1章14話 真名の洗礼
やつと、やーーっと、真名の洗礼を受けに行くストーリーに辿り着きました。
快晴の日、誕生日を迎えたハヤテ(仮)王子が、真名の洗礼を受ける為に、ガタガタと揺れる馬車に揺られながら、精霊の森にある教会に向かっていた。
「お尻が痛い。馬車揺れすぎ」と、ハヤテ(仮)は不満そうな表情でつぶやいた。口が尖ってる。
馬車の中は揺れが激しく、ハヤテ(仮)の身体は左右上下に揺さぶられるたびに、お尻に鈍い痛みが走る。
「お尻が割れるぅ。もう割れてるけどぉ」
馬車の周りには、堂々とした護衛騎士が騎馬で王子を守っていた。彼らの鎧兜は光を反射し、厳かな雰囲気を漂わせていた。だが、王子の苦悩する様子には誰も気づいていない。
「みんな全然気付いてくれない。というか、カッコイイな。俺も馬に乗りたい」
葉っぱの隙間から覗く、神秘的な光りが差し込む森の中に、ハヤテ(仮)王子の馬車はじりじりと進んでいく。
精霊の森と呼ばれるこの地は、神聖な力が漂う場所で、普通の人間が足を踏み入れることは滅多になかった。
馬車が教会の入口に到着すると、静かにドアが開かれた。
中へと歩いていくハヤテ(仮)を、護衛騎士達は慎重に守りながらついていった。
教会の中は、幽かな輝きに包まれていた。壁には古代の文字のような物が刻まれ、神聖な装飾が施されていた。
「はぁ……凄いね。なんか神秘的な場所だわ」
ジャウフレ「ハヤテ王子、ココは選ばれた人しか来られない場所です。これ程の神のように霊妙で尊い場所は他にありませんよ」
ジャウフレは、感嘆の溜め息を吐いて教会の中を見回した。
サリバン「此処は聖域ですね。妖精と精霊が飛び交ってますよ。おや、こんにちは妖精さん。少しお邪魔しますね」
サリバンは近くで漂う妖精と挨拶をしていた。彼はエルフなので、聖なる者が見えるのだ。
今日、護衛をしてくれているのは、他にニコラスとマーレー。2人とも神聖な教会に胸が震えている。
ジャウフレに「そろそろ洗礼を」と言われたので、祭壇の後ろに聳え立つデーメーテール神の神像の前に、静かに立った。そして両膝を付き、手を組んで目を閉じた。
『転生を繰り返し者よ、最高神ゼウス様の愛子よ。私は豊穣と大地の神デーメーテール。精霊に愛される其方は古に導かれし者。我が真の名を授ける者なり」
頭の中で響く声音に、背筋が伸びた。ハヤテは心を静め、真名の洗礼を受ける宣誓をした。
「我、この星の元に新たに産まれし者。デーメーテール神様より真名を授かり賜わん」
すると、教会内に強い光が差し込み、神聖な力が室内に満ちた。護衛騎士達は、体の震えをそのままに、洗礼の様子を伺っていた。その光景は、神の奇跡のようで神秘的で美しかった。
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ハヤテは瞼の裏に何かを感じた。ゆっくりと目を開けると、鼻先スレスレに見知らぬ人の顔が浮かび上がった。
「ヒィィ!!」
その人は美しい笑顔を浮かべ、ハヤテ(仮)を凝視していた。
ハヤテは反射的に悲鳴をあげてしまった。ドアップで迫る顔は恐怖しかなかった。それを聞いたその人は、微笑を浮かべながら謝罪の言葉を口にした。
デーメーテール『おっと、すまんすまん。君の名は“フェリーチェ・ハヤテ・アルカディア”ね』
ハヤテは驚きを抑えられず、目を丸くして目の前に佇む神秘的な存在を凝視していた。その人こそが豊穣と大地の神、デーメーテールであることに気付いた。
「我が授かりし真名はフェリーチェ・ハヤテ・アルカディア。有り難き幸せ…………て、もしかしなくてもデーメーテール様ですよね?」
デーメーテールは頭を軽く振りながら微笑み、『そうだよ♪待ってたよ〜』と言った。
その声は風のさざめきのようであり、ハヤテ改め“”フェリーチェ“”の心に優しさと安らぎをもたらした。
ふと、フェリーチェは不思議な気持ちに包まれた。デーメーテール様は何か重要な事を伝える為に呼んだのか?
