2章17話 ライバル
ハヤテがセオドリックの元へ行き、イチャイチャしてる間、置いて行かれた涼太の状況からストーリーが始まります
颯の屋敷リビングで項垂れいた涼太は、ネロを膝抱っこしたままタブレットを弄っていた。バロン達に国の事を聞きながら操作し、様々な情報を仕入れていた。
「冒険者ギルドは……ここか。なあ、明日ギルド行きたいんだが、15歳って登録出来るのか?」
「ギルド?冒険者になんのか?15歳でも出来るぞ。5歳から登録可能だからな。一緒に行くか?」
そう言ってきたのはバロンだ。オッドアイが格好良い白虎の獣人だ。彼が一番、涼太に懐いていた。ハヤテとは違う気安さを気に入り、傍に侍っていた。
「お!良いのか?颯の護衛なんだろ?」王族の護衛を連れ出しちゃマズイだろうと思いそう言ったが、バロンは首を横に振った。
「ハヤテ王子の主要メンバーじゃねぇから、良いんだよ。王子も好きに過ごせって言ってくれてっからな」
まあ、颯は侍らせて歩くタイプじゃねぇしな。「そういう事ならお願いしようかな?」と言えば、「おう!任せろ!」と胸を叩き、ニカッと笑った。
ネロがクイクイと服を引っ張ったので「どした?」と聞くと、『ボクも行く』と訴えてきた。
「え?お前が行ったらヤバくない?ネクロマンサーってバレたらどうすんの?」目を見てそう言えば、ムーっと唇を尖らせた。
それに追随したバロンが「ネロは種族で言ったら魔族の部類だろ?人間共に存在がバレたら討伐対象にされるかもだぜ?大丈夫か?」そう忠告したら、ムムムーっと眉間に皺が寄った。
『でも……リョウと離れたくないもん。気配遮断して行くからお願い?ね?』
涼太はネロの上目遣いでの“”お願い“”に弱いのだ。ただでさえ可愛いのに、それをやられると凶悪に可愛くなるので困る。
「うぅぅ。分かった……んじゃ一緒に行くって事で、バロンそれで良いか?」ネロにタジタジになりながら聞けば、「良いぜ。ま、喧嘩吹っかけてくる輩なんて屁でもねぇしな」と言いながら、ふんっと鼻を鳴らした。
その後は、「通販の使い方が分からん」とタブレットを弄り捲り、「購入方法が分かった」と騎士達から金を借りて、チョコやらポテチやらを買い、テーブルに広げて菓子パーティを開催した。
「うんめぇ!」「やっば!溶ける!」「薄いパリパリが塩効いてて美味です」
ワイワイ、ガヤガヤと皆でダラダラしていたら、玄関の方からガタガタと聞こえ、カツカツカツと忙しない足音を響かせながら、誰かがリビングに向かって来ていた。
ジャウフレが「騎士団総員、直ちに整列!フェリーチェ王子がお戻りだ」と声を上げ、涼太を除く全員が立ち上がり騎士の礼をとった。
そのすぐ後、長身の綺麗な男に抱えられた颯が入って来た。と思ったら、「ご苦労」と男が一言だけ告げ、スタスタと通り抜けて奥へと消えていった。
「なんだアレ……」呆気に取られた涼太がそう零したら、「ハヤテ王子とセオドリック王弟殿下だよ」と教えてくれたのはキークス。
「まさか、そのセオドリック王弟殿下が颯の恋人なのか?」そう聞けば、「恋人…というか、旦那?」と答えたのはバロン。
「は?え?旦那?結婚してんの??アレ?でも、王子と王弟って叔父と甥じゃね?」そう疑問を呈したら、「結婚はしてないが、叔父と甥だな。だがまぁ…別に驚く事ではないがな」と言ったのはジャウフレ。
詳しく聞けば、男同士の場合は血の繋がり等は関係なく婚姻出来るとの事だった。女性は子供が産まれ難くなるから推奨されていないらしい。
で、颯とセオドリック王弟殿下は出会って数日で仲睦まじい恋人同士になり、所構わず抱き合ったり口付けを交わしたりと、砂糖吐きそうなほど愛し合っているとの事だった。
(マージーかー!あの颯がねぇ。他人に興味無い研究バカだったのに変わるもんだな。でも、そっか…お前はその人を選んだのか…はぁ....マジか....王弟が恋人....)
