬車の後ろをオジ、エリーナと並んで馬を進めて行った。
「2人とも、そろそろだ。って言った先から襲撃かよ!」
オジは前方の馬車が止まっているのが見えた。
そのままオジとエリーナは馬車列の右側に馬を走らせた。
「クソッ!俺も急がないと!」
二郎は慣れない手つきで馬を走らせた。
馬を走らせると同時に左の丘を駆け下る20人ほどの山賊が目に入った。
二郎は山賊が到着する前に何とか虹色の絵の具のメンバーのユキ、ツムギと合流することが出来た。
「大丈夫か!」
二郎は2人に声をかけるとユキが返事をした。
「ツムギが弓で数を減らしているからまだ大丈夫よ。」
二郎はツムギの方を見るとクロスボウで1人ずつ確実に仕留めていた。
ツムギが半数を減らした所で馬車に接近されてしまった。
「来るぞ!」
二郎は2本の刀を抜き構えた。
ユキは薙刀を構え、ツムギは槍を構えた。
「はぁ!」
二郎は馬上から刀で攻撃するが、山賊に簡単に避けられてしまった。
そして山賊が二郎の乗っている馬を切りつけた。
馬は一刀で首を半分切られ絶命した。
馬が倒れそうになり二郎は馬から飛び降り地面に着地すると、山賊に向かって構えた。
「クソッ!馬が!」
二郎は死んだ馬に目を向けた。
その隙を山族が見逃すはずもなく二郎に剣で切りかかった。
二郎は山賊の剣を刀で弾くと、もう1つの刀で山賊の喉を突き刺し倒した。
二郎は山賊から刀を抜くと少し離れた場所にいる山賊に向かって血だらけの刀を投げた。
山賊は油断していたために心臓を刀で突き刺され絶命した。
二郎は殺した山賊の剣を取ると近くにいた山賊に向かって投げた。
山賊は剣を弾くと次に飛んできた刀が頭部に突き刺さり絶命した。
二郎は刀を回収するために頭部に突き刺さった刀を抜くと、刀に着いた血を払い構えた。
その瞬間、二郎の背に衝撃が走った。
{!!」
声にならない驚きで背中を見ると矢が刺さっていた。
二郎の背後の先には弓を構えた山賊が立っていた。
次の瞬間、山賊は炎の玉に包まれ焼死した。
イリスが杖を振って二郎に合図すると二郎は大きく頷いた。
「下がれ広範囲魔法が来るぞ!」
二郎が叫ぶとユキとツムギは山賊達から距離を取った。
その瞬間、山賊達は炎の波に呑まれた。
炎が消えた後には焼死体しか残っていなかった。
「ふぅ、こっちは終わったな。他は?」
「反対側ももう直ぐ終わります。前方に向かいます。」
二郎の言葉にツムギは事務的に答え、自分の馬に乗るとその場を去った。
ツムギの後を馬に乗ったユキが追った。
「馬か…」
二郎は自分の馬を見ると首から激しい出血を流し死んでいた。
「ジロウ!先に行ってるわ!」
イリスが魔法で低空を飛びながら二郎の横を追い抜いて行った。
「え!待ってよ!俺を置いてくな!」
二郎はイリスの後を追い掛けた。
黒い太陽のメンバーは今回の襲撃も普通の山賊と思っていた。
しかし、筋肉バカな黒い太陽と引けを取らない強さを誇る山賊は聞いたことが無かった。
大楯を持つアレンが傷つき馬車に入れられた。その後は大剣のニーチャが1人で戦線を維持していたが直ぐに突破された。
中距離で弓を放っていたルーレンも剣に持ちかえ前線に向かった。
ババズは攻撃魔法で氷柱を放ちなんとか馬車まで到達させずにいた。
クリムトは必死になりながらアレンの瀕死の重傷を回復魔法で治していた。
そこに来た虹色の絵の具所属の双子、ホーニとニルン。
青いローブのホーニは炎の攻撃魔法を放ち、黒いローブのニルンはニーチャとルーレンに補助魔法を掛けサポートに徹した。
なんとか戦線を維持できたが、ここで予想外の出来事が起こった。
山賊と戦っている最中に魔物の群れが現れた。
魔物はオーガが1体、オークが5体、レッドゴブリンが10体だった。
3軍乱れての戦いは熾烈を極めた。
ホーニがレッドゴブリンの放った石が頭部に当たり気を失うとニルンはホーニを抱きクリムトの馬車に連れて行ってしまった。
その時、馬に乗ったユキとツムギが現れ少し遅れてイリス、ミラン、ミラ、オジ、エリーナが現れた。
山賊は援軍と魔物の対処できずに後退していった。
しかし、魔物は顕在でレッドゴブリンを倒すがオーガとオークが妙に連携を取るのが上手くなかなか撃破出来なかった。
そして、現れたのが二郎だった。
二郎は2本の刀を抜きながらオークに接近し、すれ違いざまに首を落として行った。
3体のオークを一瞬で倒した二郎は興奮していた。
(イリスのパンチラ、イリスのパンチラ、イリスのパンチラ、イリスのパンチラ――――――!!)
空を飛んだイリスの下着が見えた二郎は今まで以上に興奮していた。
見えそうで見えない、でも、見えた。
その興奮は戦闘の興奮と重なり二郎のテンションは高かった。
「はああああああああああああああああああ!!!!」
2本の刀は超高速で突かれ2体のオークは体の前面が穴だらけになり絶命した。
オーガが二郎の隙をついて腕を払うと二郎はオーガの腕、肩に飛び乗り高速の振りでオーガの首を切り落とした。
倒れゆくオーガから飛び降りた二郎は地面に着地すると刀を持った両腕を上げ雄たけびを上げた。
「うおおおおおおお!!パンチラ最高―――――!!!」
周りの女性陣からは軽蔑の眼差しで、男性陣は二郎の叫びに大きくうなずいた。