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此岸  作者: 満腹太
16/16

15

二郎はアメン王から渡された地図を元に地下遺跡への入口を探していた。


「ってここドコだよ…。入口も見当たらんぞ。」


二郎が悪態を吐きながら歩いているのは宮殿の地下にある迷宮だった。


迷宮は手で掘られたのか壁は土をくりぬいただけの粗末なものだった。


そこの封印された扉から地下遺跡への道が開けると聞いた二郎は最初は探検気分で迷宮に入った。


松明を使いながら歩いているうちに自分んがどこにいるのか分らなくなってしまったのだった。


この迷宮は王家の墓地も兼用してあり、王家に連なるもの以外は立ち入り禁止だった。


二郎は特別にアメン王からの許可を得ることが出来たが、『西のそよ風』が立ち入ることは許可されなかった。


「うーんと、これかな?」


二郎は木の扉を見つけると蹴り倒した。


中は8畳ほどの空室だった。


「くそッ!何もない!せめて裸の女くらい用意してろよな!」


悪態を吐きながらもピンクの考えをしていた。


その後、半日ほど迷宮で彷徨っていた二郎はついに地下遺跡への扉を開くことが出来た。


「はぁー、やっとかよ。」


二郎は地下への土の斜面を下りて行った。


暫く歩くと壁が青緑の石に変わった。


奇麗に切り取られた青緑の石壁は自然な物ではなく、表面は奇麗に磨きあげられていた。


石壁には2メートル間隔で発光する球が埋め込まれて周囲を明るく照らしていた。


二郎は松明を消すと周囲を警戒しながら先に進んだ。


幾つかの角を曲がり辿り着いたのは石の扉だった。


二郎は扉を軽く押すと扉は音もなく開いた。


「…」


二郎は銃を抜き警戒しながら部屋に入った。


そこは休憩室なのか、いくつかのベットらしき残骸と中央の石のテーブルの上にはコップが置かれていた。


「…誰もいないな…」


二郎は小さく呟くと周囲を調べた


壁の一部に埋め込み式のロッカーらしきものがあったが中にはゴミや石しかなかった。


二郎は部屋の調査を諦め次の扉に手を掛けた。


扉は音もなく開いた。


「ん?…柱?」


扉の正面に2本の青銅の柱が立っていて二郎の行く手をふさいでいた。


二郎が強引に柱と柱の間をすり抜けると、その柱の正体がわかった。


「ゴーレムか…」


ドリートの地下で見たような大きなゴーレムが剣と楯を構えて立っていた。


ホールにはゴーレム1体しかいなかった。ただ、ドリートのゴーレムと違い、大きな剣と強固な防具を備えていた。


二郎はゴーレムに近づき軽く足を蹴ってみたが反応はなかった。


そして、器用にゴーレムの体を昇り、顔を覗き込んで見たが一行に動く気配はなかった。


「壊れてるのか?…まあ、いいや。先に行こう。」


二郎はゴーレムの頭から飛び降りるとホールの奥にある扉に歩いて行った。


二郎がホール中央まで歩くとホールが揺れた。


「じ、地震?!いや、後ろか!!」


二郎が振り向くと先ほどのゴーレムが二郎に向かって歩き出していた。


二郎は腰の銃を抜きゴーレムに撃つが鎧に弾かれてしまった。


「ならば!!」


二郎は腕の関節部分を狙い撃ち放った。


