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ガラス細工

初めてなーろっぱ世界の作品を書きました!

小説を書くのは初心者になりますので、お手柔らかにお願いします。

投稿続けられるように頑張りたいと思いますので、応援お願いします!

「もうちょっと右手をあげて」

アカリスのノワが岩の上で小さな口に沢山の胡桃を詰めながらポーズをとっている。

マッスルポーズだったり、両手を頬に当てて悦に浸るようなポーズ。

「ノワは、ほんと面白い動きをするね」

胡桃を小道具のように使うノワの様子を、スケッチブックに木炭でスケッチする少女がいた。

彼女の名は、セーラ・シュトロイゼル。

絵を描くことに1日のほとんどを費やすような女の子である。

木炭で書いた線を消そうと、パンで擦る。

「あっ、ボロボロになっちゃった」

ノワがセーラのその声に、きょとんと顔を見上げている。

「新しいパン家から持ってくるべきだったな」

そう言いながら、セーラは人差し指を伸ばして肩に彼を乗せた。

顔が曇った彼女を笑わせまいと、右肩、左肩へとチョロチョロ移動する。

「ノワやめてよ、くすぐったいって。あはは、あははは」

セーラの笑い声は青空に向かって響いた。

ダンスを踊るようにクルクルと回って、小花の咲いた原っぱに大の字になって寝そべる。

「そろそろ、仕事探さなきゃ」

セーラの目にはただただ、青い空に白い雲が風に気ままに流されていっていた。


ザクザクザク…

横になったセーラの頭元に近づく足音が聞こえる。

ノワは同じ赤毛のセーラのフワフワの髪に隠れて、近づく人物をうかがっている。

「セーラ、アップルシナモンハニーパイが焼けたわよ」

母のエプロンから香る、焼きたての甘いパイの匂いが鼻をフワッと香る。

「うん。すぐ行く」

母が遠ざかる音を聞きながら、セーラは瞼を開けた。



「戻ったよ〜」

「キッチンにあるから、適当に切って食べなさい。食べ終わったら、街に卵とミルク、ベーコンにワインを買ってきてちょうだい」

母はケーキやパンを買いに来たお客さんに頼まれたクッキーや、ガレットを茶色い紙袋に詰めながらそう言った。

「わかった〜」

「まだそんなくだらんことで、時間を無駄にして! ちょっとは家のことを手伝え!!」

工房で生地をこねていた父に一喝されたが、ギュッとスケッチブックを握り締めキッチンに入った。

セーラは、歯を食いしばりながら言われた物を絵で描いてメモをした。

忘れっぽいセーラはそうしないとすぐに忘れてしまうのだ。

「絵を描くことって、そんなに無駄なことなのかな……」

そんなことを考えていると、甘い香りがセーラの鼻をなぞった。

セーラを慰めるかのように、焼きたてのパイが木彫りの机の真ん中に湯気を出しながら、佇んでいる。

「お母さん……」

お湯でナイフを温め、水気を拭き取ってパイに刃を当てて少しずつ前後に動かして切る。

この時のポイントは決して推し切りはしないこと。

母から教わったパイの上手な切り方だった。

サクッと切り込みを入れるだけで、シナモンの優雅な香りと林檎と蜂蜜の香りが蓋を開けられたように舞い上がる。

「いい匂い」

母は店を切り盛りしながらも、必ず水曜日の3時にはこのアップルシナモンハニーパイを焼いてくれた。

切ったパイを口に運ぶと、シャクシャクとしたリンゴの食感が楽しく、鼻を抜けるかのような甘酸っぱいリンゴの酸味とはちみつの上品な甘さ、シナモンの香りがふわりとラッピングをするかのように包み込む。

パイ生地の香ばしさとバターの甘味の余韻が、次のピースへと手を伸ばさせる。

サクッ、シャクッ。このパイを食べる時、母の愛をセーラは感じていた。

腹ごしらえを済ませ、描いたメモとバスケットを手に取る。

お腹を大きくしたノワは机の上でへそ天をしている。

セーラは彼を優しく手のひらに乗せて、斜めがけのポシェットに入れた。

「行ってきます!」



「買い物は、卵とミルク、それとベーコンにお父さんの好きなワインかぁ……」

自分の書いたメモを見つめながら言う。

村の広場で、本屋のドナルドさんに会った。

「やぁ、セーラちゃん。お使いかい?」

「はい、そうです」

ドナルドさんは一人で遊んでいるセーラが本を見にきては、本を読んでくれた。

そのおかげもあり、セーラは田舎娘の平民でありながら字を読むことができた。

字でメモを取らなかったのは、昔から絵で描くのに慣れていたからであった。

「申し訳ないが、町に行くならガラス細工を受け取ってきてはくれないかね。孫の誕生日が近くてね。この前本棚から本が落ちてきて、それを避けた時に右足を痛めてしまったのだよ」