「あーあ!せっかく転移してまで会いに来たのに、親友を放置って酷くね?ちょっとは構えって。なぁ?ネロ」
膝でゴロニャンしているネロの頭を撫でながらそう言えば、『ん~。400年も放置したリョウの方が酷いと思う。構うならネロを構ってれば良いと思う』だと。
「いやぁ、それを言われちゃ何も言えねぇわ!でもさ、あの時に言ったじゃん?いつかは帰るって。それと恋人にはなれないって。それを了承して傍に居たんだろ?だから文句言うなよ」
ピシッとデコピンしてそう言えば、またムーっと唇を尖らせたネロ。「それに、種族は変わっちまったけど、またこうして会えたんだし良いじゃん。な?」
まあ、もう昔とは違うんだ。俺はもう英雄じゃないし、ネロと一緒には居られない。
(俺は颯が好きなんだよ。だからごめんネロ)
ネクロマンサーのネロは400年間、一途に涼太を想い続けてきた。会えない時間が辛く、孤独な日々を送っていたんだろう。
そんなネロの気持ちは十分理解している。分かってるんだ。しかし、涼太も颯が好きで一途に想っており、友情と愛情の狭間で揺れる苦悩を抱えていた。
世間の風潮が変わり、同性愛者が受け入れられるようになっても、まだまだ困難が残っていた。風当たりは依然として強く、自分の気持ちを隠し、親友として颯の側で支えることに徹していた。
しかし、親友としての距離感が一層苦しく、颯との関係で心の葛藤に苦しむ日々が続いていた。
それでも、好きだから傍にいたし、傍に居たいから異世界まで追い掛けて来た。いつか勇気を出して想いを伝え、一緒になれるのを夢見て。
だが、想いも伝えられず、夢は夢で終わった。(颯が幸せなら良かったよ。でもな……俺が良くねぇわ。ツラッ!!)
「あーあ!親友を取られちまったなぁ!コレからどうすっかなぁ」
ソファにふんぞり返って天井を見上げた。その目には光る雫が浮かんでいた。気付いたのはバロンで、彼は何となくその涙の意味が分かった気がした。だから、涼太を励まそうと色々と考え言葉を掛けた。
「リョウタ、泊まる所が無いだろ?俺の部屋来るか?風呂もあるぞ?一緒に入るか?あ、城近くの試練の塔に行ってみるか?レベルアップのダンジョンなんだがな、冒険者とか騎士とか沢山いてごちゃごちゃしてっけど…………」
身振り手振りで喋り捲るバロンを見て、涼太は「ぶはっ」と吹き出した。そのあと涙を零しながら笑い続けた。
「あーおっかしい!何かスッキリしたわ。サンキューバロン」
流れる雫は、悔しくて悲しくて辛い感情を一緒に流してくれたようで、気持ちがスッキリした。
(ごちゃごちゃ考えんな俺!此処まで来て諦めてたまるか!俺と颯の絆の深さ舐めんな!)
