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此岸  作者: 満腹太
14/16

13

二郎が女官と関係を持った翌日、遅めの朝食を部屋で取った二郎はアメン王に呼び出された。


謁見の間に入ると懐かしい顔があった。


「ジロウ!」


「イリス!それにみんなも!!」


久しぶりに見た西のそよ風のメンバーは、随分と大人っぽくなっていた。


「…もしかして、リリーか?」


二郎は見覚えのない弓を装備した軽鎧の女の子を見て驚いた。


幼かった姿から少女の姿に成長し、後数年も経てばストライクゾーンだなと二郎は思った。


「そうよ、私も西のそよ風に入ったの。エリーナ姉さんから弓を教わったわ。」


「そうか、偉いな。」


ぐりぐりと少し強めに二郎は頭を撫でた。


「もう、子供じゃないんだから辞めてよ。」


嬉しそうにリリーは文句を言った。


「…ジロウ…」


イリスが二郎に駆け寄った。


二郎は腕を広げてイリスに抱きつこうとした…が、


「浮気者!!」


イリスの蹴りが二郎の急所を捉えた。


「ふおおおお!!!!」


二郎は前かがみになりながらも、倒れないようになんとか堪えた。


「昨日の夜、何やってたの!?」


イリスは腰に手を当て怒りの表情で二郎をにらんだ。


「…何って、ナニだよ」


その瞬間二郎の顔面にイリスの膝蹴りが決まった。



「うむ、それではオジ。報告を聞こうか。」


アメン王は玉座に座りながら膝を付き頭を垂れるオジに話しかけた。


「は、古い文献にあった通りドリートの街の地下には遺跡がありました。そこで発見した物をいくつか持ってまいりました。」


オジが言うと兵士が台車に乗せた物をアメン王の目の前に持って行った。


「ふむ、これはなんだ?」


アメン王は台車の上にあった2つの拳大の青い玉を手に取って見つめた。


「それは遺跡で壁に埋め込まれていた光輝く玉です。」


アメン王は暫く眺めていたが興味を失うと幾つかの品物をオジに尋ねた。


「ふむ、やはり文献通りに遺跡があるのだな。ジロウ、行ってくれるか?」


「え?俺ですか?」


急に話を振られた二郎は驚きの声を上げた。


二郎の立ち位置はアメン王の一段下の階段に立っていたので、西のそよ風の女性陣の胸元を凝視していた二郎は今までの話を聞いていなかった。


「話を聞いていなかったのか?」


「途中まで聞いてました。ドリートの地下に探検ですね。」


「そうだ。地下に行き、魔物への対抗手段を得るのだ。」


「でも、俺なんかが行って分かりますかね?」


「うむ、ジロウも我と同じ存在。ならば何かが見つかるかもしれない。行ってくれるか?」


アメン王は二郎の眼を真直ぐに見つめた。


「…はぁ、分りました。ちょっくら行ってきますよ。」


二郎はアメン王に頭を下げると謁見の間を後にした。


暫く歩くと後ろから声を掛けられた。


「ジロウ!」


それはオジを先頭にした西のそよ風の面々だった。


「ん、どうした?」


「ああ、俺たちも一緒に行くことになった。」


「そうか、それなら楽しい旅になりそうだな。」


「ああ、所でジロウ。アメン王と何かあったのか?やけに親しくないか?」


オジの質問は最もだった。


「ああ、ちょっと色々あってな。詳しくは言えないが、仲良くなった。」


アメン王は昨日深夜に二郎の話を聞こうと訪れたが、二郎は女官とベットにインしていた為、部屋を後にした。


が、他の女官を連れ二郎の部屋に入って行った。


2対2の複数プレイ。二郎とアメン王は夜の趣味は一緒だった。


その後、体力の限界で倒れた女官を余所に全裸の男2人が向いあい、それぞれの秘密を共有し義兄弟ではなく、穴兄弟の契りを交わし死ぬ時は穴に入れながらと約束した。


そんな事、誰にも言えるはずはなかった…


「ふーん、まあ、いいや。それで何時頃出発するんだ?」


「んー、サッサと行って終わらせようぜ。」


「え、でもどうやって?向こうまでは20日はかかるぞ。」


オジはドリートに直接向かうには険しい山を越え大きな湖を迂回するルートが一番早いと考えていた。


「大丈夫。行く準備したら中庭に集まって。」


そう言うと二郎は部屋に向かった。


西のそよ風もそれぞれ準備の為に思い思いの場所にむかった。


それから1時間ほどで全員が中庭に集まった。


