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童貞魔王と第四皇女:その4…畑に種蒔きゃ芽が出るもので(4)

「お3人さん、お悩みのようですねぇ…私も話に入れてくださいなぁ」

「「誰!?」」


 3人が見つめる中、茂みから2人の少女が歩み出てきた。

少女達はまるで双子のようにそっくりで、人間で言う10歳ぐらいの外見だった。どちらも金髪を短く切り、刈上げられた(うなじ)が綺麗に見える。


「これはゴメンなさいぃ?私、ロノリー・ノムグラス、ノムグラス共和国の第八王女ですわぁ」

「あ…先日、輿入れされた方ですよね?」

「はいぃ♪」


 ロノリーと名乗った少女は、頬に手を当てて微笑んだ。しかしもう一方の少女は仏頂面のまま、そっぽを向いて口を閉ざしている。

 シルフィアは懐妊パレードの数日後、謁見の間で挨拶をしたロノリーを思い出す。あの時はロノリー以外はフードを被っており、その他の顔は見えなかった。このような双子だとはマクシムからも聞いていない。


「そのロノリーさんは、どうしてこの温室に!?」

「それはぁ…妊婦が裸足で温室に入っていけば、気になるでしょう?」

「あ、はい、その通りです…」

「それはそうと私に妙案がありますのぉ…提案しても宜しいかしらぁ?」

「…えっと…それはどのような話でしょうか?」

「簡単な事ですぅ…皆でマクシム様に抱かれたら宜しいでしょう?」

「「「!」」」


 シルフィアにエフィリ、そして無言のデモイラも息を飲んだ。


「え?いえ、あのですね、私はシルフィアさんにしか興味なくて!」

「わ………私と………マクシムが………赤ちゃん………」


 慌てふためくエフィリと、顔を真っ赤にして目を回すデモイラ。シルフィアはそんな2人を見て冷静になり、少し鼻で笑ってしまった。


「えっと…ロノリーさん…確かにそれが出来れば問題は解決します。2人が妊娠すれば祝賀ムードになるし、私の優位性も減るでしょう……そうすればデモイラさんを正妃、エフィリさんを第二夫人、私が第三夫人と丸く収まるでしょうが……しかしマクシムにその甲斐性がないんです…」

「それはどうしてですのぉ?」

「マクシムは…その…私以外と経験が無いので……処女の相手は厳しいかと……」


 シルフィアの娼館時代の記憶なのだが、様々な事情でたまに処女が身請けられる事があった。かく言うシルフィアもあと2年もすれば娼館デビューする所だったのだ。そういった処女の場合、娼館側は大変に気を使う。何故なら彼女達が交合に悪い印象を持っては、以後の仕事に差し支えるからだ。その為に娼館は馴染みの上手な客にお願いするか、金を払って技量の高い男性を用意するのだ。回数ばかりの猿の様なマクシムでは到底無理な話である。


「それは不思議ですねぇ…シルフィアさんも処女だったんでしょぅ?」

「あの、私は…多少の知識があったので…自分で上に乗りました」

「あらあらあら!まぁまぁまぁ!」


 シルフィアの言葉に小躍りするロノリー、そして何故か羨望の眼差しでシルフィアを見るエフィリとデモイラ。不思議な事にもう一人の少女は耳を塞いでその場にしゃがみ込んでしまった。