王弟殿下と仲睦まじくしている颯を見ても大丈夫。俺は俺でアイツを愛でれば良い。
「絶対に渡さない....」そう呟いて、ニカッと良い笑顔でバロンを見たら、「元気になったか」と彼もまたニカッと良い笑顔で笑った。
ちなみに、バロンの尻尾はブンブンと、虎耳はピクピクと忙しなく揺れていた。
イケメンなのに可愛いというダブルパンチに、涼太はノックアウト。萌えに萌えた。
それから3日間、サリバンが言った通り、部屋に籠った颯と王弟殿下は終ぞ出てくることは無かった。
その間、涼太とバロン、ライルとキークス、デイギンとニコラス達は冒険者ギルドへ行き依頼を熟したり、ダンジョンに籠ってレベルを上げたりと、自由に過ごしていた。
そして4日目の朝、ツヤツヤした王弟殿下とゲッソリしたハヤテが皆んなの前に姿を表した。
最初に声を掛けたのは涼太で、「お前....顔色ヤバいぞ」と心配そうに眉尻を下げた。
「う゛っ....マジ?いや、ちょっとね....色々とね....はは。ゴメンな放ったらかして....」
「長すぎません?」呆れた風に言ったのはニコラス。ヤレヤレと首を振っている。
「いや、本当にね……3日だよ?3日!!自分でも呆れるわ……」
胸に手を当て頭を下げ、「色々とお疲れ様です」と恭しく労ったのはジャウフレ。口元はニヤッとしていた。
「ナニがお疲れだって?いや、まぁ…分かってるよ。色々と凄く疲れました……」
「王弟殿下は優しかったですか?」と聞いたのはサリバン。コメカミがピクピクしている。
「ごめんねサリバン?顔引き攣ってるよ?ロレンは常に優しいよ……腹ペコ狼に終始翻弄されて参ったけど……優しかったっす」
頭の後ろで手を組んで、無言で目を瞑ってるのはバロン。特に興味は無いらしい。
「空気がゲロ甘!」 「王弟殿下の蕩け顔ヤバっ!」とその場から逃げ出したのはキークスとライル。耐えられなかったようだ。
「あ!コラ!チビすけ共!オエッてするなキークス!」
「しっかし絶倫っすねセオドリック様」 「マーレーやめろ、言うな。フェリーチェ王子殿下、セオドリック王弟殿下、お疲れ様です」
「言っとくけどね、最後までしてないからね!?口付けと愛言葉が絶倫だった……留まる事を知らないんです彼……」
ダッチョとマーレーは、ソファに座ってボードゲームをしながら声を掛けてきた。彼らはオセロをやっていた。
「それオセロじゃん!どしたのそれ?」
他の隊員達にも色々と言われたが、「良いから。もうやめてちょ?俺の羞恥心をこれ以上刺激しないで……」言われる度、穴に埋もれたくなる。
「で、そのオセロはどうしたの?って、それ地球産じゃないの!?」
見た事あるよ、そのフォルム!「懐かし……」わぁーい!とマーレー達の方へ行こうとしたら、ガッツリ腰を掴まれ動けない……犯人は言わずもがなセオドリックだ。
「手をお離し?ロレンさん」横を見上げそう言ったが、ニコニコと笑顔で「ん?」と返された。
「いや、ん?じゃなくてね?動けないでしょ?」手をペシペシ叩いても離さん。「全く……」
呆れて溜め息吐いたら「それより……」とセオドリックがボソッと呟き、涼太を見てから「彼の紹介は?フェルの親愛なる友なのだろ?」と囁かれた。
「あ!そうだったね!涼ちん、涼ちん」涼太をチョイチョイと手招きし、「おう!」と返事をした親友と恋人を対峙させた。
「えぇ、先ずは。彼がセオドリック・ロレン・メイウッド公爵閣下。で、現国王の弟で、王弟殿下ね。そして彼が、神雷慈 涼太。元英雄リョウで、俺の前世からの大親友です」
手でコッチ、アッチ、と指し示し紹介したら、「セオドリック・ロレン・メイウッドだ。フェルのダーリンだ」
と、ロレンはアホな事を言った。(ダーリン!?ココでその言葉を使うか普通!!)