銃弾は柔らかいと思われた関節部分にも弾かれてしまった。


「んな!ひでぇ!銅が鉄より硬いってありかよ!!」


そんな事を言っている二郎の頭上にゴーレムは剣を打ち下ろした。


二郎は横に跳ぶ事で剣を避け何度か転がりながら距離を取った。


二郎が起き上がるとゴーレムが目の前にいた。


今度は剣を横に払ったので二郎は屈んで回避した。


二郎が屈んだ所に頭上から巨大な楯が落された。


この楯を二郎は前進しゴーレムの股下に行くことで回避した。


二郎はそのまま股下でダイナマイトを落とすとゴーレムの後ろに全速で駆けだした。


二郎の後ろから聞こえる爆発で振り返るとそこには両足の脛を失ったゴーレムが倒れていた。


「へへへ、流石ダイナマイトだな…」


二郎は新たにダイナマイトをポケットから取りだすと起き上がろうとしているゴーレムの首、腰に数本ずつ差し込むと再び距離を取った。


そして、ゴーレムはダイナマイトの爆発で完全に破壊された。


「はぁ、女型だったら華があったのに…。男型なんて、ホモが作ったのか?」


今日も二郎の脳内は平常運転であった。




二郎がホールの奥の通路を歩いている途中、アメン王に告げた違和感に気が付いた。


「そうか!今までの通路と、ここからの通路は作った人が違うのか!」


二郎は今までの青緑の石壁から通路の途中から境界線があるように土壁に変わっていた。


「…だが、それが分ったからと言っても何もないんですけどね。」


二郎は独り言を言いながら通路を歩いて行った。


木製の扉を開き真っ暗な部屋に入り数歩歩くと不意に二郎にスポットライトのような眩しい光が当てられた。


「うお!なんだ?!眩し過ぎる!!」


二郎は両手で顔を覆うが光は二郎を包み込んだ。






「あれ?寝てた?」


二郎は自分のベットで目が覚めた。


多くの本に囲まれた部屋には足の踏み場もないほど積み込まれていて歩く場所が獣道のようにそこだけ本が無かった。


二郎はベットに座り込み寝ぼけた頭を覚まそうとしていた。


その時、ドアをノックする音が聞こえた。


「お兄ちゃん、起きてる?」


ドアを開けたのは妹の『葵』だった。


高校生の妹は制服を着ていた。


「あ、起きてたの。お母さんの朝ごはん出来たよ。もう、お父さんも兄さんも起きてるよ?」


葵は二郎の部屋に入りながら言うと寝ぼけて半分意識がない二郎の手を引いて部屋の外に歩きだした。


「…んー、眠い・・・」


二郎はあくびをしながら葵に引かれながらリビングに入った。


そこには両親が揃い、兄妹が揃い、平穏な一日の始まりのようだった。


「二郎、夜更かしは程ほどにしなさいよ。お父さんも何か言ってください。」


(…なんだ?違和感を感じる…)


母が二郎にあきれ顔で言った。


「ん、だそうだ。二郎。」


父は視線を新聞に向けたまま口を開いた。


「はははっ、二郎。大人なら自己管理ぐらい自分で出来るよな?」


兄が二郎に笑いながら言った。


(何かがおかしい…)


「お兄ちゃんはまだまだよ。兄さんみたいに立派な人に本当になれるのかな?」


妹は二郎を見ながらため息をついた。


それから、思い思いに会話をしながら食事を始めた。


家族の笑顔。


(そうか、これは俺の望んだ家族像だ!)