「全員そろった?準備大丈夫?」


「ああ、大丈夫だけど…」


「それじゃ、説明。今から空飛ぶドラゴンになります。皆はその背中にこのロープで背中の突起と体を固定してね。んじゃ、行くよ」


「おい、どういう事…」


オジの言葉は続かなかった。


彼の目の前には二郎ではなく、とても大きなドラゴンが現れたからだった。


「「「「「…」」」」」


西のそよ風のメンバーは硬直した。


ドラゴンは背中に乗るように背を屈め、乗りやすいようにしたが誰も動かなかった。


二郎は人間に姿を戻した。


「ほら、大丈夫?ドラゴンになるって言ったでしょ?その背中に乗って体を固定して。」


二郎はオジ達が頷くのを見てもう一度ドラゴンになった。


背を屈めると西のそよ風のメンバーは恐る恐るだが、ドラゴンの背に乗り体を固定した。


二郎は全員が固定し終わったのを確かめると大空に駆けだした。



「うー、もう二度と乗らない…」


「うん…」


「…」


「オエェェェ…」


オジの言葉にうなずくアルミと無言のエリーナ。リリーはその後ろで嘔吐しイリスは大空で気を失った。


「でも、半日で着いたよな。」


二郎が居る場所はドリートの門から4キロほど離れた場所だった。


「ゆっくり歩きながら行こうか。」


二郎はイリスを抱きかかえ街道に出た。そのままドリートに向かって歩きだした。


「それで、ジロウ。あのドラゴンは何だ?」


オジは二郎を警戒しながら聞いた。


「ん?あれは俺の変身能力の1つだ。他にも大鷲だったり馬にもなれる。」


「…お前は何だ?魔族か?」


「魔族だったら今頃皆殺しになってるだろ?俺は変身能力を持っているだけだ。昔と何にも変わってないさ。だから聖都の宮殿の女湯の絶景の覗きスポットを教えてやるさ。」


「そうか、同士ジロウ。」


「それと、アメン王は俺と義兄弟の契りを結んだんだ。オジもアメン王と話をして、同じ時間を過ごせばきっと結びたくなるさ。」


二郎はオジに黒い笑みを向けた。


「そうか、それは楽しみだ。」


「だろう?聖都に戻ったら紹介しよう。」


「ああ、頼む。」


オジは二郎に頭を下げた。


「何、男だけで話してるのよ。」


二郎とオジの後ろからアルミが声を上げた。


「ああ、ジロウは変身できても昔のままって事が分った。変な警戒は要らないからな。」


オジは顔をアルミに向けて言った。


「そう、オジが言うならそうするわ。ってリリー!」


リリーは街道の隅で蹲り嘔吐していた。


エリーナも顔色が青白くリリーの面倒をみる余裕は無かった。


イリスを背負った二郎は4人を引き連れドリートの町に入った。


「オジ、これからどうする?」


「ああ、明日の朝から調査しよう。今日は宿で体調を整えようと思う。」


「うん、それがいいわね…」


オジの言葉にリリーが青い顔で同意した。


「んで、どこの宿がお勧め?」


ドリートの街が初めてな二郎はオジに尋ねた。


「ああ、こっちだ。」


オジを先頭にそれぞれが歩きだした。




「さすがにエリーナとリリーはダウンか。」


食事に現れなかった2人は部屋で休んでいた。


「ええ、仕方ないわよね。」


アルミは白いローブを脱ぎ、胸を強調する服装をしていた。


二郎はアルミを見るたびに胸に視線が行っていた。


「なに見てるの」


二郎の隣に座っていたイリスが二郎の鼻の下が伸びる毎に足を踏んでいた。


食事中は別行動時に何をしていたかと話題になった。


「へぇー、オジはAランクになったのか。凄いな。」


「へへ、まあな。リリー以外は全員ランクBだし、依頼達成率も高いんだ。俺たちも有名になったぜ。」


オジはコップの中の酒を一気に飲み干した。


「それで、アルミとも結婚したしな。俺は今、幸せだぞ。」


「そうね。あとはお金を貯めて、冒険者を引退して何所かで静かに暮らしていきたいわね。」


「ああ、そうだな。」


オジとアルミは見つめあい2人の世界に入って行った。


「それで、ジロウは何してたの?」


イリスが二郎に訪ねた。


「んー、アメン王から依頼された内容は聞いた?」


「ええ、魔物と一緒に現れる魔族の調査よね?」


「ああ、北の大陸に行った俺は現地の冒険者と知り合って色々調査した結果、北の大陸にも同じように魔物と一緒に魔族が現れるらしい。南の大陸で魔族と呼ばれる存在は、自らを『神』と名乗っていた。」


