閑話4 アルカディア国王一家
国王一家の閑話の最終話です。主人公の部屋の扉をノックしまくっていたのは母でした。
毒親ディアナは罪を認めるのか、それとも言い逃れしようと画策するのか....
閑話4 アルカディア国王一家
セバスは目の前でカーテシーをしている醜悪な小娘を睨み付けていた。
何故そんなに憤怒しているのか?
それは、身に着けてる装飾品を無意識に鑑定した結果、わかった事実があったからだ。
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《赤の魔晶石。ルビーの首飾り》
火の精霊の住処と、鉱石ダンジョンから採れる赤の魔晶石。魔導具の素材として使えるが、推定価格130マイン(大金貨13枚)。
※王族御用達の魔晶石商人が、鉱石ダンジョンで手に入れた一級品。ルビーと合わせて煌びやかに作られた首飾り。製作者はドワーフ族のカイエン。
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これが度肝を抜かれるほど高価で、他にも指輪やらイヤリング、髪飾り、ブレスレットも着けていて、どれも金貨50枚以上する高級品だった。
その数々を見て瞬時に“”国庫不正使用“”が行われているのを理解した。あとは傷心だという虚言。
それと、数分前に感知した魔力で、色々と発覚した事実に怒りが頂点に達した。
目の前の女が、醜悪なゴブリンに見えて不快に顔が歪んだ。
陛下から発言の許可を貰ったので、(僭越ですが思ったまま言わせて頂きます)と、深く息を吸い込んで姿勢を正した。
セバス「有り難き幸せ。約1年前、ディアナ様の住まう離宮から魔力ではない、別の気を感じました。神聖な気です。
一瞬で消えてしまったので、精霊か聖獣の類がふと現れたのかと思い、その時は別段気にも掛けずにいたのです」
精霊や聖獣が時たま現れて、人々に癒しを与えると言われているので、一瞬の気配を感じ、ディアナに癒しを与えてくれたのだとセバスはその時思った。
セバス「しかし、先程発せられた膨大な魔力の中にある神聖な気と、そこの物置の中から感じる心地よい空気、中にいる方が纏う魔力が全て同じであり、形造るのは小さな人型。神が降臨したのか、はたまた人型の聖獣か、精霊か……もしかしたら時期的に、ディアナ様が身篭って産み落とした我が国の第4子かもしれません」
セバスが発した“”ディアナ様が身篭った“”というフレーズに、ディアナが敏感に反応したのをクロヴィス達は見逃さなかった。
そこで確信した。物置部屋の中から感じる気配が、死産だと報告を受けていた子であると。
そして“”神聖な気と空気“”を感じるということは、神の愛し子か、使徒様であると。
クロヴィス「……なんてことだ。さて、答えて貰おうか。ディアナよ。そこな部屋にいるのは我が子であるか。
そうであった場合、存在の隠蔽、虚偽の申告等の罪で其方は王族侮辱罪に問われる。嘘偽りなく答えよ」
厳かな、絶対王者のクロヴィス陛下の声音に、ディアナはガタガタと震える身体をそのままに、口を開いた。
ディアナ「はい。クロヴィス国王陛下。嘘偽りなくお答え致します。うぅっ……。(殺気が凄いわッ)
お子は1年前、無事に出産しました。王と王太后様の色彩で、美しい男児でした。
