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あの星を追いかけて  作者: 遠野さつき
第1部 2章・星崎直輝
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星崎直輝(4)

 今日も今日とて星を追う。


 ここしばらく大雨が続いて採取船を飛ばせなかったので、納品の遅れを取り戻すために星間も含めた三人体制で回していた。おかげで受注分は何とか確保できそうだ。


「あー! また取り逃した! 最近、順調だと思ったのに!」

「落ち着いて。人間なんだから調子の悪い時はあるよ。大事なのは常に冷静でいることだよ」


 星間がいると楽でいい。隣で星鳥が右往左往しているのを眺めながら、星崎は鈴宮の言葉を思い返していた。再会を果たしてから一週間。返答まで時間をもらったものの、あまり引き伸ばすわけにはいかない。


 とはいえ、自分がどうしたいのか決めかねていた。


 中里エネルギーサービスはいい会社だ。仕事はきついし朝も早いが、給料はきちんともらえ、それなりにやりがいもある。何より人間関係で嫌な思いをしたことがない。


 大先輩の星野はあっけらかんとした性格で常に職場を明るくしてくれるし、同期の星間は何を考えているのかわからない時もあるが、基本的に優しくて気配り上手だ。星鳥もやたら手はかかるものの、何だかんだ言って後輩は可愛い。


 そして中里はどことなく父親に雰囲気が似ていた。差し伸ばされた手を素直に取ったのも無意識にそれを感じたのかもしれない。


 なら、このまま働き続けていればいいのではないか――そう結論づけようとする度、もう一人の自分が待ったをかけてくる。諦めていた夢にもう一度手が届くかもしれないのに、そのチャンスを逃していいのかと。


「星鳥は反射神経はいいのに、勘だけで動くから損してるなあ。体じゃなくて、もっと頭で考える努力をしな? 星の軌道を読むのは採取員の基本だよ?」

「うっ……。咄嗟に体が動いちゃうんですよね」

「今はまだ新人だからいいけど、いつか後輩が入ってきたらどうするの? 質問されても、わかんないじゃ示しつかないでしょ」


 星間がお説教モードになる。普段は穏やかなのだが、こうしてたまにスイッチが入る。それだけ期待をかけている証拠なのだと思えるにはまだ経験が足りないだろう。


 星間の熱意に押された星鳥が助けを求めるようにこちらを見る。


「で、でも、星崎先輩がいたら教えてもらえますもんね!」


 向けられる満面の笑み。星崎のことを一ミリも疑っていない目だ。星鳥は星崎がずっとそばにいてくれると信じている。一人前になるまで見捨てたりしないと。


 胸の奥を、ずくりと痛みが走った。


 星崎は星鳥が思うような人間ではない。星崎が星鳥と同じ立場だったなら、巨大星に立ち向かおうとは思わなかっただろう。何度踏まれても起き上がることも。


 結局のところ、星崎は利己的な人間なのだ。今もこうして身勝手に夢を追おうかと悩んでいるのに。


「いつまでも俺に甘えんな。成層圏に上がったら、頼りになるのは自分だけや。後輩一人の面倒も見れんと、この先どないすんねん」


 冷たく吐き捨てるような口調に星鳥の目が丸くなった。向かいの星間もだ。


 言ってしまったと思ったが後の祭り。あわあわと狼狽える星鳥をその場に残し、星間がデッキ上を滑るように近づいてきた。ヘルメット越しに星崎の顔を覗き込む。


「どうしたの星崎。調子でも悪い?」

「……別に悪ないわ。そろそろ撤収すんで。納品押しとるし、さっさと配達せな」


 目を逸らしてデッキの回収作業に入る。星間はまだ何か言いたそうだったが、小さくため息をついて星崎に続いた。


 手を動かしつつも、星鳥がチラチラと星崎を伺う。その途方に暮れた表情を見て、胸にまた痛みが走った。

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