「神?自分達を神様って言ってたの?」


「ああ、それで色々あって神にしがみ付いて転移したんだが、気がついたら拷問を受けて、隙を見て脱出したんだ。そこの地下には魔物の牧場があったんだ。それから、逃げ場の無い部屋に追いつめられて部屋の装置を操作したら光に包まれて気がついたら森の中にいたんだ。」


「なんだかよくわからないわね。」


「ああ、当事者の俺でさえ状況に流されて行くしかなかったからな。調査する余裕はなかったよ。」


「そう、…ねえ、部屋で話せない?」


「ん、いいよ。」


二郎が正面にいるオジとアルミを見るとすでに2人はそこに居なかった。


「あれ?2人は?」


「部屋に行ったわよ。私たちも行きましょう。」


「ああ」


二郎はイリスに手を引かれ二郎の部屋に向かった。


二郎が扉を開けて部屋に入るとイリスが抱きついてきた。


「…会いたかった。2年…音沙汰なく生きているのかもわからなくて、本当に会いたかった…」


「イリス…」


二郎もイリスを抱きしめるっとイリスは顔を上げた。


そして2人の唇が合わさった。


「…ジロウ、最後まで…して…」


イリスは消えそうな声で言った。


「…イリス、俺が何者なのか伝えたい。それでも受け止めてくれるなら…」


そう言うと二郎はイリスから離れベットに腰を掛けた。


イリスも二郎の隣に座ると二郎の腕を取り手を握った。


「俺は…、俺は、異世界から来たんだ。」


「異世界?」


「ああ、そこで一度死んだ。死んだ魂はどれだけ善い行をしたか、どれだけ悪い行いをしたかで天国に行くか、地獄に行くか決まるんだ。」


「ええ、その考えは同じね。」


「ああ、それで俺は何者かの手によってその仕組みが上手く作動せずに善行も悪行もしていないと状態だと言われたんだ。だから俺の行く場所が天国にも地獄にもどこにもなかった。」


「…」


「それで俺はもう一度チャンスを貰った。この世界に来る時に変身能力と外的要因では死なない体になったんだ。」


「…」


「アメン王も同じ存在だ。彼は俺と違う能力をもらったらしいが詳しくは知らない。…バケモノの俺だけど、それでもイリスの事は大事に思っている。」


「…はぁ、ジロウはバカね。何を言うかと思えば、異世界とかどうでもいい事ばかり。てっきりジロウは女だ~。って来るのかと思ったわよ。私は、ジロウが好きなの。変身出来るからって何か問題あるの?」