「わ、私の事はどうだっていいんです!ようはマクシムに経験が乏しく、処女の相手は無理なんです!」

「う~ん…それなら熟練した者と経験を積めば問題ありませんねぇ?だったら問題解決ですぅ!」

「え?あの、話を聞いてました?」


 シルフィアの言葉にロノリーは微笑むと、自分の親指を立てて舌を這わした。

それまでの少女のような微笑みは消え、まるで歴戦の娼婦の様な笑みが浮かび上がる。


「本当の自己紹介が遅れましたわぁ…私、マチュリー・ノムグラス、国王の元第三夫人で、ロノリーの母ですのぉ…そしてこっちが本物のロノリーですぅ」

「「「嘘!?」」」


 3人は声を揃えて声を上げた。目の前の10歳程度の少女が経産婦には見えなかったのだ。それと同時に全く同じ顔の娘がいる事にも驚く。



「え?だ、第三夫人って!」

「実はぁ…国王をちょっとばかり求め過ぎたら放逐されましてぇ…今はロノリーの付き人兼替え玉として仕事をしてますのぉ。ですから何の問題もありませんわぁ♪」

「け、けど大丈夫ですか?マクシムのは…その、結構大きいですが…」

「それでも赤子の頭よりは小さいでしょう?何の問題もありませんわぁ♪」

「そ、そうですか…」


 シルフィアは説得を諦め、マクシムの相手はマチュリーでも良いように思い始めていた。


「はぁ…けど経験不足ですかぁ…それでは満足できそうにありませんわねぇ…」



 カチンッ


シルフィアの中で何かが切り替わる。


「い、いえ、マクシムも中々のモノですよ?大きさも立派ですし、動きも激しいから大丈夫!」

「あらぁ、ただ激しいだけでは寂しいですわぁ…すぐに終わってしまいそうぅ…」

「た、確かに早いけど、3回目からは長いです!しかも休憩も必要ないぐらいに元気ですから!」

「そうです!シルフィアさんが逃げようとしても離さないんですよ!」

「あらそぅ?期待しないで楽しみにしてるわねぇ?」


 微笑むマチュリーにイライラするシルフィア、その他3人は連れ立って温室を出た。そして一緒にマクシムの執務室へ行き、事情を説明する。


「と言う訳で…やっちゃって、マクシム!」

「委細承知ッ!俺とシルフィアが427回の交合で磨き上げた性技、そして4か月蓄積された精力を、その身で味わうといい!」

「あらぁ…10年も放って置かれた熟女の欲求、簡単に満たせると思ってますのぉ?」

「マクシム!バッコンバッコンにやっちゃいなさい!!」

「応よっ!!」


 6人はすぐに寝室へ移動する。

寝室での雰囲気は交合直前のような甘いものではなく、まるで決闘とそれに立ち会う者たちのような緊張感に満ちていた。そんな空気の中で退室したいと申し出る猛者はおらず、マクシムを応援するシルフィアとエフィリ、真っ赤な顔のデモイラとロノリー、そして全裸で対峙するマクシムとマチュリーの姿があった。


 2時間後


「「参りました」」

「判れば良いですわぁ♪」


 ベッドの上で満面の笑みを浮かべる艶々(つやつや)なマチュリーの前で、シルフィアとマクシムは床に土下座して謝罪した。心なしかマクシムの黒髪に白髪が見て取れ、体格も2割ほど縮んだように感じる。


 マチュリーとマクシムの交合だが、始終マチュリーのペースだった。

交合前に3回、交合して抜かずに5回、その後はマチュリーの性技によって無理矢理に回復させられ、結局マクシムは2時間で18回も放精する事になった。

 シルフィアも娼館で覗いておりある程度の知識はあったのだが、それは客を持て成して笑顔にさせる技術であり、マチュリーのような精力を搾り取って泣かせる技術ではない。シルフィアも知らないような高等技術のオンパレードに、シルフィアは素直に負けを認めるしかなかった。


「…ただ股を開いて、受け入れるだけでは駄目なのね…」

「…俺はこれまで、力任せの交合しかしてこなかったのか…交合とは奥が深い…」

「良いですかぁ?交合とは『交わり合う』と書きますのぉ…『交わる』も『合う』も決して一人では出来ない事なんですよぉ?常に相手の事を考えて、相手を気持ちよくする気遣いが必要なのですぅ。今回は敢えて暴走してみせましたがぁ…いかがでしたぁ?」


 マチュリーが妖艶な微笑みを投げると、マクシムは正座のままガタガタ震え出した。


「い、一方的な交合は暴力です…もう二度と、あんな交合はしたくありません…」

「分かれば良いですわぁ♪自分が楽しむだけでは相手を傷付けてしまうのですぅ、肝に銘じておきなさいなぁ?」

「「わかりました」」


 頭を下げる2人にマチュリーは満足げに微笑むと、ベッドを降りてマクシムの顎に手を当てた。


「ではぁ…ここからが特訓となりますぅ♪私の性技を殿下へ伝授いたしますわぁ♪」

「い、今からだと!?流石に今日は休憩させてもらえないか?」

「殿下の長所は精力ですぅ…だからその精力が枯渇した今こそ、性技を学ぶチャンスなのですわぁ♪」

「こ、このままでは殺されてしまう…シルフィア!助けてくれッ!!」

「マクシム……………頑張れッ!」

「シルフィアーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」


 シルフィアは親指を立てると、マクシムを笑顔で激励して部屋を後にした。他の面々もそれに続く。

その後マクシムは公務を2日休む事になり、再会したシルフィアに無言の抗議をした。しかしシルフィアの膨らんだお腹を触ると、その機嫌はすぐに回復した。

 さらにその3日後からマクシムは単身でロノリー、エフィリ、デモイラとの初夜を迎え、無事にこれを終える。こうして世界の平和は保たれる事となった。

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