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第一幕: 盗賊探求者、闇に目覚める

やあ、君。

この物語は、かつて天に召されたファウストの魂が、次なる者へと受け継がれた後の話だ。

その魂は、善でも悪でもなく、ただ探求を渇望する――少年の中で静かに灯った。

君はこれから、その少年が世界をどう読み、何を掴み取ろうとするのか、共に見届けることになる。

貧しさと孤独の街角から始まる冒険――心の準備はいいかい?

やあ、君。来たんだね。

今回の物語は、ファウストが天に召された後の話だ。

彼の壊れた魂は、次の誰かに受け継がれた。

もしかして、君の時代にも彼の魂を持つ者がいるかもしれない。


ボクが誰かって?

ボクは、語り部ファウストさ。

ヨハン・ゲオルク・ファウスト。

君と共に物語を見つめる者であり、君の友だ。


――今、ボクたちがいるところは、中国の「大きくて豊かな都市」の一つ。

その中にある、ものすごく貧乏で、汚くて、不潔で、掃除なんて考えられない地区だ。

病人が吐いたものはそのままで、死体は別の汚れた場所へと運ばれる。

神さまが見たら、一撃で塩に変えたくなるような場所。


そんな場所に――ボクらの新しいファウストがいる。


「ファウスト!」と、年配の女の怒鳴り声がする。

声の方へ歩くと、泥煉瓦の小屋が見えた。

左右にも似たような小屋が並ぶ。藁や瓦の破片が屋根に乗り、

壁には『神は貧しき者を放置』と、この国の文字で落書きされていた。


「ファウスト!もう食べ物がないってのに、アンタって子は恥ずかしくないの?」


女から“ファウスト”と呼ばれた少年は、もともとはアラジンと呼ばれていた。

黒髪とオリーブ色の肌、鋭い目つきに、どこか無邪気な笑み。

だが、父・仕立て屋のムスタファが死んでから、彼は変わった。

まるで悪魔と契約しそうなほど、貪欲に知りたがるようになった。


だから、人々は彼をこう呼ぶ。

――アラジン・ファウストと。


「恥ずかしさ? 誰に恥を感じるというのですか、お母さん。

このような貧困という場所を用意したのは、君ですよ。

俺は――被害者だ」


アラジン・ファウストは、ゆっくりと微笑んだ。

言葉は刃よりも冷たく、よく研がれていた。


「恥を感じるのは、君の方だ」


それが、母の胸に突き刺さる“最後の言葉”だった。


女は顔を真っ青にして、翌朝には死んだ。

病ではなく、息が尽きたように。

何も言い残さず、何も持たず。


そして、少年は完全に一人になった。


――この瞬間、彼の中の“何か”が、静かに目を覚ました。

ボクにはそれが見えた。

魂の奥底に、黒い光が灯ったのを。


ねぇ、君。人は、孤独になる時、

神にすがりつく。


だが――


彼の孤独は、

少年を神から背を向けさせる、ひとつの悪魔だった。



(こうして、第一幕は少年の微笑みと共に閉じる)

少年は母を失い、完全に一人となった。

その孤独の中で、彼の魂に黒い光が灯る。

人は孤独になる時、神にすがる。だが、彼の孤独は、少年を神から背を向けさせる“ひとつの悪魔”だった。

ここから、彼の知と欲の旅が始まる――まだ、序章に過ぎない。

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