「それは…」


「言い訳はいらないわ。」


イリスは二郎を押し倒し馬乗りになると二郎の唇に濃厚なキスをした。


その後、2人はお互いを愛し合った。二郎は今までにない心の充実感を得ることができた。


今まで何人もの女を抱いたが、このような充実感は一度もなかった。



翌日


「ここが遺跡への入口だ。」


二郎たちが着いたのは古い共同地下墓地への入口だった。


「それじゃ、行くわよ。ライト!」


アルミは照明魔法を唱えると墓地への扉を開けた。


アルミを先頭にオジ、二郎、エリーナ、リリー、イリスの順で扉に入っていった。


棺桶が並ぶ洞窟内を進むと壊された壁と下へと続く階段があった。


「ここから遺跡になる。…どうやら俺達以外にも誰か入ったようだな。」


オジが地面を見て指刺すとそこには大小さまざまな靴後があった。


「ええ、中に入る形跡はあるけど、外に向う靴後は無いわね。中で全滅か、私たちの少し前に入ったか…ね。」


エリーナが靴後を調べながら言った。


「ここで推測しても仕方ないわ。行けば判るわよ。」


アルミは階段を下りて行ってしまった。


二郎達もアルミの後を付いて降りて行った。


階段を下りて進むと半開きの金属製の扉があった。


オジは静かに扉を開けると奇麗に切り取られた石壁の部屋に繋がっていた。


石壁には等間隔で発光する球体が埋め困られ部屋全体は明るかった。


「この部屋を抜けると長い通路がある。その先には巨大ゴーレムがいて先に進めなかったんだ。」


「巨大ゴーレム?」


「ああ、そいつを無視して先に進もうとしたけど扉が開かなくてゴーレムの攻撃を回避しながら戻ってきたんだ。」


「なるほど。俺も入れてもう一度挑戦するってわけか。楽しそうだな。」


「ほらさっさと行くわよ。」


アルミに先を促され二郎達は部屋を出て通路を歩いた。


200メートルほど進むと金属製の扉があった。


二郎が扉を開けると中に入ると、巨大な甲冑を着込んだ青銅のゴーレムが暴れていた。


「うわあああ!!」


「くそくそくそ!!!」


「助けてくれー!」


二郎が見たのは壁に追いつめられた3人の男。


地面に転がっているのが5人いた。


ゴーレムは右手を振り上げるとそのまま振り下ろした。


1人はゴーレムの右手に押し潰され2人は横に飛んで攻撃を避けることが出来た。


「!た、助けてくれ!」


二郎達に気がついた男が駆け寄ってくるが、後ろの男は走る速度が遅くゴーレムに捕まると壁に向って投げられると壁のシミになった。


「ひいぃぃぃぃ!!」


男はゴーレムに捕まりそうになりながらも二郎達に向かって走ってきた


「オジ!俺に任せろ!」


西のそよ風のメンバーが構えるよりも早く二郎が一歩先にでた。


「変身!!」


二郎が一瞬光輝いた。


次の瞬間、二郎は氷の魔人に変身した。



氷の魔人


北米の北海岸沿いに住む人々の伝承にある氷の魔人。


南方から攻めてきた部族を追い払う為に部族の若い娘が生贄になり呼び出した魔人だった。


その魔人は攻めてきた部族も呼び出した部族も全てを凍らせ氷の世界を作った。



二郎は近づいてくるゴーレムに向かって両手をかざした。


「アイスビーム!」


二郎の両手から触れるもの全てが凍るビームを出した。


ゴーレムは避ける暇もなく一瞬で全身が氷ると二郎が投げた小石の衝撃でバラバラに砕け散った。


「す、すげぇ…」


「信じられないわ。」


オジ達は驚きの声を上げた。


カウボーイ姿に戻した二郎は生き残った男を見た。


何所かで見覚えのある顔だった。


「へっへっへ、助かったぜ。俺様は怪力のアッシュ。まさかこんな所にデカイゴーレムがいるなんて考えもしなかったぜ。」


アッシュはオジ達に礼を言った。


「それで、この後はどうするんだ?パーティーは全滅だな。上に戻るか?」


オジはアッシュに訪ねた。


「へっへっへ、ここまで来たら俺様も一緒に行くぜ。もうすぐランクBだから心強いだろう。」


アッシュは胸を張って言っているが、リリー以外は全員Bランク、オジはAランクだった。


「ん、お前は確か…」


アッシュはイリスの顔を見て何かを思い出そうとした。


「オジ!先に行くぞ!」


二郎が大きな声で叫んだ。


「ジロウ!この先の扉が開かないんだ。ノブも無いし、何か仕掛けがあるのかも…」


オジが指さした先には扉があった。


「えーっと、これは…。あー、引き戸か。」


二郎は扉を横にスライドすると扉は壁の中に消えて行った。


「開いた」


二郎は振り返りオジを見ると落ち込んでいた


「あ、あの時の俺って…」


二郎は開いた扉の奥へ歩いて行った。


細い通路を抜けると大きなホールに出た。


奥まで続く石の棺桶の列。


壁には多くの石の棺桶が立てかけられていた。


棺桶の数は300を超えていた。


「ここは…」


後ろからイリスの声が聞こえた。


「墓地だな。古代の墓地の続きに今の墓地を作ったんだろうな。」