そんなアホ紹介をしたロレンに「ぶっ…」と吹き出した涼太。口元がピクピクしてる。(気持ちは分かる。うん)
そして気を取り直して、「颯の親愛なる友、神雷慈 涼太です。愛友が心配で異世界まで来た男っす。宜しく!」
涼太は涼太で“”愛友“”とか言っちゃって……何なのマジで。というか、握手してるけどお互い目が笑ってない。それに目を合わせてバチバチしてる。
(火花の幻覚が見えるよ……)
「も、もう良いんじゃないかなぁ?ね?はい、自己紹介は終了ね!」
ほらほら。と、交わる視線の間で手を振ったら、漸く睨めっこを止めてくれた。何となくホッとした。
「それより、アレ、アレが気になる!」そう言ってオセロにを指差したが、ふと隊員達が持ってるペットボトルが目に飛び込んできた。
「あーー!コーラまである!それに、それ四ツ谷サイダーじゃん!?ちょちょちょ、え?クルビーポテト!!」
そこかしこに見える、日本でお馴染みな菓子やジュースに大興奮のハヤテは、ロレンの腕の中から転移で抜け出し、アチコチと動き回り発狂していた。
間接キスとか気にもせず、ゼロ(白狼人)からコーラを奪って一口飲み、「うっま!マジでコーラじゃん!」
カイト(狼人族)からサイダーを……サッと隠されたから「頂戴?」をして一口貰い、「プッハー!くぅぅ…このシュワシュワが堪らん!」
ケント(犬人族)からポテチを貰って食べ、「パリッ……俺の好きな昆布醤油味じゃん!最高かよ!」
ハリー(黒豹人族)の手にあるポッキーに齧り付き、「ふわぁぁぁ…ムースポッキー美味っ!チョコが蕩けるぅ!」
セシル(白熊人族)のチョコパイをあーんして貰い、「んんんんん!んん!こりぇらよ、こりぇこりぇ」
兎に角、団員から団員の間を渡り歩き、片っ端から口に収めていった。そして満足してから涼太の元へ行き、ガシッと当たり前のように肩を組んだ。
「涼ちん。あの品々はキミだね?俺様の好物ばかりではないか。愛する颯に献上しなさい」顎をスリスリしながら言ったら、指を取られ噛まれた。「痛っ!」
「痛くしたの!なぁにが“”愛する颯様“”だっつーの。涼太様を愛してるのはお前だろ?“”寂しい…クゥゥン“”って泣いてたんだろ?ゼウス様が言ってたぜ?くくく」
デコをペシペシ叩いて、最後にデコピンされた。地味に痛い。というか、“”寂しい…クゥゥン“”って何だよ!
「泣いてねぇわ!ちょっとナイーブにシュンとしただけでぇす。あのベッドのラクガキ見て、郷愁に駆られたんでぇす」
ぷくぅっと膨れてそう言えば、プスッと潰された。
「は?ベッドのラクガキ?って、お前が俺に強請ったんだろぉが!サイン書いてって!それを……この、アホ!」
怒りながらコメカミぐりぐり。「痛たたたた」
暫く、懐かしい何時もの悪ふざけの遣り取りを続け、お互いのスキルの話しになり、披露会をした。
正直、涼太のタブレットはかなり羨ましかった。日本製品の取り寄せとか、マジで最強だよ。
「金払うからさ、NOKEのニューモデルシューズと、Dior’sの新作革ジャン買ってくんない?」
買おうと思って金貯めてたから、心残りだったブランドのシューズとジャケット。今なら金に余裕あるし簡単に買えちゃうんだよ。
「ああ。お前がクリスマスに買えって強請ってたヤツな。良いぞ、どれ?コレ?」
(実は買ってあったんだよなシューズ。届け日が誕生日後だったから、後日渡そうと思ってたんだよ。アレどうなったかな)
涼太にベッタリくっ付き、何時もの距離感でタブレットを覗く颯を、(変わんねぇな)と愛しく見つめていたら、反対側に座るセオドリック王弟殿下から殺気を感じた。
(可愛いよなコイツ)と口パクで言ってやったら、(当たり前だ)と口パクで返ってきた。
(返してくんない?)と口パクして颯を指差せば、(フェルは渡さん)と睨まれた。
ハヤテ越しに睨み合う両者。3人の様子を息を殺して見守る黒騎士団員達。その背後には大熊と大蛇の幻影が見えた気がした。
セオドリックにライバル出現しました。涼太は颯を諦めていないのか....セオドリックを煽ってるだけなのか....
※ネロはダンジョンに戻りました。主のエルダーリッチから呼び出しを受けて。
※アルファポリスでも同作品を投稿してます。そちらには挿絵投稿もしてます。