「デーメーテール様、なぜ俺を呼び出したのですか?」とフェリーチェが問うと、デーメーテールは青く輝く瞳を輝かせて微笑み返した。
デーメーテール『そう。君に重要な使命を与えるためにここへ呼んだんだよ』
ゼウス様は“”使命はない“”と言っていたが、自分の世界の事だし、デーメーテール様は俺に何かをさせたいらしい。
「使命ですか。またデス・ブラック・ドラゴンの討伐とかなら嫌ですけど……なんでしょう」
デーメーテール『ああ、黒龍かい?あれには苦労したでしょ、毎回毎回現れて。女神が暴走して申し訳なかったね。
実はね、まあ、使命というか、君には、この世界で自由に過ごしてほしいんだよ。ほら、“”島が欲しい“”って言ってたでしょ?あげるから開拓しない?」
「いや、女神の件はもう良いんです。それで、確かに俺は島を貰って新国を造ろうと思ってました。まさか本当に頂けるんですか?」
デーメーテール『そう!そのまさかね。水の都ミスト国があるでしょ?あそこがね……禁忌の術を使ってね……』
ゴクッ。何故だかヤバい話のような気がして、生唾を飲み込んだ。「ミスト国って、女王の国でしたっけ……」
デーメーテール『そう。その女王の国ね。次期女王が悪さをしてね……大奥みたいな国にしちゃうわ、ギルドを解体しちゃうわ、平民を奴隷にしちゃうわで、めちゃくちゃだったんだよね。で、遂には時間逆行という禁忌の術を使ってしまってね、神罰で国が滅びたんだよねぇ』
「ぇぇええ!?」
女の園を造って鎖国しているとの話だったが、想像以上にヤバい国だったみたいだ。国というより、次期女王がか。
“”時間逆行“”って、もし使えたら神だよな。それを使おうとして神罰が下ったと。
「自業自得って感じです。国の滅びは、人も一緒に?」
デーメーテール『そうなんだよね…だからさ、今は荒地になっててね、私が封鎖してるのだよ。その地をそのままにしておくのは勿体無いからさ、君にあげ……あ』
デーメーテール様が言葉を途中で止め、俺の後ろに視線を向け、心底嬉しそうに微笑んだ。
(なんだ?)と、振り返ろうとしたら、『久方ぶりだのう』と、聞き覚えのある声に(ああ…来ちゃったか)と思った。
ゼウス『なんだ、驚かんのかハヤテ。いや、フェリーチェ。つまらんのう』
「いえ、驚いてますよ。来るかな?と思ってたら本当に来たので」
デーメーテール『ほんと、驚きますよ。上級神がホイホイ訪ねてくるんだから』
デーメーテール神によれば、俺に何かある度にちょくちょく現れては、色々とヤラカシているみたい。
『相当お気に入りなんだねぇ』と言われたから、「お父さんだからね」と答えたら、いきなり抱き上げられた。
「うわっ!?」
ゼウス『はぁ……愛い、愛いなお主。我を父と呼ぶか!聞いたかデーメーテールよ。我は父だ!子だと思うと益々可愛くて堪らんな』
(うっ。凄い神気浴びてる。これヤバくないか?てか、頬にちゅっちゅしすぎ!)
グイグイと押して離れようとするも、力が強くて抜けられん!
デーメーテール『分かりました!分かりましたから!それ以上やるとダメ、あ、ァァァ…遅かった……』
ゼウス『フェリーチェはもう戻らなくて良いのではないか?父と上級神界で暮らさんか?』
上級神界は、ゼウス神の神域で、星々と神達を監視、管理している場所。おいそれと行ける所ではないし、耐性がないと一瞬で魂が消滅する。
そんな場所に行ったら、秒で消えるわ!絶対イヤ!もう少しだけ生きたい!