二郎は棺桶が並ぶホールを進んで行くと後ろからオジ達の声が聞こえた


「な、何だこれ?」


「わからないわ。」


「棺桶って事は、墓場かしら?」


「ねぇ、帰ろうよー。」


「ガハハハ、棺桶の中にはお宝があるかもな。」


上からオジ、アルミ、エリーナ、リリー、アッシュが言った。


二郎は後ろの会話を無視しながら進むと奥の一段高いところに一際豪華な彫刻が施された棺桶があった。


二郎とイリスが調べようと棺桶に近づくと勢いよく棺桶の蓋が開いた。


中からボロボロのローブを纏ったミイラ化した死体が宙に浮かび上がり持っていた杖を掲げた。


杖から怪しい紫色の光がホールを照らすと今まで動くことのなかった周囲の棺桶の蓋がゆっくり開いた。


中からはミイラ化した死体や骸骨がそれぞれに剣や斧を持ち棺桶から這い出てきた。


「くそ!これはマズイ!!」


二郎は叫ぶとイリスの手を引き入口に戻ろうとした。


「ジロウ!前!!」


イリスが叫んだ。


二郎たちの前には多くのミイラ、骸骨が2人の行く手を遮った。


二郎は右手に拳銃を持ち前進しながら前方の敵を打ち抜いて行った。


イリスは後方と横からくるミイラ達に炎系の魔法を放ち接近させないでいた。


「くそ!これじゃあキリがない!」


二郎が叫んだとき、前方のミイラ達の隙間からオジの顔が見えた。


「イリス!もうすぐだ!」


「わかったわ!」


二郎が数発の銃弾を撃つとあっさりと入口で待っていたオジ達と合流できた。


「ジロウ!戻るぞ!」


「ああ!殿は俺が!」


「わかった!先にいくぞ!」


オジに連れられイリスが入口の通路を先に進んだ。


二郎は左ポケットから赤い筒の着火済みのダイナマイトを3本取り出すとそれぞれを違う方向に投げた。


大きな爆発音が3つ続きその爆風でミイラ達はバランスを崩し倒れた。


二郎はその隙に後ろの通路を行こうと振り向くと、そこには先ほど死んだ7人の冒険者が二郎を待ち構えていた。


「くそ!挟まれたか!」


「ジロウ!!」


通路の先からオジが戻ってきた。


「先に行け!デカイのを放つ!巻き込むぞ!!」


二郎はオジに向かって叫んだ!


「わ、わかった!外で会おう!!」


オジは直ぐにその場を離れた。


「くそ!こいつめ!素直に死んどけ!」


二郎は迫りくる刃を銃底で受け止め1体ずつ確実に仕留めて行った。


二郎の背後からは7人の冒険者は通路を塞ぐだけで襲って来なかった。


二郎はダイナマイトを投げ周囲を一掃した


しかし、ミイラは奥からあふれるように現れていた。


「後は…」


二郎はホールの中央で浮かんでいるローブのミイラを見た。


目が紅く光り、言葉にならない言葉を言うミイラは明らかに笑っていた。


「その余裕もこれまでだ!変身!!」


二郎は炎の精霊に変身すると自分の中の魔力を高めた。


赤い炎を出していた二郎の体は次第に青い炎を出し暫くすると白い炎に変わった。


「ククク、これで終わりだ!!」


二郎は体内の魔力を爆発させると二郎を中心に超高温の熱波が二郎を中心に広がった。


二郎の周囲にいたミイラは一瞬で灰になり、二郎の背後の冒険者も跡形もなく蒸発した。


ローブを纏ったミイラは一瞬、逃げる素振りを見せたが熱波の速度の前には消え去ることしか出来なかった。


「…これで片付いたか…」


二郎はカウボーイ姿に戻るとオジ達が向かった外に歩いて行った。


暫く歩くとオジ達が歩いて来るのが見えた。


「皆、無事だったか。」


「ああ、俺が外に出たら熱風が来たぞ。上の棺桶は全て燃え尽きるくらいのな。」


「ああ、ゴメン。やり過ぎた。」


「ああ、あいつらは片付いたんだろ?調査を続けようぜ。」


そう言うとオジは奥に歩いて行った。


「ジロウ、無茶しないで…」


イリスは二郎に抱きつきながら涙目で訴えた。


「ああ、わかった。だけど、イリスを護るためなら何でもするさ。」


「ジロウ…」


「イリス…」


二人の唇が触れ合おうとしたとき、


「はいはい、イリス姉もこんな所でイチャイチャしないの。帰ってからしてよね。」


リリーに邪魔された。



二郎達は再び棺桶が並ぶホールに辿り着いた。


豪華な彫刻が施された棺桶の下には隠し通路があった。


通路を進むが、途中で土砂崩れで通路は塞がれていた。


「ここまでか。何もなかったな。」


オジが言うと全員が頷いた。


「なあオジ、ここ以外にも遺跡はあるのか?」


「多分な。古い文献や伝承を元に探してもらっているから次の発見は何時になることやら。」


「ガハハハハ、次こそはお宝を見つけてやるぜ!」


アッシュが笑いながら言った。


「…オジ、こいつはどうする?」


「…どうしようか?宮殿には連れていけないだろうな…」


脳筋のアッシュには宮廷作法を教えるのは難しいとオジは思った。



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