「いいですよ。 それってどこのお店ですか?」

「セザリー通りのアロザ細工ってお店だよ。ガラスでできた鹿の彫刻が店前にあるはずだよ」

「おじさまは何のガラス細工を頼んだのですか?」

「孫の大好きなお花の彫刻を頼んだんだよ。チューリップと言ってな、蕾のような形をしていて、赤黄白と色とりどりで。私とその花畑を見に行った時に相当嬉しそうじゃったから」

セーラは頭の中でイメージした花を、ササっと描いた。

「相変わらずセーラは絵が上手いね。そうそう、そんな感じ。実物ではないけれど、受け取った時に正解がわかるはずだ」

ドナルドさんは悪戯げに笑った。

「それじゃあ、頼んだよ」

セーラはドナルドさんと別れて、街に向かった。

薄暗い森を抜けると、木組みのカラフルな家が肩を寄せあいながらところぜましと道沿いに並んでいる。川が流れ、石畳の橋を平民や商人、役人だったりが闊歩している。

川にはゴベルーという渡し船が荷物の運搬や人の移動に使われている。

いい匂いを漂わせているパン屋や鮮やかな色のフルーツや野菜を店頭に並べるお店。

絨毯の生地にでもなりそうな高価な布や作り込まれた装飾品を売るお店、時計屋、ソーセージとビールが美味しく、昼間から飲んでいるおっちゃん達もいる。

セーラは馴染みの店で母から頼まれた買い物を終えた後に、セザリー通りへと向かった。

セザリー通りのお店に行く時にゴベルーに乗った。

初めて乗るゴベルーにノワはポシェットから身を乗り出し、危うく水の中にダイブしてしまうところだった。

セザリー通りはメイン通りよりも人通りが少なく、靴屋や革加工のお店、時計屋、香水、高級なものを取り扱うお店が並んでおり、歩く人々の装いも上品だった。

「このお店だ」

ガラスで作られた立派な鹿の彫刻がショーウィンドウに飾られている。

特に鹿の目には虹色の線のような筋が入っており、まるで本当に生きているかのような印象だった。

ガラス製のドアの持ち手を握り中に入る。

「すみません。注文していた物を受け取りに来ました」

「お名前を伺っても?」

白髪で自分と頭の高さの変わらない、白髪の眼鏡のお祖父さんが店の奥から出てきた。

「ドナルドさんの知り合いの、セーラって言います。足を痛めたおじさんの代わりに来ました」

「あぁ、はいはいちょっと待ってね」

ニコリとお祖父さんは笑うと白髪の混じった口ひげが、口角の動きに合わせて浮き上がる。

「その辺、自由に見て待ってておくれ。触ったらダメだよぅ」

私はガラスケースに入れられたガラス細工を眺めていた。

白鳥やワシ、テディベアに赤く着色されたりんご、ドラゴンやお城、時計塔など細かく作り込まれたガラス細工に見惚れていた。

ノワも興味津々にガラスケースに顔をぴたりとくっつけてみては、ガラスに映った自分にびっくりしてを繰り返していた。

窓から差し込んだ夕陽のオレンジの光がスポットライトのように1つのガラス細工を輝かせている。

それはゴールデンレトリバーの彫刻であった。

黄金の毛並みに大きな舌を出し、優しい眼差しが微笑んでいた。

(きっとこのワンちゃんは沢山可愛がられているんだろうな……)

セーラは今にもボールを咥えて「遊ぼ!」と言い出しそうな、その彫刻をひどく気に入ってしまった。

(私の小さい王子様もこんな笑顔だったな)

セーラの記憶の中に、ゴールデンレトリバーの背にしがみつき暗い森を抜けた古い記憶を思い出していた。


読んでくださってありがとうございます。

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