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あの星を追いかけて  作者: 遠野さつき
第1部 1章・星鳥燈矢
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星鳥燈矢(8)

 星崎の声と共に、発生した星々がものすごい速さで押し寄せてきた。まるで光の洪水だ。その眩しさに思わず目が眩みそうになる。


「目ぇ閉じるなよ星鳥! 当たったら洒落じゃ済まへんぞ!」

「はい!」


 あちこちから星が網に引っかかる音が絶え間なく聞こえてくる。それはまるで捕獲網に追い込まれた魚が、逃げ場を求めて一斉に跳ねているような音だった。


「よっしゃ、よっしゃ、大漁や!」


 パシャパシャと響く音の合間から星崎の歓喜の声が聞こえる。ネットの真後ろに陣取った彼は、そこからこぼれ落ちた星を的確に拾っている。星間も同様だ。


 しかし、これだけ多くの星が飛来しているというのに、星鳥はやはり上手く動けなかった。どれだけ星取り網を振るっても、そのすぐ横をすり抜けていく。


 星鳥が取りこぼした星を後方の採取員が取るのが見えた。その笑顔がまるで星鳥を嘲笑っているように思えて、気持ちが重く沈む。


 ――こんなにあるのに、何で取れないんだ。


 星取り網を下ろして思わず項垂れた星鳥の耳に、星崎の怒声が届く。


「おい、星鳥! 前見ろ前!」


 はっと顔を上げると、急に速度を上げた星がまっすぐこちらに向かってくるところだった。


 たとえ採取スーツを着ているとはいえ、もろにぶつかればタダでは済まない。もし奇跡が起きて怪我を免れたとしても、衝撃でデッキから転がり落ちれば死亡もあり得るのだ。


 咄嗟に目を伏せた瞬間、体を抱き締められる感触と共に低いうめき声が聞こえた。


 目を開けると星鳥を抱えた星崎が、体をくの字にして必死に星の衝撃に耐えているところだった。


「先輩!」


 悲鳴を上げる星鳥には目をくれず、星崎は己の体に食い込む星をグローブで掴むと、後方の採取業者のネットへ向かって放り投げた。


「星崎! 大丈夫か!」


 顔色を変えた星間が文字通り飛んできた。就職して四ヶ月目に入ったが、星間の大声は初めて聞いた。


「大丈夫や! スーツは破損してへん! 直撃前にスラスターを噴射して衝撃を殺したから痛みも大したことない! 採取続行や!」


 スーツの破損具合をチェックする星間に怒鳴り返すも、その顔は苦痛に歪んでいる。ひょっとしたら肋が一、二本折れているかもしれない。


 目の前で起きた事故に報道陣のフラッシュが激しく瞬き、医者や警官が色めき立つ。


「頼む、星間。地上に戻ったら必ず病院に行くから、ここにいさせてくれ。こんな一世一代のチャンス逃すわけにはいかへんのや」


 星崎の震える指が広い肩を掴む。


 星間は星崎の目をしばし見つめ、小さく頷いた。


「……絶対に無理はしないでよ。ダメだと思ったら引きずってでも船に押し込むからね」


 星崎が頷き返したのを見て、星間は両腕で大きく丸を作ると、今にも駆けつけてきそうな医者に問題なしと知らせた。そのまま肩越しに星崎を一瞥して所定の位置に戻る。星崎も腰のハーネスから伸びたロープを手繰り寄せて落とした星取り網を左手に収めた。


「先輩……俺、俺……」


 震える声で呟くと、星崎はギッと星鳥を睨みつけた。


「何、よそ見しとんねん、このアホウ! 死にたいんか! もっとしゃんとせえや!」


 右手で胸ぐらを掴み上げられ、これでもかというぐらい揺すられる。ヘルメットの中の顔は怒りで真っ赤に染まっていた。


 ――ああ、俺、やっぱり駄目だ。


 涙で視界が滲んだ時、周囲からどよめきが起こった。観光船の観覧客たちが揃って西を指している。星の予測軌道外に控えていた報道陣も一斉にカメラを向けた。


 尋常でない様子に星崎も星鳥を揺する手を止め、彼らの視線の先を追う。


「……何や、あれは」

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