ふと、二郎は懐かしく感じた理由を思い出した。


「…兄さん。会えてうれしいよ。夢でもその姿に会えて嬉しいよ。」


「…」


太郎は笑顔のまま固まっていた。


「兄さんはもう、いない。居ないんだ。」


二郎は眼を瞑り現実を思い出し、再び目を開けた。


兄の席には見知らぬ女性が座っていた。


「兄さん…、いや、姉さんか…。」


山元太郎。性同一性障害で苦しんだ末、性転換をした二郎の元・兄がそこにいた。


「そして、父さん…。」


二郎が父を見ると、その隣に若い女性が座っていた。


「父さん…不倫の末に出ていくなんて…」


父は無言で二郎を見ていた。


「葵…、どうしてこうなったんだ?」


妹の葵は制服姿から違う姿に変わっていた。


ブーツを履き、紅いタンクトップ姿の紅い覆面レスラー。


妹はマスク越しに二郎を見ていた。


「そして、母さん。」


二郎は母を見た。


そこには首を吊った母親が宙にぶら下がっていた。


「ゴメン。みんな好き勝手して。」


母は濁った眼で二郎の方を見ていた。


「現実はつらい。でも思い出は逃げ込む場所じゃないんだ!」


二郎が叫ぶと眩しい光に包まれた。




二郎が目を覚ますと狭い暗闇の中で横たわっている状態で目が覚めた。


「う…ん?ここは?」


二郎は周囲を見るが暗過ぎて何も見えなかった。


「これ…動くぞ。あ!」


二郎は天井を押すと思いのほか軽く簡単に宙を舞った。


微かに光るホールの中で二郎は自分が石棺に寝かされていることに気が付いた。


「おいおい、まだ死んでねえよ。」


二郎が石棺から出ると予想していないものを見た。


そこには二郎に対して膝を着く多くの死者の群れだった。


「こ、これは・・・?」


二郎の呟きに最前列にいたローブを纏った半分白骨化した男が答えた。


「我々は夢と現実の境界線が曖昧になってしまった者。生きているのか死んでいるのか、夢なのか現実なのか分からなくなり、この地で夢の終わりを待っていた。」


男が顔をあげると目の部分は青く光っていた。


「夢と現実、生と死。相反する我らは遂に王を得た。この王が我らの夢を終わらせてくれるに違いない!」


「「「「オオオオオオーーー!!!」」」


後ろで膝をついていた骸骨達も声を上げた。


「えっと?どうゆう事?」


二郎は困惑しながらローブの男に訪ねた。


「砕けた言い方しますと、神に掛けられた呪『終わりなき平穏』によって肉体は死んでしまったが、魂は生きている状態の我らを救ってほしい。この施設で死んだ者に掛けられた呪から生還した唯一の、長い数千年…あるいは万を超える年月で初めての生還だ。どうか助けてほしい。」