出産の疲れで眠ってしまった私が目覚めた時、お子は傍におりませんでした。大切な我が子です。離宮の中を探しましたが見付からず、誘拐されてしまったのだと思いました。“”死産“”と報告したのは、悲壮な陛下を見たくなかったからで御座います。悲しみは私一人で背負う覚悟でした」
ディアナは思った。罪を認めて幽閉はイヤだと。無機質な牢に囚われるとは絶対阻止したかった。だから、メリーの案を使う事にした。バレるとは思ってなかった。
言い終えた後、(さすが私だわ。うそみたいにペラペラ言葉が出てきたんだもの)と、自画自賛していた。それだけ完璧だと思っていた。
が、突然「はっはっはっ」という騎士団長の後ろに控えている騎士の一人の笑い声が響き渡り、場に流れる緊迫した空気と、セバスの殺気が分散した。
騎士「皆さん信じないで下さいね。嘘も嘘、嘘だらけ。虚言癖でもあるんですかね?お隣のメイドさんは顔に出過ぎだよ」
という発言にディアナは(なぜバレたの!?)と驚きを隠せなかった。
これで、さっきのも虚言だとバレたら、幽閉どころか犯罪奴隷として鉱山に送られてしまうと焦ったディアナは、必死に言い募った。
「ち、違いますわ!わたくしが嘘付いてるなど酷い事を仰らないで下さいませ!陛下との愛の結晶をやっと見付けたかもと安堵致しましたのに……」
顔を覆って「酷いわ、悲しいわ……」と涙声を出しているが、完全に嘘泣きだ。主演女優賞ものの演技力だ。
クロヴィス「……その者。竜人のジャウフレか。ディアナの発言が虚言だったと。だとすれば偽証罪に問われ、罰が重くなり奴隷落ちだ。確証はあるか」
ここで虚言などするはずなかろう?と、クロヴィスは思っていたので、竜人の彼の発言に少々訝しんだ。
ジャウフレ「はっ!我々一族の竜瞳は、精霊の力が宿っており、虚言や偽証する者の魔力に敏感に反応します。
魔力の質が黒く染まるのが見え、相手が嘘をついてるかどうかがわかります」
それだと、竜人以外には見抜けぬし、目で見て感じて初めて分かるものを、魔力の質から判断したという不明瞭な言葉では、偽証の立証が出来ない。
もっと確証を得た、確実な証拠がほしいと考えていたら、ディアナ達の後方から現れた召使いが、「私が証明します!坊ちゃんの世話係です!」と手を挙げた。
発言の許可は与えてないが、息子の世話係だったのなら証人としてじゅうぶんだと判断し、“”話せ“”と顎で示した。
召使いの女、アグリー元男爵令嬢が語ったのは、妄想か?と思いたくなるような、ディアナの所業の数々だった。
扇子で召使いを滅多打ちにする暴力行為に、罪をでっち上げて罵声を浴びせる行為。
それだけでも信じられないが、産まれたばかりの子を『要らない子』と地下に捨て置いたという。
そして、要らない子だから、亡き者にしようと画策してたらしい。
悪魔もビックリな悪行の数々に、クロヴィスは目眩がした。そして、そんな女を妻にし、閨を共にしていた自分に吐き気がした。
深呼吸をして、気持ちを落ち着かせてから、「ジェフリー近衛騎士団長、そして王宮騎士よ!その者を捕らえよ!」と宣告し、投獄の指示を出した。
ディアナ「い、いやぁぁあ!!陛下!陛下!その女は学生時代、わたしを虚言で追い詰めた女です!!