そう訴えたら、デーメーテール神が『それは無いよ。消えない。はぁ……貴方は神になってしまいました』と告げてきた。「あ、やっぱり?」
ゼウス『ふむ。フェリーチェは聡いのう。気付いておったか。ほほっ。では行くか父と』
ゼウス様が一人納得し、数回頷いてから俺を抱っこしたまま歩きだした。「え?は?」
デーメーテール『ゴラァ!ダメに決まってるでしょうが!まだ、寿命が、残って、る・ん・で・す!
その状態で神域で暮らすと、何が起こるか分かりませんよ!綺麗に消化してから招かないとダメです!』
デーメーテール神が、最高神の頭をバチコーンと叩いて説教を始めた。強い。見た目は憂い美人なのに強い。
『だってのう…我、父だし』って、ゼウス様“”父“”というフレーズを相当気に入った模様。
口を尖らせてイヤイヤするゼウス様と、仁王立ちで説教するデーメーテール様。そして小さい俺。
構図的には親子みたいだな。そう思ったけど言わなかった。またゼウス様がヒートアップしそうだからね。
「ゼウス様……『お父さん』うっ、えっと父さん。寿命まで地上で頑張ってきます。そのあと会いに行きますから、今は天界で見守ってて下さい」
会えるかわかんないけどね。なんせ最高神だし。いや、会えるな。今も会ってるし。
ゼウス『うむ。我は父だからな。下界で幸福になるのを見届ける義務があるのう。その為に真名も“”フェリーチェ“”と付けたからの』
“”フェリーチェ“”幸福って意味だっけ。
デーメーテール『はぁ……良かった。いえ、良くないんですよ。種族の記載は人族に直しました。
が、見た目がですね、成長してるんですよ。年齢は2歳なんですが、神気を大量に浴びたお陰でスクスク育ちまして、現在150cmほどまで伸びてます』
「マジかぁ。あ、でも別に良いよ。むしろ良かったかも。2歳じゃ色々と不便だったんだよね。料理もしずらいし」
階段の昇り降りも満足に出来ないからな。テーブルも届かないし。ベッドも飛び上がらないと登れないんだよね。
ゼウス『フェリーチェは小さくても大きくても愛いからのう。どちらでも構わんではないか』
(ゼウス様、ちょっと黙っててよ)
デーメーテール『では、年齢の欄も調整して12歳にしときますね。あ、下界に戻ったらすぐに成長が始まるので、服とか気を付けて下さいね。スッポンポンになっちゃいますから』
「はぁい」スッポンポンは嫌だ。
ゼウス『フェリーチェ、偶に教会に顔を出すのだぞ』
「分かったよ、お父さん。また来るね。じゃあ、デーメーテール様、元の場所へお願いします」
デーメーテール『相分かった。МИЛЕВЁДНИ』
デーメーテール様が何かを唱えた瞬間、眩い光に包まれフェリーチェが神界から地上へと戻っていった。それと同時にゼウスも自分の神域へと帰った。
一瞬のうちに静かになった自分のテリトリーで、デーメーテールは盛大に息を吐き出した。
『全く。とんだ愛し子が現れましたね。さて、ミスト国を整地しておきましょうか』
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「……」
地上に戻り、ふぅ……と息を吐き出し、神像に顔を向け暫しボーッとしていたら、自分が淡く発光し、ニョキニョキと手足が伸びていき、上半身、首、顔、頭と、順番に成長していった。
ビリビリと服が破れる音を聞きながら、(マジでデカくなってんな)と冷静に過程を見やっていた。
デーメーテール神、やっと登場でした。ゼウス神も出てきました。お父さん呼び....相当気に入ってました。
そして、主人公....神になっちゃいましたね。元々、神候補生として転生してるので、覚醒したのが早まっただけってことです。
あと、いきなり成長したのも元々の設定でした。
※アルファポリスでも同作品を投稿してます。そちらには挿絵投稿もしてます。