男は青く光る眼をより光らせながら二郎に哀願した。


「…自称神を名乗る集団の調査をしている。そのついでで良ければ調査するが?」


「ああ、かまいません。…これをお受け取りください。」


男は懐から青い宝石の付いた指輪を取り出し二郎に渡した。


「これは?」


二郎は指に指輪を通すとサイズの違った輪が小さくなり二郎の指のサイズピッタリになった。


「それは『召屍の指輪』。我らを召喚することができます。」


「ほほう、それは凄い。見た限りだと、300人くらい?」


二郎は周囲を見渡しおおよその人数を言った。


「いえ、他の地にも眠る同胞も呼べるので数は正確な数は判りませんが万を超えるでしょう。其れでは我らは再び眠りにつきます。」


そういうと骸骨達はそれぞれの棺に入って行った。


「あ、まって。あなたの名前を聞かせてほしい。」


ローブの男は棺の中から顔をのぞかせて答えた。


「私はクレイバル。それでは再び会える日を願って…」


クレイバルの棺がゆっくりと閉じられ周囲には物音一つしない寂しい地下墓地に姿を変えた。


「…帰るか。」


二郎が扉の近くまで来ると天井に黒い魔法陣が扉側からの死角に設置されていた。


「これが悪夢の原因か…。」


二郎は魔法陣の周囲を大きく迂回しながら地上への道を進んだ。


(ん?あの骸骨に女がいたんじゃないのか?…全裸だったよな。」


二郎の心の声はいつしか声に出ていた。




二郎が王家墓所の入口から出ると太陽は高い位置にあった。


「ジロウ!」


イリスが笑顔で駆け寄ってきた。


「イリス、会いたかったヴぉ!」


イリスは二郎に飛び膝蹴りを放った。


「な…なぜ?」


「ジロウ!アメン王から聞いたわよ!私以外とエッチなことしちゃダメなんだからね!!」


二郎はイリスの後ろを見ると憔悴しきったアメン王が地面に正座し、オジは顔を腫らしながら倒れていた。


エリーナはアルミを後ろから羽交い絞めしながらオジと距離を取っていた。


そして、アルミの手には金属製のグローブが嵌められていた。


「えっと、イリスさん。…ごめんなさい。」


二郎は土下座をして謝った。


「本当にダメなんだからね。フランさんみたいな美人に迫られても断ってよね!」


「はい、まったくもってその通りでございます。」


「それじゃあ、約束して?」


二郎は顔を上げた。


「わかりました。俺は死が2人を引き離すまでイリスを生涯愛し続けます。」


「…うん」


イリスは顔を赤くしながら返事をした。


「ジロウ、そろそろ我らを助けてくれんか?」


アメン王の体力は限界らしく座っていながらふらふらしていた。


「あの、アメン王は解放してくれませんか?」


二郎は女性陣に訪ねるとアルミからものすごい目で睨まれた。


「フン!アメン王が変なこと誘わなければオジは普通だったのに!」


アルミがアメン王を睨むとアメン王は気迫に負けアルミから視線を逸らした。


「…それで、アメン王。一応調査報告したいんですけど。」


二郎は立ち上がりアメン王の前に移動すると彼の目の前に腰を落とした。


「ジロウよ。この状況で何を言っているんだ?我の危機だぞ?」


「まあ、『それ』は『それ』として楽しむんでしょう?」


「ああ、もちろんだ。」


アメン王はMの気質も持っていた。


「それでアメン王?これが遺跡で出会った人から受け取った指輪です。」


二郎は自分の指に嵌めてある青い宝石の付いた指輪を見せた。


「これは『召屍の指輪』です。神の呪いで死ぬ事も生きる事も出来なくなった彼らを呼び出すことができます。」


「ふむ、その彼らとはアンデットの類か?」


「はい、俺は彼らを解放する手段を探すように頼まれました。」


「そうか、彼らの意を汲み手伝う心意気は良い。だが、アンデットは人間には恐ろしく感じる。くれぐれも多様せぬようにな。」


「はい。アメン王。」


二郎は頭を下げた。


「――で、助けてくれんか?ジロウ…」


「…ごめんなさい。」





翌日


二郎は一人で謁見の間に来ていた。


二郎はアメン王や大臣の視線を受けながら王の正面までくると立ち止まった。


「アメン王呼んだ?」


二郎のフレンドリーな言葉使いに大臣が吠えた。


「貴様!王に向かってなんて言葉を言うのだ!控えよ!」


顔を赤くし興奮しながら二郎に怒鳴りつけた。


「…お前は何か勘違いをしてないか?俺がアメン王のそばにいるのは義兄弟の契りからだ。それには我ら義兄弟に上も下もないんだ。」


「だが、お前の態度は気に入らん!!膝を付け!頭を下げるんだ!」


「…わかった。『膝を付き』『頭を下げ』ればいいんだな?」


二郎はその場で変身した。


大きな漆黒の鱗を持つ竜になった。


謁見の間ギリギリに納まる巨体は『膝を付き』『頭を下げ』なければ崩壊していただろう。


「グルルルルル!!!!!」


二郎はその大きな顔を大臣に近付けると大臣は小さな悲鳴を上げて倒れた。


「よい!ジロウも控えよ!」


アメン王が2人を制した。


「ジロウ、元の姿に戻ってくれないか?」


