4子供
「あ〜、藤の花綺麗やな〜。」
下に顔を向く。
「なんで俺は鬼やのに花が好きなんや?」
ぐっと堪えた。天には一面に藤の花。そこから差し込む光。
「満開や〜!……」
切なく笑う。
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「もう帰るか。」
さっきまで橙に光っていたのに、今は霞のような光だ。
「!!……あれは!」
子供が悪い何かに取り憑かれかけていた。
一瞬助けるか迷う。だが、
「おっと。子供大丈夫かい?」
息切れした鬼の身体が、子供を布を被せるように覆う。
子供の顎を上げ、悪い何かを見ないように、目を手で覆う。汗が垂れる。
(間に合って良かった。)
――――――――――――
「あ。やっと目覚めた。」
子供は鬼に膝枕されていた。まだ虚ろな目をしている。右目には傷。前からあったようだ。
「…………っうあ…………」
「あんま動くな〜?」
子供はそのまま眠ってしまった。
(まじかよー。……)
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家の門の前までついた。鬼だけで。不安げな顔をしていた。
「あ。」
郵便受けにはもう入らない胃袋のように届けが詰め込まれている。これ以上は戻してしまう。
「ん゙ーーー…………」
かぽかぽと下駄を鳴らし、頭を掻きながら玄関へ向かった。