婚約者を奪って、私に対して散々いやがらせしていた、あのアグリーです!!そんな女の発言など嘘に決まってます!!」
それを聞いて、召使いの女が誰だったのか思い出した。が、この女は偽ってないと、ジャウフレが耳打ちしてきたので、ディアナの言い分は無視した。
暴れながら、泣きながら、髪を振り乱しながら騎士に連行されて行く側妃だった女を、哀れみと侮蔑の視線で見送った。
姿が見えなくなると、その場が一気に静まり返り、野生のネズミがチュウチュウと泣く声が木霊した。
暫く皆ボーッとしていたが、セバスの「陛下、王子を保護致しましょう」という声で、各々動き出した。
今まで成り行きを見守っていた、ロレンツィオ第1王子とルフィーノ第2王子は、顔を見合せてから父王に質問した。
ロレン「父上。要らない子を保護するのですか?この部屋は人が住む所ではないです。捨て置いた汚物を拾うのですか?」
ロレンツィオ第1王子。齢6歳。銀髪&ラピスラズリ瞳。クロヴィスの性格ソックリ。神童王子。銀王子と呼ばれていいる。
ルフィ「ちちうえ、おとうとですか?ボクは兄になりますか?したっぱですか?」
ルフィーノ第2王子。齢4歳。金髪&エメラルド瞳。おっとりした演技をしてる。腹黒。魔力が多い。金王子と呼ばれている。
クロヴィス「ロレン、ルフィ。お前達の弟だ。そして要らない子ではない。お前達と同じで我が愛しの子だ。口を慎めロレンツィオ」
父王に言われた言葉が理解出来なかったロレンツィオ第1王子。彼はディアナに懐いていたので、彼女が『要らない子』と言ったのなら、「そう」なのだと思った。だから、怒られた事に納得いかなかった。
ルフィーノ第2王子は、「弟」という存在にワクワクしていた。
“”下っ端は下僕“”だと侍従が言っていたから、弟=下っ端=下僕という図式が弾き出され、自分の下僕だから何しても許されると思っている。
侍従が何時も下っ端召使いを殴ったり、魔法の的にしてお仕置してたから、自分も同じ事が出来るかも!とワクワクしていた。
2人の王子は、なかなか個性的な性格をしているようで、第2王子は特にヤバいだろう。元々の性格なのか、ルフィ付き侍従の影響なのか、このまま育てば確実にサイコパスになりそうだ。
クロヴィス「お前達は下がっていろ。セバス扉は開くか?」
セバス「ッ!ダメで御座います。何か結界のような術が施されております」
王と執事が何をしても扉は閉ざされたまま。全く歯が立たず途方に暮れていたら、騎士団長が戻って来た。この場は部下に任せてほしいと。
執事はディアナ側妃の対応に、王は宰相の元へ戻り、貴族や国民への説明の為の話し合いをと進言してきた。
クロヴィスは、この場の指揮権をジャウフレに一任し、「後は任せた」と、城へと踵を返した。
セバスは、アグリーとメイドを投獄せよと騎士に指示を出し、ディアナの元へ足を進めた。
王子2人は、「社会勉強だ。見て学べ」と父王に言われ、その場に留まった。
指揮権を得たジャウフレは、「中から反応あるまで扉を叩いて声を掛けて」と、団員に指示を出してから腕を組んで壁に凭れた。そして遠見スキルを発動し、中の様子を確認した。
(お、いたいた。ん?え?はぁ?……くくく、面白い)
ジャウフレは、「軟禁され弱ってるだろう」と、心配していたが、中にいる幼子の様子を見て盛大に驚いた。
弱ってるだろうと思ったが、顔色も良く健康そのものだし、見た事ない豪華な家具に囲まれ、1歳とは思えない動きをしていたからだ。そして何かの魔法を使った。
ますます面白いとほくそ笑み、一挙手一投足を観察し続けた。
その日ジャウフレは何もせず、開かずの扉の門番に2人を付け、騎士塔に戻った。
そして翌朝、ウキウキと軽い足取りで離宮の地下へと向かい、部屋の前で身体強化を発動し、部分竜化した腕で扉に拳を振るった。
2、3度殴りつけたら結界が崩壊し、開かずの扉が重い音をたてて徐々に開かれた。
驚愕の表情で扉を押さえる幼子と、押し問答を続けること数分。警戒心が凄いので一旦その場は諦めた。
その日から6人体制で、小さき王子の楽しい楽しい護衛兼監視生活が始まった。
そして約1年が経ち、健やかに成長した第3王子が何やら企んでるようで、精霊か何かと会話をしながらコソコソと動きだした。
「くくく。何を企んでるのかな、王子様?」
主人公が気配察知した8人は、近衛騎士達と兄王子達でした。
そして出ました。扉を破壊した竜人騎士。赤子らしくない主人公に興味津々です。もしかしたら唯一の味方になるかも?
※アルファポリスでも同作品を投稿してます。そちらには挿絵投稿もしてます。