アメン王はジロウの竜の姿に威圧感を感じていた。


二郎は頷くとすぐにカウボーイスタイルに戻った。


「ああ、すまんな。ジロウ。それでお主に頼みたい事があるんだ。」


「なんですか?」


「来月、各国代表の騎士が技を競い合う剣術大会があるのを知っているか?」


「いや、はじめて聞きました。」


「そうか、その大会に参加する騎士の護衛を頼みたい。」


「いいですよ。場所はどこでやるんですか?」


「開催場所は『白都アムル』だ」


「アムル…」


二郎はどこかで聞いたことある地名と感じていたが思い出す事が出来なかった。


「それで今回の大会参加者は騎士団長のクレイムだ。」


大臣とは反対側にいた若い男が1歩前に出て頭を下げた。


「よろしくお願いします。」


「うむ、クレイムは先日騎士団長に任命されたばかりだが、実力は他のものよりも高い。期待しているぞ。」


アメン王はクレイムに言うと彼は膝を付き王に頭を下げた。




二郎はクレイムと共に馬に乗り聖都テーベから白都アムルに向かっていた。


山を幾つか超える必要があるので到着はおよそ18日後になるとクレイムが二郎に告げた。


2人は馬を操りアムルに向かった。


道中は平穏だった。


現れる魔物もワイルドドックやキラーラビットと、弱い魔物しか遭遇しなかった。


無駄な消耗を避け馬を走らせることで戦闘を回避した2人はアムルまであと2日の場所に辿り着いた。



深夜


街道の外れのキャンプ地で睡眠を取っていた2人は何者かの接近する気配で目が覚めた。


「…クライム、敵だと思う?」


「で、しょうね。毎年何組かの騎士は何者かに襲われ出場を辞退していますからね。」


クライムは素早く装備を整えると立ち上がった。


「そっか。んじゃあ、捕まえて黒幕を吐かせえるか?」


二郎も立ち上がり腰から銃を抜いた。


「いえ、危険な事はやめておきましょう。ここは退けるだけで十分ですね。」


「了解。さっさと終わらせるか!」


二郎は茂みに向かって3発の銃弾を放った。


茂みの中から小さな悲鳴が聞こえ黒装束の人物が茂みから現われ前のめりに倒れた。


「…見えたんですか?」


クライムは二郎が的確に敵のいる場所に向かって放ったことに驚いていた。


「…ゴメン、適当に撃ったら当たっちゃった。」


「…」


「さ、さあ、次だ、次!」


二郎は周囲を警戒すると視界の右端から何か飛来する物体を確認できた。


二郎は無意識にその飛んでくるものを右手でつかんだ。


「これは…、矢?」


「凄いな、飛んでくる黒い矢を掴むなんて、なかなかできないぞ。」


「そうかな?」


「そうです、よっと!」


クライムは飛んでくる矢を剣で弾いた。


「…賊は狙撃だけで我らを倒そうとしているかもしれません。ここは馬に乗り逃げるのが一番かと。」


「…あいつらも馬鹿じゃない。きっと馬に乗った瞬間に狙われるだろう。…それに、何度も騎士を倒しているなら幾つかの策を用いているはず。」


「そうでしょうか?」


「ああ、相手の出方が分らない以上、クライムの安全を第一に行動する。」


そういうと二郎はポケットからダイナマイトを取り出すと矢が飛んできた方向にいくつも放り投げた。


一瞬を置いて連続で爆発するダイナマイトの爆発音の中に幾つかの悲鳴を聞きとれた。


「…ジロウさん。これはあまりにも酷くないですか?」


「そうか?これならココからでも安全に相手の戦意を挫くことができる。そう思わない?」


二郎は言葉を言いながらも何度もダイナマイトを放り投げた。


「確かに安全ですけど…」


不満を言うクライムの言葉はダイナマイトの音で後半は聞き取れなかった。



「調査、終わったよ。」


二郎がダイナマイトで変化した地形を調べ終わりクライムに近づいた。


「予想通り…肉片しかなかった。」


「…そう、思います。」


「そろそろ夜明けだから先を急ごうか?」


「そうですね。馬なら明日にでも到着できるでしょう。」


「あー、馬なんだが…賊の矢でダメになってた。」


「…そうですか。仕方ありませんね。歩いて行きましょう。」


「おっと、それなら俺に良い考えがある。」


そう言うと二郎は変身した。


彼は馬になった。


ただ、通常の馬と違い8本の足のある馬だった。


スレイプニル、オーディーンの愛馬で最も優れた馬で非常に早く走れたと言われている。


「これは…」


驚くクレイムに二郎は首を振って乗るように促した。


「あ。今馬具を準備します。」


クレイムは死んだ馬から馬具を外し二郎につけ直すと彼の背に跨った。


「ヒヒーン!!」


二郎は大きく鳴くと白都に向かって走り出した。


「は、早すぎですよ!」


クレイムは二郎の背中で必死になってしがみ付いていた。


二郎の神速でクレイムは夕方にアムルに着くことが出来た。


ただ、彼は馬の上でぐったりとしていた。


「…もう、コリゴリだ…」


二度と二郎の背に乗らないと誓ったクレイムだった。


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