気胸男
ある日のこと気胸を肺に患った男が町を闊歩していた、男は己の肺がこの上ないほど憎らしかった。
少しの間歩き続けて人気の無い橋の下で休息を取っていた所、ある怪しい男が語りかけてきたのだ。
「旦那、ちょいとわたしの肺と
あんたの肺を交換しませんか。」
男はすこし悩んだ末に憎たらしい肺に別れを告げられる嬉しさを抑えながら返事をした。
「分かった良いだろう、もちろんタダだよな。」
怪しい男はすぐに答えた。「もちろんですぜ。」
すると二人の肺は交換されていた、男は喜びのあまり思いっきり息を吸ったり吐いたりしてみた。
ところがおかしい咳が止まらないのだ、そう
怪しい男は肺がんであったのだ。
すぐに肺を戻してもらおうと怪しい男がいた所を見てみるとすでにそこに姿は無かった、
男は自分自身の気胸であった肺がとてつもなく愛おしく思えたのだった。